マシューとリック
新章開始です!
この章から、火木土更新にいたします。その分(?)、1回の文章量が増えてます~。
6才の誕生日を迎えた。
久々にお祖父さまお祖母さま、お父さまお母さま、お兄さまお姉さま全員が揃っての夕食だ。
私が王家の保養地で襲われて以来、お父さまもお母さまも王都の方にいて、滅多にカールトン領へは帰ってこなかった。
お父さまはどうやら事件究明でかなり忙しいみたいだけど、お母さまはどうしたのかな?と思っていたら、王妃さまに寄り添っていたらしい。
昔、色々あって王妃さまはこういう命に関わる件はかなりナーバスになってしまうそうだ。
一方、私はすっかり通常運行なので、
「……アリッサ、もうちょっと怖がって部屋に隠るとかないの?」
と、ライアン兄さまに言われてしまった。ヒドイ。
これでも一応、怖かったんだから。怖かったけど……最後の小屋脱出→爆発の流れがなんかハリウッド映画っぽかったし、そのあとすぐに気を失って起きたら自分の部屋のベッドだもん。あれ?夢?みたいな気持ちになっても仕方なくない?
アルみたいに蹴られて痛い思いしてたら、違ったのかなあ。
てゆーか、アルは大丈夫なのかしら。お父さまからは大丈夫と聞いているけど……。
翌日、マシューが来てくれた。
プレゼントは、なんと豆。いや、豆と思ったけど、なんかの実の種らしい(ちゃんと花束とケーキもあり。さすが気遣い完璧なマシューだわ!)。
「ブラールで取れるカフという実の種です。お嬢様が以前、南方産の苦い実が欲しいと仰っていましたよね?これかと思ったのですが……」
むむむ?
大きさは1㎝くらい。薄いベージュ色をしている。
うーん……これはカカオではなくコーヒー豆ではなかろうか。カカオ豆って確か3~4㎝くらいの大きさだったような……記憶が……。
考え込んで種を見ているからか、マシューが残念そうに肩を落とす。
「違うようですね。申し訳ありません」
「あ!ううん、ありがとう!探すの大変だったでしょ?……ちょっと試しに焙煎してみよう」
「焙煎?」
これがコーヒー豆なら、カフェオレが淹れられる。ブラックコーヒーは苦手だけど、カフェオレは好きだもーん。楽しみ!
さっそく厨房へ向かおうと廊下に出たら、リックと会った。
「あ、お嬢!借りてた本を返しにきたんだけど」
「あ、じゃあ、部屋に入って次の本を探していいよ。それ、面白かったでしょ」
「ああ。読みやすかったし、面白かった」
リックは今、必死に勉強している。
だけど、ひたすら暗記するだけでは大変だろうと思うので、地理や歴史、政治問題も楽しく頭に入る伝記物の本を貸しているのだ。物語になると受け入れやすいもんね。私もお世話になった本だ。
そうだ!
マシューにはリックを紹介しておかなくちゃ。あとでテッドも。これからは護衛に付いてくれるみたいだし。
ということで。
「リック。マシューを紹介しておくね。王都のカールトン商会のお店で店長をしているブルーノ・オルコット子爵のご令息」
そして後ろを振り返り、マシューを見上げる。
「マシュー。彼はリック、メアリーの弟なの。これから私の護衛として一緒に付いてくることがあると思うから」
「……承知しました」
ん?
いつもはにこやかなマシューが、なんか冷ややかだぞ?どうした?
怪訝に思いつつ視線を前に戻したら、リックも険しい目をしていた。
「……えーと…………二人には仲良くして欲しいかな~……なんて……」
不穏な空気にドキドキしながらそう言ったら、マシューが見事に口だけ笑みの形をした。目は、まったく笑っていない。
「マシュー・オルコットだ。よろしく、リック」
「…………ああ、よろ」
「口のきき方がなってないな。アリッサお嬢様の護衛をするなら、きちんと礼儀も身につけなければ」
「失礼いたしました、マシュー様」
ふおおおお?!
「マ、マシュー、あの……」
「お嬢様が寛大なのは重々承知しています。ですが、彼のことを思うなら厳しく教えるべきです」
「えー……それは追い追いで……わたしも人のことは言えないから……」
「いいえ」
否定する固い声は、マシューではなくリックから発せられた。
「お嬢様、申し訳ありませんでした。俺……私がいたりませんでした。マシュー様、ご指導ありがとうございます。では、御前を失礼いたします」
「リ、リック……」
これ、何?!
めっちゃショックなんだけど?!
どうでもいいんですが、この話が人気なのか~と思ったので……
■アリッサ5才の章で「いいね」が多かった話
→「乗り気ですと……?!」
次点は「その気はなかったけど、さすがに傷ついたよ」
■アルフレッド視点1で「いいね」が多かった話
→「アリッサ嬢の好みのタイプは僕が知りたい」
次点は「人生最大の汚点…」と「思わぬ友人ができた」
うむ。「人生最大の汚点…」は私も書いてて一番ニマニマしていた話かも…知れない…。




