楽しい旅行が終わり、ヒマを持て余す
領に帰ると、王家からお茶会の招待状が届いていた。
え~、またマーカス殿下の地獄お茶会?!とうんざりしたら、招待主はアルだった。
「アルとお茶会?」
しょっちゅう、隠者の塔で会ってるのに。
首を捻ったら、お母さまに諭された。
「アリッサがマーカス殿下のお茶会に出席するんだもの。別にマーカス殿下派ではありません!と周囲に分かりやすく示さなきゃ」
なるほど~。
貴族社会は本当に面倒だな~。
アル主催のお茶会のせいで、隠者の塔でウォーレンさんから魔法訓練してもらえるのは先になりそうだ。お茶会のあとに行きたいとお父さまに言ったけど、ダメと断言された。
ううう、早く魔法の訓練したいのにぃ!
アナベル姉さまもいなくなって、領での生活はかなり寂しいのだ。
オリバー兄さまと雑貨店の計画を進めてはいるけれど、毎日じゃない。私一人で過ごす時間が多すぎる。
……リックやテッドの訓練にあまり加わり過ぎたら怒られるし。せめて、ヒマなときは一人でも魔法訓練できるようになりたいよ……。
仕方がないので、ジョージーナ様という熱烈ファンもいることから、長靴を履いた猫の3作目の案を考えている。まあ、2作目がそろそろ発売予定なので、急がなくていいのだけど。
うーん、なんかちょうどいい童話とか日本昔話があるといいんだけどな。困ったことに前世の小さいときに読んだ本のことなんて、あんまり覚えてないのよね~。
無理矢理、長靴を履いた猫につなげず、別の話にすべきか悩むところだわ。
あ、普通に白雪姫とか、シンデレラとか、書いてみようかしらん?でもシンデレラっていじわるお姉さんが自分の足の指先だか踵だかを切り落とすんだっけ?そこまで書くと怖いなぁ。そうそう、白雪姫とか、継母がシンデレラをいじめる部分なんて……シンシア様とアルを連想させるとか難癖つけられたりして。
とりあえず、思いつくものをそれなりに文章に起こして、あとでマシューと相談しよう。
ちなみに、マシューもこの春から学校へ通っている。
私が将来通う予定の王立マクニール魔法学院ではない。王立レブント学院。
どうして魔法学院ではないの?と聞いたら、マシューはそんなに魔力が高くないので、領地や商会の経営教育に力を入れているレブント学院を選んだそうだ。魔力の高くない貴族の子や、商人の子、官僚を目指す子が多く通っている学校らしい。だからか、平民の割合が多いと聞いている。
ただ、マシューはスキップ制度を利用して2年か3年で卒業するつもりだとか。この間のリーバル訪問も学院を休んで行っているので、その代わりにリーバルにおける海運業にまつわるレポートを提出して単位を取得するらしい。
……マシュー、別に学院で学ぶ必要ないんじゃない?すでに、かなりの実地研修してるし。
ていうか、働いてるし。
でもまあ、学院卒業というネームバリューはある方がいいので、頑張るそうだ。
にしても、スキップ制度かぁ。
マクニール魔法学院にもあるのかな?それを使って私も早めに卒業して、あとは海外留学してみたい。
……お父さま、許可してくれるかしらん?




