早く目覚めてね、姉さま
そのままアルの部屋に泊まるのかと思ったけど、お父さまは私も姉さまも家に連れ帰る!と宣言して、真夜中にも関わらず王城を後にした。
迎えに来てくれたオリバー兄さまが私を抱っこし、お父さまはアナベル姉さまを抱えて運ぶ。
なおこの件は、パーティー参加者には全く悟られなかったものの(ただし、帰りに従者や護衛も含めて全員に身体検査を行ったそうだ)、さすがに他の公爵家───水龍、地龍、風龍には知らされ、陛下と近衛騎士団のオーウェン団長も交えて緊急会議が行われているらしい。
お父さま、そちらに参加しなくていいのかしら。
でも、怒り心頭ぶりがあまりにスゴいので、陛下も頭を冷やさせるために一度、退城させたのかも知れない。ライアン兄さまなんて、お父さまに近寄れないもの。
───屋敷に帰ったら、お母さまもグレイシー姉さまもセオドア兄さまも真っ青な顔で待っていた。
「アリッサは大丈夫か?」
「はい、セオドア兄さま」
オリバー兄さまにまだしがみつている私に、セオドア兄さまが心配そうに頭を撫でてくれる。
あ、ダメだ。また泣きそう。
アルのおかげでちょっと浮上したのに。
「このまま、領の方へ行く。コーデリア、グレイシー。2人もしばらくは領にいなさい」
「ええ。……だいたい、こんな状態の娘を置いておけるわけがないでしょう。行くに決まってるじゃない」
お母さまはアナベル姉さまの白い顔を不安げに見つめる。
ああ、姉さま……早く目覚めて欲しいな。
セオドア兄さまが私から離れて、お父さまの方へ行った。
「父上。アナベルは僕が運びます。父上は王城へ戻った方がいいでしょう」
「……いや、私が連れて行く」
「父上……」
強張った顔のままお父さまは言い張り、転移陣の部屋へと向かう。
セオドア兄さまは溜め息をついて、オリバー兄さまと顔を見合わせた。
もしかして去年、私がモラ湖で襲われたときも、お父さまってこんな感じだったのかしら?
領に着けば、お祖父さまとお祖母さまが待っていた。
お祖父さまは、問答無用でお父さまからアナベル姉さまを奪う。
「馬鹿もん!さっさと王城へ戻れ!今、一番優先すべきことが何か、わかっとるじゃろうが!」
……お祖父さま、強い。
お父さまは不満そうに口を歪めたものの、言い返しはせずに素直に再び転移陣に乗った。
私はようやくオリバー兄さまから下ろしてもらい、お祖父さまのそばに行く。
「アナベル姉さまと一緒の部屋でもいい?」
「グレイシーも一緒に、今日は姉妹揃って休みなさい。アナベルも安心するじゃろう」
「ありがとう、お祖父さま」
大丈夫。
明日には。
きっと。
アナベル姉さまが「おはよう」って普通に起きて、「あら?どうしてアリッサとグレイシー姉さまが横にいるの?」って驚くから。そしたら、「姉さま大好き!」って思いっきり抱きつくんだから。
アナベルは目覚めていませんが、通常更新(火木土)に戻ります…。
でも、来週もたぶん、ちょっと大変です。




