またまた火龍公爵と密談(1)
父上達との話が終わり、部屋を出た。
オーウェン団長は、このまま父上と今後の警備体制について見直すようだ。火龍公爵の方は妻と会って話をすると言う。
その火龍公爵に、僕の部屋へ寄るようそっと指示した。
黙って廊下を歩き、僕の部屋へ。
心配そうなブランドンもウィリアムも閉め出して、火龍公爵と二人っきりになる。
「……アリッサが何か?」
何の話をするつもりか、見当はついているらしい。僕は気になっていたことをようやく口に出した。
「彼女はもう魔法を学んでいるのですか?」
「魔法?まさか!アリッサは、跡継ぎではありませんし。……でも使った、のですね?」
疑問系で終わっているが、分かっているのだろう。すぐに公爵は苦い顔になった。
公爵家で教えていないとなると、アリッサが自主的に魔法を学んでいるということになる。師につかず一人で学ぶのは、かなりの危険を伴う。知らなかったのならば、公爵が苦い顔になるのも当然だ。
「父上の前では僕が小屋を吹き飛ばしたと言いましたが、吹き飛ばしたのはアリッサです。僕にはまだ爆発の魔法は使えない。そのことを父上は知りませんけど」
オーウェン団長も、僕の剣の腕は知っているが魔法の腕は知らない。だからこそ言えた嘘だ。
「あの規模の爆発をアリッサが?!」
おや?どうやら、公爵も現場を見てきたようだ。
「そんな。アリッサにそれほどの魔力は……」
「いえ、アリッサが使ったのは初級魔法です。小さな火を飛ばしただけ。でも、その前に小麦粉を大量に宙へ撒きました。そこに火をつけると大爆発を起こすらしいです。小麦粉を扱う業者の間では知られている現象だそうですが、僕は知らなかったので本当に驚きました」
「…………」
公爵の眉間の皺が濃くなった。そして金色の瞳が暗く沈む。
彼は小さく唸ったあと、僕に視線を移した。
「殿下は、天恵についてご存知ですか」
「天恵?数十年に一度、天恵を授かる者がいるという話は聞いたことありますが……」
天恵とは、神の啓示だの夢のお告げだの、果ては前世の記憶(未来の間違いだと僕は思うのだが)だのを受けるという眉唾な民間伝承だ。それを受けた者は、この世ならぬ知識を得るらしい。
「アリッサは、恐らく天恵を受けたのではないかと思うのです」
「え?」
「ある日、急に変わりました。天恵を受けた者は往々にそうなるようです。しかし、天恵者はその日を境にそれまでの生活に対して拒否感を示し、おかしくなる者もいると聞きます。なので、アリッサにはあまり制約をせず自由にさせるようにしていたのですが……」
顎に手を置き、宙を睨む。
なるほど。以前、公爵が言っていた“思うところもあって”とはこのことか。でも、天恵を受けた者が実在するとは驚きだ。
まあ、アリッサの常識にとらわれない発想力の元がそれなら、納得も出来るけれど。
今さらなんですけどね~……小説の最初の方では、炎龍公爵って書いているんですよ。
どこから火龍に変えちゃったんだろ。もう、情けないわぁ……。炎龍公爵に直したいけど今さらですしねえ。
あと、たまにモラ湖がモナ湖になってます。モナコ……(笑)
これはちまちま直しておこう。




