男子は放っておいて、楽しく女子会
割と文字量が多くなっちゃいました…。
女子のお喋りは止まらない。
リバーシ大会は、予想外に大きくなった。
アルの護衛(やはりウィリアムと言うらしい)も強いということで参戦し、ライアン兄さまも入ってきて、最後はお父さままで加わってしまったからだ。
それをただ横で見てるのも退屈なので、私はディとともに厨房へ。
試作のドーナツを食べてもらおうと思う。
作るところも見学したいと言ってくれたから、(用意しておいた分はあるのだけど)せっかくなので一緒に作りましょうと誘った。
厨房に立つのは初めてだというディに生地の混ぜ方を教えていたら、アナベル姉さまとグレイシー姉さまも来た。
「火龍公爵家では、皆さま、料理をされるんですの?」
ディが目を丸くしながら聞いてくる。
アナベル姉さまがクスクスと笑った。
「いいえ、アリッサが美味しいレシピを開発するものだから、一番に食べようと食い意地を張って厨房に来ているだけよ」
「でも、いつの間にかアリッサよりアナベルの方が上手にお菓子を作っちゃうのよねえ」
「だってアリッサ、雑なんだもの」
うう、ひどい、姉さま。
でも事実なので言い返せない。というか、アナベル姉さまの食へのこだわりがスゴいのだ。
私にとっては“美味しい”も“すごく美味しい”も同じだけど、アナベル姉さまには明確に差があって、“すごく美味しい”ものが“美味しい”になっていたら許せないらしい。
でもねえ?
微妙な砂糖の量の違いや、舌触りの違いなんて、私には全然分からないよぉ。これって味オンチなの?それとも、姉さまが神の舌を持ってるのかしら?
出来上がったドーナツを見て、ディは目を輝かせた。
「初めて見るお菓子ですわね。どんな味か、楽しみですわ」
「ちょっと待ってね。カフェオレも淹れるわ」
アナベル姉さまがご機嫌にコーヒー豆(粉)を取り出す。
なるほど。今朝、セオドア兄さまがいつも以上に疲労した顔をしていたのは、余分に豆を挽かされたせいか……。早くミルを作らないと兄さまが可哀想かも。
「カフェオレ?」
「これもアリッサが考えた飲み物なの。ドーナツに合うと思うわ!」
ちなみに、コーヒーもカフェオレもアナベル姉さまが一番上手に淹れる。
そんな訳で、商会新店舗ではアナベル姉さまを厨房責任者にお願いしようかと考えているくらいだ。アナベル姉さまの舌がOKを出さなければ、コーヒーを淹れる担当にはさせない、というようなシステム。
───出来上がったドーナツとカフェオレをティールームに運んで、女だけのお茶会を始めた。
「はあ~。火龍公爵家は、本当に楽しそうで羨ましいですわ~」
ドーナツにもカフェオレにも感激しながら、ディが言う。
「アリッサ。やっぱりエリオットと結婚しません?」
「ディ、ドーナツに釣られて言ってない?そもそも、四龍公爵家同士が強く結びつくのは良くないからぁ……」
「あら。ナイジェルに公爵位を譲って、エリオットは王宮魔術師で身を立てても良いと言ってるわ」
ええ?!
なに、その話?!
「まあ!エリオット様はそんなにアリッサのことを想ってくれているの?」
「まだ、そういうのもいいかなぁ?くらいの軽いものですけど。でも、わたくしの大事な兄ですもの。幸せな結婚をして欲しいのです。わたくし、アリッサなら安心ですわ」
「うんうん、愛されて望まれるのが一番よねぇ。アリッサ、お父さまの説得なら私も協力するわよ!」
「アナベル姉さま……だからわたしは、まだ結婚とか婚約のことは考えられませんって言ってるじゃないですかー」
「まあ、私としても、アリッサはずっと家にいてくれる方がいいけどぉ……」
それは新レシピを一番に知りたいから?姉さまってば、正直で好き。
「というか、わたしより先に姉さまの方こそ婚約者を探さないんですか?」
グレイシー姉さまは、近衛騎士を目指している伯爵家の次男の方と婚約している。アナベル姉さまは、数人ほど候補者がいると聞いているが、まだ決まっていない状態だ。
「ん~、決め手がないのよね~」
「愛の大きさが測れたら、楽ですのにね~」
ディも頷く。
「ディも恋愛結婚したい派?」
「だって四龍公爵家の血が流れていますもの。仕方ないことじゃありません?」
「???」
どういう意味?
首を捻ったら、アナベル姉さまが呆れた顔をした。
「四龍公爵家が王家へ深い忠誠を誓っているのは、それだけ私達の血に一つのものを深く愛する習性があるからよ。一度、大事に想ってしまった相手に対して、そう簡単には気持ちを翻さない」
……そっか。ああ見えてお父さまもお母さま一筋だし、お祖父さまもそう。オリバー兄さまもヘレナさまを大切にしてるなぁ。
「まあ、そうは言っても公爵家だから、恋愛至上主義だけではいられないけれどね」
ふむふむ。
ふと、グレイシー姉さまを見た。
グレイシー姉さまはふんわりと笑った。
「そうね。私は、政略的な意図で婚約者を選んだけれど、それなりに好意は抱いているのよ?」
ふうん……。グレイシー姉さまが納得してるならいいんだけど。
グレイシー姉さまは私の頭を撫でた。
「まあ、アリッサに関しては、こんなに小さいうちから色んな開発をする特別な子だし、ともかくしっかりアリッサを愛して守ってくれる人に任せたいわね」
「落ち着きないアリッサを守るのは、大変そうだけどね~」
過保護だな~、姉さま達は。
「ううーん、エリオットではまだ不充分っぽいですわねぇ」
「そんなことないわ!だって公爵位を捨てるとこまで考えてくれるなんて」
「あら。私はアルフレッド殿下も良いと思っているのだけど」
「まあ、グレイシー様。それはどのような点ですか?」
ちょっと、ちょっと。話がどんどんおかしな方向へ行ってない?
「そうねぇ……散々、失礼なことをしたのに、それを咎めたりせず、アリッサのために努力なさってるでしょ?だから私、殿下を応援したくなっちゃって」
「失礼なこと?」
グレイシー姉さまは、カエルの話や木登りで骨折させた話をディに教えた。
……止めて~。私の黒歴史。アルにとっても黒歴史だと思うからさー。
てゆーか、アルは私のために何か努力しているのだろうか???努力というか、迷惑はいっぱい掛けている自覚はあるけど。
ディには白い目で見られた。
「仮にも第二王子殿下にそんなことをなさったの?」
「でも悪気はなくて……」
「あったら、今頃無事ではいられないでしょう」
「はい……」
「アルフレッド殿下も……物好きですわねえ?」
それを言うならエリオットもね。
一体、私のどこがいいの??
グレイシーはアルフレッドが火龍公爵と交わした約束は知りません。
でも、アルフレッドが苦手なカエルを克服し、体を鍛え始め、モナ湖旅行を計画したりする姿が健気でキュン♪としてます(笑)




