一緒に木登りをしましょう
王子を連れて行ったのは、庭の奥。
塀より高い木がある場所だ。
本邸のお気に入りの木には及ばないけど(私が前世を思い出す切っ掛けになった木のことね)、この木もわりと良いのだ。
「ここです、ここ。この上にのぼると、とても 見はらしがよいのです」
言うなり、さっさと登り始める。今は護身術を習っているおかげで筋力もついてきて、以前のような危なっかしさはない。あっという間に大人が手を伸ばしても届かないくらいの高さまで登って、下を振り返った。
「王子!はやく、はやく!」
呆然と見上げていた王子が、ハッとした。慌てて幹にしがみつく。
が。
全く登れない。
ふふふ。そうだと思ったのよ。だって、ひょろひょろだもん。でもプライド高そうだから、1つ年下の女の子に負けて、これで心折れるんじゃないかしら。
だけど、王子はずり落ちてもずり落ちても、真っ赤な顔のまま必死に何度もトライする。
……イヤだ。なんだか可哀想になってきちゃった。だって、まだ6才の子供だし。高校生が小学生をいじめるって、よく考えたら大人気ないよね。
仕方ない。
私はするすると降りて、王子に指導を始めた。
「まずは、右手を上のえだにかけて、左足をこのでっぱりに。そしたら、次は左手をななめ上のえだにかけて……」
奮闘のすえ、なんとか、最初の大きな枝までたどり着いた。
私も追って登り、一緒に横に座る。
「木をのぼるのも、せんりゃくが ひつようです。どこに手をかけて、足をおくか。でも、手足の力がつよかったら、はさみこむだけで のぼれるんですけどね」
にこにこと教えてあげたら、王子は神妙な顔をして頷いた。
「お手伝いいただき、ありがとうございました」
「いいえ。この けしきを、王子と見れてよかったです」
しかし、ちっとも良くなかった。降りるときになんと王子が手を滑らし、落っこちて足の骨を折ってしまったのだ。
おかげで昨日の騒ぎどころではない大騒ぎになった。
ヤバい。婚約する前に処罰される!!
すっごくビビってたら、当の王子が青い顔で懸命に「アリッサ嬢に責任はありません。僕が悪いのです」と庇ってくれた。
ううう、ごめんなさい。
でも、これで婚約は無し……になるよね?
投稿を始めて1週間経たないのに、2700PVほどになりました。
嬉しいです。嬉しいけど、8月末から書き始めているもう1本の小説を1週間未満で抜いてしまった…。
コンセプトが違うので、当然かも知れないけど……複雑な気分~。
がっつりした内容もOK!という方は、もう1つの作品も読んでもらえると嬉しいです。
「もしかして悪役令嬢」の方は、この後、王子の逆襲(?)があったり、トラブルに巻き込まれたりしつつ、アリッサが16才か17才になるまで続く予定です。
途中、王子目線も書けるといいなぁ……。