高い魔力量の代償は……
地下から、塔の上階に移る。
入ったのは、壁一面に本が並ぶ部屋だ。ざっと見た感じ、どの本も貴重な魔術書ばかり。古語の本もあるようだ。すごい。
うおおお、よ、読んでみたい……。
魔道具もたくさん並んでいて、なんだか魔法の研究所っぽい。かっこいい。
私が物珍しげにあちこち見て回っていたら、リックにツンツンと注意された。
……はい。今はそれより大事な話だよね。
アルに促されて、椅子に座る。アルはリックにも座るように言って、全員が机を囲んで座ることになった。
「えーっと、それで……わたしの魔法に、何か問題あるんですか?」
アルが珍しく眉間にシワを寄せて難しい顔で黙りこんでいるので、とりあえず、私が口火を切る。
ウォーレンさんが、灰色の瞳を心配そうにこちらへ向けた。
「き、ききき君は……ま、魔力量が異常に……高い……」
「そうなんですね」
「そ、そそのレベルは……か、管理対象に……な、なる……」
?
管理対象?
アルが恐ろしく真剣な目で私を見た。
「普通は、生後間もないうちに神殿で祝福を受け、そのときに魔力量を量る。その後、成長とともにある程度は増えるけど、それでも極端には増えない」
ふむ?
「アリッサも、そのときは特に問題になるレベルではなかったはずなんだ。……あのね、アリッサ」
言葉を切り、アルが私の手をそっと握った。
その手は、少し震えているような気がした。
「魔力量が一定レベルを超える者は……国にとって脅威だ。なので、魔力測定で基準値以上の者は、赤子のときから国の管理下に置かれる。───いや、正しく言い直そう。隷属の首輪をつけられ、一切の自由はなくなる。国のために飼われるんだ」
「え?」
「ウォーレンは、そのうちの一人だよ。彼は、王城から出ることは許されない。王城へ来たのは11才だったかな?以降、ずっと王城にいる。他にも基準値を超える者が二人いるんだけど、その二人にいたっては赤子のときからだ。彼らは外の世界を知らない」
「……え?」
「アリッサがウォーレンを超える魔力量だとすると、やはり隷属の首輪を付けることが求められる可能性が高い。ただ、この制度が出来てから、王族や四龍でそこまで魔力の高い者が出たことはなかったから……どういう扱いになるか、はっきりとは言えないけれど……」
「は、発言をお許しください!」
リックが青くなって立ち上がった。アルは表情を少し緩めて、首を振る。
「この塔の中では貴族の作法など気にしなくていい。いちいち許可を取らずとも好きに発言していいよ」
「ありがとうございます。……あの、お嬢───お嬢様と殿下が婚約者であれば、そういう束縛は必要ないのでは」
……う。リックの言いたいことは分かる。分かるけど。なんか、そういう理由でアルと婚約はしたくない。
しかし、アルは更に苦い顔になった。
「もし、王族との婚姻で隷属の首輪が免除されるというなら、僕ではなくマーカス兄上と婚約になるだろう。もしくは……父上、国王陛下だ」
「そんな!」
……なんだろう。急に寒くなってきた気がする。背筋がぞくぞくする感じ。
それに目の前が暗くなったような。
「アリッサ!」
アルが焦った口調で私を覗きこんだ。
「ごめん。急にいろいろ、話しすぎた。ちょっと休もう。横になるかい?」
「ソ、ソファが……そ、そそこに、あ、あるよ」
「お嬢!顔が真っ青だ!寝ろ、ちょっと横になれ!」
ウォーレンさんとリックにも言われ、私はろくに返事も返せないまま、ソファに横たわる。
……隷属の首輪?
何、それ。
王城から出られないって……それじゃ、牢獄に閉じ込められるのと一緒じゃん。
どうして?
身内に不幸があり、書き物をする時間がなくなりました…今週はちょっと更新が滞るかも知れません。(途中まで書いているので、間に合う可能性もあり)
気になる辺りで切ったままになったら、すみません~。




