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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ6才

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初めて思いっきり魔法を放ってみる

「ウォーレン」

 アルは後ろを振り返り、あやしげな黒フードの人物に呼び掛けた。

「アリッサ。彼はウォーレン・バンクス。少し人見知りなんだけど、魔法の腕は国一番だ」

 うっそりと黒フードの頭が下がる。

 私もとりあえず頭を下げた。

「ウォーレン。先に視るかい?」

「……もう、視て……る……や、ややややっぱり……瘤が……い、いっぱい」

「瘤?」

「か、身体中、でででできてる……これ、よくない……」

 ウォーレンなる人物は、フードの隙間からちらりちらりと私の全身を観察している。

 薄暗いのに、瞳が青く光って見えるような。ちょっと怖い。

 そう思っていたら、彼とバチッと視線が合った。その瞬間、ヒュッと息を飲んで彼は両手でフードを深く下ろす。

 手が小さく震えている。

 私はハッとした。

「あ、ごめんなさい。わたし、目隠しした方がいいですか?」

「え?目隠し?」

 私の言葉に首を傾げたのはアルだ。

「人からの視線が怖いんですよね?目を瞑っていてもいいですけど、目隠ししてる方が安心できるかな?って」

「そうか。視線が怖いのか……」

 アルが得心したように呟いた。

 そして、ウォーレンさんに尋ねる。

「目隠しして貰うかい?」

「…………だ、だ大丈夫」

 消えそうな声が答えて、ウォーレンさんは音もなく私に近付いてきた。

「ぼ、ぼく……こ、怖くない?」

「怖くないです」

 一応、目を合わさない方がいいかと思い、視線を下に向けて答える。

「ま、魔法……初級の火球を……お、お、思いっきり、は、はは放って、く、くれる?き、君がで、できる、一番……お、大きなので……」

「思いっきり?」

 それはやったことがないなぁ。部屋の中で練習するから、出したことがあるのは小さい火球だけだ。

「君は……ま、魔力瘤が……あああちこちに、で、できて、い、いるから……て、手を……つないで……お、おきたいんだけど……イヤな、なら、背中で……」

「あ、手を繋ぐんですか?いいですよ。よろしくお願いします」

 はいと手を出したら、ウォーレンさんはビクッとしたあと、おずおずと骨張った手で壊れ物を触るように丁寧に握ってくれた。

 ふうん。

 最初は不気味な人かと思ったけど、とても繊細で優しい人みたいだ。

「じゃあ、あっちに向かってやってみますね」

 広い空間の真ん中へ向け、意識を向ける。

 思いっきり、一番大きな火球……うーん、どれくらいのが作れるか想像できないなあ……。

 悩みながら、頭の中で魔法印を思い描き、火を呼び出す呪文を唱えつつ軽く手を振った。

 ボン!

 バスケットボール大の火球が現れる。

 横目であれ?という顔をしたアルが見えた。

 ふふん。これっぽっちじゃないよ、私の実力。いきなり大きいのを作ったことがないので……ここから大きく───

 ゴォォォゥッ!!!

「どわっ?!」

 突然、ものすっごい火の壁が出現した。リックの腰を抜かしたような叫びが上がる。

 私の方は、ビックリしすぎて声も出ない。

 視界一面を埋め尽くす炎は、しかし私の伸ばした手の少し先辺りで不自然に途切れている。まるでガラスの壁で隔てられているかのよう。

 たぶん、ウォーレンさんが防御しているのだ。すごい。あの一瞬で発動するなんて。

 火を消して、ホッと息を吐きながらウォーレンさんに頭を下げた。

「ありがとうございます。まさかあんなに大きな火球になるとは思ってなくて」

「す、すす、すごい、ね……こ、こんなに……ムダなく……魔力を流せる人……は、は、初めて見た……」

 ウォーレンさんは、まだ火球のあった辺りを眺めていた。つい、視線を上げてしまったので顔が見えたけど、目を潤ませてうっとりしている……気がする。ちょっと目付きがアブナイ。

「こ、これは……確実に、ぼ、ぼぼぼくより、ま、魔力量は上だね……」

 うっすらと上がった口角が、何故だろう、とても悪魔的で私はぞくりとした。

 そして背後で、「やっぱりそうか……」と暗い声がしたので振り向くと、アルが壁に寄り掛かって落ち込んでいた。

 そのポーズがなんか可愛い。……けど、アルの雰囲気から、どうもヤバそうな気配がビシバシ伝わってくる。

 ……やっぱり魔法が使えること、隠しておいた方が良かったのかしら。

こちらの作品の更新回数を減らして、新しい作品と同時連載をする心積もりでしたが…当初の予定とは全く違う話を書き始めました。

『悪役令嬢は穏便に別れたい』

たぶん、全部で15話前後になると思います。甘~い話を書いてやろう!と思ったはずなのに、ちゃんと甘い展開になるのか…現段階でナゾです…。将来、アリッサの甘酸っぱいシーンを書く予行練習になったらいいなぁと思ってたのに。やっぱ向いてないのかなー……。

こちらの作品とはだいぶテイストが違いますが、良かったら、そちらも読んでみてくださいv

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