スイーツを我慢しつつ仕事します!
春華祭でうちの家族が忙しくしている間、私はのほほ~んと───過ごしているヒマはなかった。
カールトン商会王都店の新店舗開店に向けて、最終調整をしていたからだ。てゆーか、お父さま、春華祭に出なくていいっていうのは、もしかして、こっちに私を回すためでは?って疑いたくなるね。最終調整、ほぼ丸投げされてるんですけど?(まあ、元々、お父さまは商会はブルーノ任せにしてるけど)
「あああ、美味しそうな匂い~……」
「そうですね、美味しそうですね」
「いやぁ、持っていかないで、マシュー!」
「目の毒だし、鼻の毒でしょう、これ」
「た、食べれないんだから匂いくらい、いいじゃない……」
「その方がどう考えてもゴーモンだって、お嬢」
テッドに羽交い締めにされながら、マシューを見送る。
あ~う~……。
今、何をしているのかといえば。
店舗スタッフに喫茶メニューの試食会をしているのだ。スイーツメニューが多いので、潔斎中の私は食べられない。
6才の子供に仕事させて、おやつはダメなんてさ……ヒドイよね?しくしく。
「オレも付き合ってガマンしてやるから。ほら、商品の陳列はどうするんだ?」
私に見られていると食べにくいだろうスタッフを気遣ってか、テッドが販売スペースに私を引っ張っていく。
「……テッドは食べたらいいよ。食事のとき、肉も気にせず食べて」
目線はまだ並んでいるスイーツに向けたまま、ぶつぶつとテッドに言う。
テッドはきょとんとした顔をした。
「3日くらい、お菓子や肉がなくてもどうってことないだろ?パンや野菜は食べれるんだし」
マリー・アントワネットか。いや、ちょっと違うか。
「だけど、テッドの場合は体を作るのに肉が必要なんだから」
「まあ、今はしっかり食うのも仕事のうちらしいな。でもそのうち、飯抜きの修行とかもあるらしいから。練習、練習」
「え?ご飯を抜く修行するの?!」
「護衛は場合によったら飯を食ってるヒマはないからだってさ。寝ない訓練もあるって聞いてる」
「えええ~」
護衛任務って過酷!そんな修行があるの?
なんか、護衛の皆さんに申し訳なくなってきた……。
「でもまあ、お嬢が変なことに巻きこまれなきゃ、訓練だけで終わるしな」
「……変なことって何よ。わたし、別に変なことに自分から突っ込んだことないからね」
「えぇ?!」
まったく、もう。
ちなみに今日は、メアリーとテッドの2人護衛だ。王都にいるのに、どれだけ厳重に守る気なのか……。
私はそんなに危険物!?って感じじゃない?
ま、いいや。今は仕事、仕事。
春華祭、アナベル姉さまの誕生日パーティーが終われば、新店舗開店だもんね。急がないと!




