アルとの公式お茶会へ(何やら不穏なスタート)
アルとお茶会の日になった。
お母さまが張り切って、かなり可愛らしく着飾らせてくれた。以前は壊滅的だったお母さまのセンスも、近頃はすっかり改善されている。人間、いくつになっても成長できるものね~。
仕事へ行くお父さまも一緒に王城へ。
ホールで、「娘に職場見学でもさせるのか?」とふいに声を掛けられた。
……ザカリー殿下だ。
階段の上、冷ややかな顔で立っている。私とお父さまはすぐに頭を下げた。
「今日は、娘はアルフレッド殿下と茶会の予定でして」
「ふん。暇な女だな」
むっ。なんで、そんな嫌味な感じで言うのかな?私、彼に何かした?
「……そういえば。カールトン商会で販売しているゲーム類。考えたのは、其の方か?」
感情の読めない視線が私に問うてきた。イラッとした気持ちは飲み込んで、私はもう一度、頭を下げた。
「わたしではなく……あのゲームは、家族みんなで遊んでいて自然と出来上がったものです。殿下も遊ばれたのですか?楽しんでいただけたら、良かったです」
「あんなゲーム。面白くもない」
「…………」
うっわー、マジで腹が立つわ。
お父さまも額に青筋を浮かべていたけど、慇懃に礼だけして、私たちはさっさとその場を離れた。
そしてアルが迎えに来てくれたので、お父さまと別れる。
「何かあった?公爵の眉間の皺が凄かったけど」
「……ザカリー殿下、キライです」
言わない方がいいと思ったけど。
つい、ポロリ。
アルが青い瞳を大きくして、私を振り返った。
「そっか。……弟がごめん」
「いえ。うちで販売してるゲームが面白くないんですって。別にザカリー殿下のために作ったんじゃないもん!」
「あの面白さが分からないなんて、勿体ないね。ま、ザカリーは何を考えてるのかさっぱり分からないから。僕なんて、もうずっと嫌われているし。初対面のときから、まるで虫ケラを見るような目で見られてるんだ……」
ひえ~、そんな弟、最悪だぁ。
じゃあ、マーカス殿下はまともで良かった。どっちも性格に難アリだと、アルが王位継ぐしかなくなるじゃんね?
さて、お次は廊下ででっぷり太った人と行き合った。
横幅、すごいな。
この人が私の前で転んだら、私は確実に圧死だ。
「バンフォード大公」
アルが呟き、すっと姿勢を正して礼をする。私も慌てて倣った。
バンフォード大公?陛下のご兄弟だよね(ある程度の貴族の姻戚関係や名前は暗記済み!)。
「やあ。マクシミリアンの秘蔵っ子だな。マーカスとアルフレッドが夢中だと聞いたから、どんな子かと見に来たぞ。……ふうん、色合いは見事な火龍家の色だが、コーデリアの面影はあるな。なかなか将来が楽しみな風貌だ」
ぞわわ。
ねちっこい視線が絡み付いて、私の全身が粟立つ。
アルがニコニコ笑いながら、私を後ろに庇ってくれた。
「大公の仰る通り、アリッサ嬢は火龍公爵閣下の宝ですから。僕やマーカス兄上には手の届かぬ花ですね」
んんん~、私にそんな価値はない。でも、アルが牽制してくれてるのは分かるので、余計なことは言わずに目を伏せて静かに控える。
無遠慮な視線はまだ絡み付いていたものの、ふんっと鼻を鳴らして大公は去って行った。
気持ち悪かったので、ホッとした。
ただ、何度も王城へ来ているけど、他の人と会わないようアルやお父さまが苦心してくれていたんだと、このとき初めて気付いた。だってほら、向こうに興味津々でこっち見てる人がいるよ。よくよく周囲を窺えば、メイド達も物陰から見てるよ。
珍獣?私、珍獣なの?わざわざ見学に来るくらい?
……いや、さっき意味深な発言があったっけ。
マーカス殿下とアルが私に夢中って。
それだ。その噂のせいだ。
こんなチビっ子の(有りもしない)恋バナで盛り上がるなんてさー……王城は他に面白いことないんだね?
pv数の急な増加が落ち着き始めたので、ちょっと一安心。読まれないのも悲しいけど、突然、読まれすぎるのも理解できなくて怖い(笑。




