犯人を考察する
夜になり、父上から呼び出された。オーウェン団長の現場検証がようやく終わったのだろう。
なお、僕や母上が王城へ戻ってきていることは、あまり大っぴらにされていない。コーデリア様があの混乱の中、父上・火龍公爵・オーウェン近衛騎士団長にだけ連絡をし、騒ぎが大きくならないよう手配してくれていたからだ。さすが火龍公爵の妻。
部屋に入ると、父上、火龍公爵、オーウェン団長の3人がいた。
「ゆっくり休む暇もなくてすまないが……何があったか、詳しく話してくれるか」
父上が座るよう促しながら、言う。
僕は頷き、妙な気配に気付いて振り返った瞬間からの話を簡潔にまとめて話した。
「……近衛騎士ですか」
火龍公爵が顎に手を当てながら呟く。
オーウェン団長が僕に視線を向けながら答える。
「現在、モラ湖離宮担当の騎士は全員、近くの部屋に待機させています。後で殿下に確認をしていただく予定です」
「そうか」
僕は、一応、近衛騎士全員の顔と名前を覚えている。あのときチラリと見た顔は、まったく知らない顔だった。だから、何者かが近衛騎士の格好をしていただけ、だとは思うのだが。
「それで、保養地に出入りした者の記録は?」
父上が暗い顔でオーウェン団長に聞く。
「離宮内の転位陣、及びモラ湖畔の出入口で不審な侵入記録はありませんでした」
「10才くらいの子供の出入りもなかったのだな?」
あの、血色の瞳の少年のことだ。
「はい」
「では……一体、どのような手段で王家の防御壁を破ったんだ……」
火龍公爵の顔が歪む。
保養地に掛けられている防御の魔法はかなり堅い。ウォーレンが以前に言っていたが、ウォーレンやラミア達が全力を傾けても防御壁を破るのは難しいのだそうだ。それを、誰にも関知させずにとなると……ほぼ不可能だ。火龍公爵は、それをよく分かっている。
しかし。
父上は深く溜息をついて、王家の印が刻まれた指環を上にして右手を前に出した。
「マクシミリアン、オーウェン。誓約を」
「陛下?」
「王家に関わる重要機密だ」
火龍公爵とオーウェン団長は目線を交わす。そして黙って父上の手の上にそれぞれの右手を重ねた。
「この場で見聞きしたこと、他言無用だ」
「承知しました」
重ねた手の間から淡い光が放たれる。誓約が成された。これで、火龍公爵とオーウェン団長はこの場で見聞きしたことを言葉に出来ない。父上の持つ指環の力だ。
「保養地、及び王城は、王家の者は出入り自由だ」
「……それは存じておりますが」
「そして、王家の者の血で印を付ければ、その者も同じ扱いになる」
「血?」
「つまり、マクシミリアンが私を傷つけて血を取り、印を描けば出入り自由というわけだ」
「王家の者しか伝わっていない特殊な印など、私には使えませんよ」
「そうだな。……まあ、これは悪用した場合。普通は、王家の者自身が特別に許可した者に与える」
火龍公爵の目が鋭くなった。
「……王家の者とは、どこまでを指しておられますか」
「私、アルフレッド、マーカス、ザカリー。そして、五大公だ」
そう。
もしかしたら他に抜け道はあるのかも知れない。しかし、現時点で一番怪しいのは、王家の人間という訳だ。
うきゅ~、今回はほぼ見直しが出来ていません!
あとで齟齬が出たらどうしよ~~~。




