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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ6才

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思わぬ人に感謝されちゃったよ

「ジョージーナさま!お元気でした?」

「アリッサさま!お久しぶりです、新作絵本、読みました~。すっごく面白かったです!!」

 アナベル姉さまとは別れ、私は会場の端っこでジョージーナさまに会っていた。

 ジョージーナさまの隣には、ジョージーナさまに似た女の子がいる。

「従姉のケイティです。ケイティも、本が好きで。アリッサさまにぜひ、挨拶したいと」

「うわあ、本好き仲間が増えるのは嬉しいです。初めまして、ケイティさま」

「初めまして、アリッサさま。お会いできて、幸せです。わたし、自分でも文を書くんですが、なかなかうまく書けなくて。アリッサさまにどうやって上手に文が書けるようになるか、お伺いしたいとずっと願ってたんです!」

 きゃー、小説家の卵発見!!

 こ、これは大事に育てなければっっ。


 そんな訳でジョージーナさまとケイティさまとは非常に有意義な時間を過ごした。

 その後、一息つくために人気のないテラスの方へ移動する。

 ちなみに私がお喋りに興じている間、マシューは息子を連れてやって来る貴族のオジさまたちを華麗に捌いてくれていた。ああ、ほんと優秀だ~。(仮)婚約してくれないかなぁ。

「今度は出版業に手を広げるつもりですか?」

 テラスにつき、ホッとしていたらマシューから質問された。

「ううん。私が面白い本を読みたいの。……マシューもさ、いろんな国を回ってるんだし、旅行記みたいなの書いてみない?」

「文才はないし、お嬢様が期待するような愉快なトラブルに遭ったことはありませんしねー」

 そうかなあ。何かしらの出来事はあると思うんだけど。

「僕より、バート様やオーガスト様の話をまとめた方が絶対に面白いですよ」

「あ、それは確かに。そこらの冒険譚真っ青なすごい話が出てきそう……」

「海の魔物は、陸よりも大きくて厄介なのが多いですからね。それをお一人で討伐しちゃうんですから、普通ではないです」

 ……今度、聞いてみよう。

 誰か口述筆記してくれる人、いないかしら?

 

 マシューと雑談しながらのんびりしていたら、ふいに1人の少年がテラスに現れた。

 眼鏡をかけた、地味な雰囲気の少年。私と目が合うと、「ああ、ようやく見つけた、アリッサ嬢」と声を掛けられた。

 ん?見覚えはない……けど、声は聞いたことがあるような。

 マシューがすっと前へ出てくれたけど、私は少年に話しかけた。

「……えーと、もしかしてマーカス殿下?」

「ああ」

 少年が眼鏡を取る。途端に赤茶けた髪が鈍い金色に、灰色の瞳が青灰色に変わった。顔の造作も変化したような気がする。

 マシューが息を飲み、慌てて頭を下げる。私は頭を下げることも忘れて、つい、眼鏡を凝視してしまった。

「それ、すごい道具ですね!」

「便利だろう?王家の秘蔵品だ。こっそり拝借している」

 ほほう。意外とマーカス殿下も悪い子だな。

 マシューが私の袖を引いた。マーカス殿下がそれを見て小さく笑う。

「大丈夫だ、マシュー・オルコット。君の仕事は邪魔しない。アリッサ嬢にお礼を言いに来ただけなんだ」

「お礼?私、何かしました?」

 思い当たる節がないので、首を傾げる。殿下は勢いよく頷いた。

「姉妹で素晴らしい衣装を着てきただろう?おかげで会場全員、君らの話題で持ち切りだ。自分のパーティーなのに、主役を奪われた」

「あ……ごめんなさい?」

「違う違う。お礼を言いに来たと言っただろう。……この騒ぎで、母上がカンカンになってさっさと奥に引っ込んだんだよ。おかげで私は自由に過ごせる。助かった!まさか母上を負かせる人間がいるとはなぁ。アナベル嬢にも礼を言いたかったが、まだ広間で皆の注目を浴びていて難しかった。あとで、礼を言っといてくれ」

 あっはっは!見事に作戦成功じゃん!そして、それをまさかマーカス殿下から感謝されるなんてね。

「はい、しっかり姉にも伝えておきます!」

「ああ。……そうだ、将来、アリッサ嬢の10才の誕生日パーティーのとき―――アリッサ嬢も自由に過ごしたいというなら、そのときは私が何かやろう。今回の礼だ」

「バラの花束を持ってやって来なければいいです」

「ふっふ、それは面白そうだな!でも、きっと入口で公爵に焼かれてしまう」

 うん、想像できる。

 殿下と顔を見合わせて笑いあう。

「じゃ、ゆっくり過ごしてくれ」

「は~い。殿下も、シンシア様の目がないうちに、可愛い女の子を探して見つけておいてくださいね~」

 殿下は再び大笑いして、眼鏡を掛けて去っていった。

 ……マシューが信じられないという顔で私も見る。

「お嬢様。……マーカス殿下と妙に気が合っているようですが」

「そう?」

 そうだろうか。

 うん、そうかもね。たぶん、この間のお茶会のとき、殿下の気の使い方が前世の日本人的感覚にはよく理解できちゃったんだよね。そのせいで親近感が湧いたんだと思う。その上、殿下は年相応な中身だし、容姿もそんなに突出してないし(いや、でも前世ならアイドルができるくらいの容姿ではあると思う)、私も気が張らずにいられるというか。

「……でもさ、きっとマシューの方が殿下と話が合うと思うよ。殿下は母親に振り回されているし、マシューは私に振り回されているでしょ?」

「……振り回している自覚はお持ちなんですね」

「うん。自覚がある分、シンシアさまよりマシかな~なんて」

「自覚がある分、タチが悪い気もします……」

 そ、そういう見方もあるか。ごめん、マシュー。

アルフレッド殿下が気付きませんように!!!と心の中で必死に祈ってるマシュー。

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