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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ6才

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予想もしなかった再会(嵐の予感)

 アナベル姉さまが毒を受けてから、3日が経った。

 姉さまは相変わらず眠ったままだ。心肺蘇生が遅かったのだろうか。

 脳死……だったらどうしよう。

 お父さまは王城に行ったまま、戻ってこない。毒を盛った犯人は、判明したのだろうか?帰ってこないということは、捜査が難航している気がする。

 犯人を見つけ出して報いは受けさせたいけど……領にいて動けない私は、どうしたらいい?

 この3日、悶々と考え続けて疲れてしまった。少し頭をスッキリさせたくて、私はこっそり部屋を抜け出すことにした。

 領に帰ってから、家の中でもメアリーかリックかテッドが必ずそばに付いている。自分の部屋の中でも、だ。

 なんだかその状況も息が詰まって仕方がない。

 メアリーとテッドには悪いけど、睡眠薬を盛ったお茶を振舞い、眠ったのを確認してこっそり部屋を出る(なんで睡眠薬を持っているかって?お母さまが持ってるのを知ってるから、前に部屋へ行ったとき、少し頂いたのだ)。

 二部屋先の物置き部屋に入って、窓から木を伝って下に下りた。

 裏庭のガゼボは、あまり人が来ない。しばらくそこで、風に当たろう。

 

 ガゼボで風に吹かれていたら、

「やっと見つけられた」

と声がした。

 ハッと振り返り……私は息が止まりそうになった。

「アンタを探すのがこんなに大変だとは思わなかったぜ」

 その瞬間のことをどう言えばいいだろう?

 頭に血が上り、考えるヒマもなく私は特大の炎を眼前の少年に向けて放っていた。

 

 ───私の放った炎は、一瞬のうちに真っ黒な闇に取り込まれて消えた。

「なんだよ!姫さん、すっげえ強くなってんな。話をしたかったけど……ムリか?」

「どうして、あなたがここにいるの?姉さまに毒を盛ったのはあなた?」

「あ?毒ってなんの話だ?」

 長い黒の前髪を揺らし、少年が首を傾げた。前髪の隙間から血色の右瞳がすがめられたのが分かる。

 ……去年。モラ湖で私とアルを拐った一味の少年だ。

 このタイミングで、何故。

 私は再び怒りで魔法を発動させてしまわないよう拳を固く握り締めて、少年を見つめた。

 落ち着け。

 落ち着け、私。カッとなって相手を焼くなんて、してはいけないことだ。

「あれから姫さんがいったこと、ずっとかんがえててさー。なんかもう一回、はなしてみたいって思ったから、組織からぬけだして姫さんをさがしたんだ」

「…………え?組織を抜けた?」

「ああ。死んだようにみせかけて、ぬけた」

「……いつ?」

「ん?姫さんと会ってから10日後くらい?」

 ……じゃあ、姉さまの件とは関係ないじゃない。

 いやいや、ちょっと待って。

 モラ湖の件も未解決なのよ。黒幕が誰か、吐いてもらわなくちゃ。思わず攻撃しちゃったけど、相手は気にした様子もなく敵意もなさそうだから、私も気持ちを落ち着けて、ちゃんと話をしよう。

 

 しかし。

 話をしようとしたものの、少年の話はあっちこっちに飛び、さらに主語がなかったり、言葉が足らなかったりでなかなか分からない。

 だけど私が質問を挟んだり、聞き返したりすると余計にこんがらかるので、途中から諦めて彼が話したいまま話させることにした。

 ……少年はどうやら、依頼を受けて悪事を働く一味にいたらしい。いつからそこにいたかは定かでないが、人の殺し方だけを教えられたようである。

 モラ湖襲撃の件に関しては、誰が何のために計画したか全く知らず、王子サマを殺すということだけ、聞いていたとか。

 なので、私が何者かも分からなかったと口を尖らせた。

 組織を抜け出しあと、とにかくあちこち聞いて回り、紅い髪に金の瞳は火龍家の印だと教えられて、まずは王都の火龍家の屋敷に入ろうとしたそうだ。

 しかし、警備も厳しく結界もあって入れない。

 では王子サマに聞いてみようとしたが……王城も入れない。

 ということで半年以上も王都をウロウロしたそうである。

 そして、南に火龍家の領地があると聞き、そっちも行ってみるかと思い立ち、彷徨いまくって辿り着いたのだそうだ。

 ただ、カールトン領の屋敷も彼には入れなかった。仕方なく回りを徘徊していたら、3日前に結界が揺らぎ、その隙に無理矢理、入り込んだという。

 で、なんとか庭までは侵入できたものの……それ以上は入れず、どうしようかと考えていたところに私が現れたらしい。

「……私と、何を話したいの?」

 大まかな流れを把握し、私は当初の疑問を口にした。

 あの山小屋での彼は不気味で怖かったが、今は私よりも年下では?と思うほど無邪気で幼い雰囲気だ。同じ人物と思えない。

「あんとき、しあわせになる努力をしろっていっただろ?オレ、いっぱい考えたけど、しあわせがよくわからねぇから、姫さんにおしえてもらおうって思ったんだよ」

「え?それでここまで来たの?」

「あそこにいても、何も変わらねぇしな。抜けることも、もしかしたら、しあわせになる努力ってやつかなって」

 …………ヤバい。なんか、とんでもない展開になった気がする。

 どうしよう!!

「とりあえずさー、なんか食いもんと水をくれよ。腹がへって……」

 よく見れば、少年は薄汚れ、手足も痩せ細っている。

 1年経つはずなのに、前から成長しているようには見えない。

 お祖父さまに知らせた方がいい。

 でも。

 ……私は思わず自分の右手を見た。

 この少年を見た瞬間、カッとして魔法を放ってしまっていた。

 私……私、去年えらそうに言ったけど、それと同じことを今、少年に言えるかな?

 私だって、簡単に人を殺そうとしてしまった。アルには、この力を悪用しないと言ったのに。

 隷属の首輪、私も嵌めるべきなんじゃないの…………?

一難去って(まだ去ってないか…)、また一難。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! まあ、今は敵意なさそうだし話し合いはなんとかできるかな? まだまだ子供なんだし感情が勝つのも仕方ないと思います!
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