女の子はお喋りの方が楽しいんです
ディ達が来たらしい。
私は玄関に急いで迎えに行った。
「アリッサ!」
「ディ、久しぶり!!」
「もう、ひどいですわ、夏から全然会えないんですから!!」
手を取り合って再会を喜ぶ。後ろについてきていたアルが少し苦笑して「ふうん、クローディア嬢とそんなに仲が良かったんだ……」なんて言ってるのが聞こえた。
この世界で気兼ねなくお喋りできる女の子の友達は貴重なんだもん。当然よねえ?
「あれ?ディ、背が高くなった?」
ふと、ディを見上げる角度が以前と違うことに気付いた。
ディの後ろにはエリオットが静かに立っている。エリオットも……高い……。
半年会ってないだけなのに!
「アルも……そういえば、だいぶ背が伸びているよね……わたしだけ、全然大きくなってない……!」
ショックだ!
「そんなことはないでしょ。わたくしとエリオットはアリッサと2才違うんですもの。こんなものじゃありませんこと?」
「小柄な女性は可愛いと思う」
ディとエリオットに慰められるが、納得いかない。今からチビだと、ヤバそうじゃん。ドレスを美しく着こなすには、やはりそれなりの身長が欲しい。
うう、これからは毎日牛乳だ!―――って、効果あるのかな?筋肉の作り方は聞いたけど、背が高くなる方法は聞いた覚えがない~。
ディとエリオットはお父さまに見事な挨拶をし、水龍公爵からの贈り物を渡していた。
秋から販売開始した万能調味料はもちろん、水龍公爵家に真っ先に卸した。そのときレシピ本もおまけしたところ、大感謝され、おかげでお父さまとルパート閣下の関係は今はかなり友好らしい。
「……ねえ?水龍公爵閣下が激太りしたら社交界のご婦人方から殺されそうな気がするんだけど」
販売前から心配していた件をディにそっと聞いたら、ディはホホホと優雅に笑った。
「元の胃が小さいんですもの。今さらお父様はそんなに食べられませんわ。それに、食べ過ぎたときはお母様がしっかり運動させますのよ。お母様ってば、本当~にお父様のことを愛していますから」
そっか。
偏食で食べないときは椅子に縛って食べさせていたらしいもんね。公爵夫人の愛って……深いんだなあ。
───再び、私の部屋へ。
ディとエリオットが興味深そうに検分する。うーん、さっきアルに見られたときも思ったけど、人に自分の部屋を見られるってなんとなく恥ずかしいものがあるね。前世と違って、毎日メイドが掃除するから見られて困るような物なんて置けないんだけど。
「普通ですわ……。アリッサなら、もっとぶっ飛んだ部屋かと思っていましたのに」
「ディと違ってわたし、普通だもん」
「そう装っても、装いきれていませんわよ?」
失礼ねえ。
さてエリオットは、リバーシを持ってきていた。
「これ、アリッサが考えたゲームなんだろう?ぜひ、相手をして欲しい」
「ええ~……」
キラキラした瞳が期待いっぱいにわたしを覗き込んでくる。
「それなら、僕も参戦したいな。アリッサには負けたままだ」
アルも入ってきた。負けず劣らずキラキラした瞳をしている。
うわ、これはダメだ。アルは絶対、やり込んで対策を立てている。
ちらっとディに目を向けたら、肩をすくめられた。「始めたら終わらないわよ」と言っている。
うう~、せっかくディに会えたんだから、まずはお喋りがしたい。
私は壁際に立っているリックを引っ張った。
「……リバーシは、リックがすっごく強いので。リックに!」
「へ?俺……いや、私がですか?!」
突然話を振られたリックは仰天して、あたふたと両手を振り回す。
だけどリックは、マシューに勝ちたい一心でかなり強くなったのだ。アルやエリオットの相手に不足はないだろう(ちなみに、我が家で一番強いのはお父さまだ)。
アルとエリオットはキランと目を輝かせた。
「よし。では、誰が一番か勝負しよう」
……男の子は負けず嫌いだね~。




