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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ6才

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お茶会は楽しく笑い転げて

本日は少し文量多めです

 今日は王妃さまは参加せず、アルと2人っきりのお茶会らしい。

「……本当は、アリッサと公式のお茶会はしたくなかったんだ。要らぬ詮索が増えるだけだし」

 私のために椅子を引きながら、アルが溜め息混じりに言う。

 お茶会の会場は、サンルームだ。

 風を通すためにあちこち開け放たれており、周囲から丸見えである。……王妃さまの思惑が透けて見える。私とアルのお茶会を周りにわざと見せているのだ。

「まあ、でも、私は噂のバンフォード大公を初めて拝見できたので、ちょっとは収穫あったかも」

 あのデブ大公め!とお父さまが毒づいていたことがあるので、気になっていた人だ。

「たぷたぷ大公が見たかったんですか?」

 横から口を挟んできたのはウィリアムだ。

「たぷたぷ大公?」

「殿下の命名です」

「ぷぷっ!……でもあれ、たぷたぷ出来ないくらい肉がパンパンじゃないですか?もはや肉塊……」

「うーわー、肉塊大公って言うとかなり怖そうですね~」

「私は怖かったですよー」

 アルが吹き出す。

「止めてくれ!今度会ったとき、吹き出さずに我慢できる自信がない……!」

「ダメダメ。笑ったら呪われるからね~。肉塊に押し潰されるのだ~」

「アリッサ!」

 アハハとお腹を抱えてアルは笑いだしてしまった。

 アルって、意外と笑い上戸なんだよね。ツボに入ると止まらない。

 調子に乗ってウィリアムと2人で「アルフレッド~、何故笑うのだ~」「ワシはたぷたぷではなぁい!」とバンフォード大公の声真似をする。

「や、やめ……お、おなかが…………っ!」

 うーん、まさか、こんなに大ウケするとは。

 帰りにお父さまにもやってみよう。腹筋よじれたお父さまも見てみたい。


 さて、笑いが一段落してから、アルにリーバルのお土産を渡す。

 波音が聞こえる巻き貝のルーラ。白砂とカラフルな二枚貝や珊瑚が詰まっているガラス玉。同じものは、ディとエリオットにも送る予定だ。

 それと……

「こっちは誕生日プレゼント!」

 帝国産遠眼鏡!

 こっちの世界では最新式だろうけど、前世の記憶がある私にとってはレトロ可愛いアイテム。一目惚れだ。

「誕生日なんて、気にしなくていいのに!」

「でも、これ、すっごく気に入っちゃって。アル、興味ない?バートお勧めの最新式なんだけど」

「バート?」

 遠眼鏡を覗き込みながら、アルが尋ねる口調になる。

「あ、リーバルの統領なの。お祖父さまと一騎打ちしたこともある強い人なんだって。リーバルの街をいっぱい案内してくれてね、すっごく楽しかった。今度はバートの船にも乗ってみたいなぁって思ってる」

 ニコニコと説明したら、アルは一瞬固まり……やがて、ふーっと長い息を吐き出した。

 遠眼鏡をテーブルに置き、私を見つめる。

「前から一度、聞いてみたかったんだ。……アリッサって年上好き?」

「??」

 いきなり、何?

「だって同年代の人間より、年配の人と打ち解けるのが圧倒的に早くない?最近は店頭に立ってないみたいだけど、カールトン商会でアリッサファンになった貴族は多いし、水龍公爵とも笑顔で挨拶する間柄だし……」

 いや、それは違うと思う。

 同年代は婚約とか面倒なことが絡むから、つい最初に壁を作っちゃうだけで。

 でも……今、カッコいいと思う人は誰?と聞かれたら、バートは一番で上げるかも。そしてお祖父さま。次点でルパート閣下……?

 やだ、私、別にジジ専やオジ専じゃない~。

 うーん、うーん……あ、そうか、私の周りに20代のカッコいい人がいないのよ!これ、大きい問題じゃん。中身大人の私がクラッとくる、妙齢の男性がいないんだもの!

 ……ウィリアムは20才前後かしら?ただ、申し訳ないけどウィリアムは違うんだなぁ。

「別に年配の人が好みってわけじゃなくって……えーと、大人の包容力がある人が、好きとか……かな?」

「なるほど。包容力……」

「いやぁ、お嬢様は単に甘やかしてくれる人が好きなだけじゃないですか?」

 失礼なことを言ってきたのはリックだ。

 じろっと睨んだら、にやっと悪びれなく笑った。

 もう!後でガイに厳し~い訓練を課すよう、言ってやるぅ。

「ちなみに、アルはどういう人が好きなの?っていうか、婚約しないの?マーカス殿下がまだだから?」

 この際、ついでだから私も気になってる件を聞いちゃおう。

「え?───うん、婚約は……そうだね、まだ無理かな。兄上がまだだし」

「好きな子は?」

「………………いるよ」

「いるの?!」

 視線を逸らして赤くなって答えたアルに、私はつい、大きな声を出してしまった。

 え。

 いるんだ……。

 なんだろ、ちょっとモヤッとする。これは決して、“アルはもしかすると私が好きかも?”と思っていたからではない。そう、決して。精神年齢大人な私に、まだ好きな人はいないのに、アルにはいることが悔しいだけだ。

「……どんな子?」

 さすがに誰?とは聞きにくく、遠回しに探ってみる。答えてくれないかな?

 だけど、アルは真剣な目になって私を真っ直ぐに見た。

「世界中の誰よりも魅力的で可愛い子」

「そうなんだ……」

「発想が豊かで行動力があって、目が離せないし」

「ふぅん」

 ……だから、アルは私との婚約話を進めないんだね。

 私が納得して頷いていたら、アルはもどかしそうな顔になった。もっと詳しく言いたいけど、どうしようという感じ。

 きっと、身分とか、色々事情があって婚約が難しいんだろう。それを話すのもきっと、難しいに違いない。

 ということで、私はそれ以上追求するのを止めた。別に、アルの惚気話を聞きたくないとか、そんなワケじゃないよ?

 

 通常よりは長いお茶会を終え、お父さまと帰宅。

 でもお父さまの方はこんな短い時間の出勤でいいのかしらん。

 まあ、ずっと忙しいのが続いているから、たまには、ほぼ休みのようなこんな日があってもいいのだろう。

 帰りにバンフォード大公の真似をするつもりだったけど、なんとなく、そんな気分にならず……私は遠ざかる王城をぼんやり眺めていた。

ウィリアム:「うおお~、アリッサ様、グッジョブ!殿下が声を上げて笑う姿なんて、明日にはもう、貴族界一大スクープですよ~。それに引き替え殿下ときたら。せっかくのチャンスにどうしてはっきり言わないんですか……」

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