またまた火龍公爵と密談(2)
「ひとまずこの件は、本人に確かめたわけではないので、殿下の胸に納めておいてください。───ん?そういえば……アリッサは部屋にいるとき非常に静かだとメイドが言っていたな……防音の魔石を使ったか?」
突然、最後の方は低く呟き、公爵は大きく溜息をついた。
「帰ったら、色々と確認する必要がありますな。殿下、ご配慮、ありがとうございます」
魔法が使える件を父上やオーウェン団長に明かさなかったことだろう。
王家と公爵家は、王国を支える諸儀式のために男子は早くから魔法訓練を行っている。もし女子で使えるとなると……直系男子よりも強力な魔力を持っていて跡継ぎになる場合だ。アリッサの場合、髪色も瞳色も火龍公爵家特有の色を持っている。その上、魔法も使うとなればアリッサが跡継ぎになるのかと思われるような案件だ。
……だけど、明かさなかった理由はそれじゃない。
「いいえ。ただ、もし一人で魔法を学んでいたとしたら、アリッサをウォーレンに会わせたいのです」
「灰色の隠者に?」
「きちんとした手順を踏まずに魔法を覚えると、魔力の流れが歪むそうです。ウォーレンは魔力の流れが視えますので。歪んでいた場合は早めに治した方がいい。それと、確かめたいことが……」
そういえば。
もしかしてウォーレンは、アリッサが天恵を受けていることも予測していたんじゃないかな。
「……あまり良い話ではない気がしますな」
「そうですね、そうかも知れません。ただ、まだ可能性ですので」
「……分かりました。今は詳細は聞かず、殿下にお任せします。お手間を取らせて申し訳ない」
公爵はがっくりと肩を落として僕に頭を下げた。アリッサとコーデリア様が保養地へ来ていた件は内密にしていたため、原因究明はしばらく火龍公爵とオーウェン団長の二人だけで行うのだ。通常業務に加えて秘密裡に事件の調査をするのはきっと大変だろう。大体、王族の殺害未遂事件とあれば四大公爵で共有すべき重大事件。このまま闇に葬るべきではないし、父上もどう扱えばいいのか苦悩している。
僕は軽く手を振った。
「止めてください。そもそも、僕の方がアリッサを危険な目に巻き込んでしまったのですから……」
アリッサが魔法を学んでいる件は別として。今回、安全なはずの王家の保養地で僕とアリッサの命は狙われた。アリッサの身を大事に考えるなら、僕は距離を置くべきだ。
だが、公爵は笑った。
「殿下のそばで巻き込まれる方が安心だと今日、実感しましたよ。殿下はきちんと重要なことを見逃さず対策を立ててくださる。あれを一人で置いておく方がよほど危ない」
……それは否定できない。
「ともかく、まずは御身をしっかりお守りください。私ももちろん全力は尽くしますが、敵の目的が分かりませんからな」
うん、そうだよな。
今、さして力のない第二王子の僕を殺して得をする者が思い付かない。マーカスもザカリーも、自身の地位安定のために選りにもよって保養地で僕を殺すなんて暴挙は犯さないだろう。五大公もしかり。
火龍公爵家と僕の繋がりを解消したいという思惑は有り得るかも知れないが……それで暗殺に走るだろうか?
今回の事件は謎ばかりなのだ……。
これにて、アルフレッドの章は終了です。ようやく終わった~!
次から再び、アリッサ視点に戻ります。
ということで、明日・明後日はちょっとお休みし、火曜日から更新再開いたします。実は……新しい話を書きたくて書きたくてしょうがなくて、近々、2つ同時連載をしたいのです~。(話のネタはもっとあるんですが、さすがに幾つも書けない)
なので、『もしかして悪役令嬢』は今後、隔日更新になる可能性が。すみません。
でも、書きたい話は書きたいうちに書きださないと、書けなくなっちゃうんですよ~。
全然違うタイプの話になりますが、たぶん、どたばたコメディっぽくなると思うのでちらっと読んでもらえたら嬉しいです。まだ、いつ上げるか未定ですけど……。




