運動したら、タコパならぬタコスパーティー
夜更ししてお喋りをしたので、翌朝、起きたときは皆、ボ~ッとしていた。
寝ぐせのついたアルが目をこすってるの、なんか可愛い。そっと髪を整えてあげたら、まだ眠そうな顔付きでふんわり微笑まれてしまった。
……うわ、天使がここにいるよ!
朝食を食べて、そこから何故か私の護身術の話になる。
そして、そのまま皆で一緒に訓練を受けることに。
……え?ディとエリオット、大丈夫??
不安ながらも動きやすい服に着替え、庭へ。
ラモン先生は生徒が増えて嬉しそうだ。
まずは柔軟体操。
「い、いたいですわ……」
ディの体が硬い。何も言わないけれど、顔が歪んでいるエリオットもきっと硬いのだろう。
ちなみにアナベル姉さまはとても柔らかい。新体操の選手になれそうなくらい。
私はまあまあ。
アルもまあまあな感じだ。
「では、今日は受け身の練習をしますかな」
ラモン先生がにこやかに言った。
ああ~、先生が張り切ってディやエリオットをあんまりポンポン投げませんように!
「アリッサ、騎士でも目指していますの?!」
終わるなり、ディに噛みつかれた。
「ううん。だからあれは護身術だってば。もしものときに、身を守るの」
……役に立たなかったけどね
「だけど護衛の方がいますでしょ?どうして護身術を始めましたの?」
「運動する方が美容と健康にもいいかな~って。ついでに身を守れるようになるなら、一石三鳥じゃない」
「うーん……美容と健康……」
「クローディア様。やっておいて損はないわよ。食べずに痩せるより、運動して綺麗な筋肉をつけた方が体形がキレイなの!」
「まあ、そうなんですの?!」
んん?なんだか、ディってばすっかりアナベル姉さまと仲良くなってない?嫉妬しちゃうわ。
ランチは、温室で。
しかも、タコスパーティーだ。
初めての試みのせいか、興味津々なお父さまから始まってうちの家族全員も参加している。……娘の友達が遊びに来て、家族全員、そこに混じるっておかしな家では。
「え?自分で作るんですの?」
「そう。この皮に、好きな具材を挟んで、ソースを掛けるの」
ディに説明しながら、実演してゆく。
元々はタコスパーティーじゃなく、タコパ───タコ焼きパーティーがしたかったんだけどね。でもタコがなかったし、ソースも1から作るのは大変そうなので(タコ焼き器もないし)、名前だけ似ているタコスにしてみたのだ。
皮さえ作れたら、具材なんてどうとでもなるし。
「そ、それで、どうやって食べますの?」
「かぶりつくんだよ」
「えええ?!行儀悪いですわ」
「庶民的で楽しくない?それにね、意外と手で食べる方が美味しいんだよ」
前々日に試食済みのアナベル姉さまは、慣れた手付きでさっさと作り、食べてみせる。エリオットが目を丸くしながら横で真似た。
「……本当だ。美味しいな」
お祖父さまも豪快に具材を挟み込んでパクつく。
「うん、うまいの~。自分で好きな風に作れるというのは良いな」
「ソースで味が変わるのもいいね」
ライアン兄さまがすでに2つめを食べながら感想を述べる。
「……火龍家はやっぱり楽しそうで羨ましいですわぁ」
恥ずかしげにタコスに噛りつきながら、ディがしみじみと呟き、アルが横でうんうんと頷いた。
そうね。貴族的じゃない試みも、こうやって家族全員が楽しんでくれるって……もしかして、すごく幸せな環境なのかも!




