マシューの応援は嬉しいけれど?
「最近、武芸に身を入れすぎではないですか?」
訓練後に頭から水を被っていたら、ウィリアムが眉を下げてそんなことを言ってきた。
「そうか?僕はまだ全然未熟だが」
「殿下がそんなに剣技に長ける必要はないでしょう?今の勢いだと魔獣でも狩るのかと思いますよ」
……冗談で言ったのだろうが、外れていないのが怖い。
僕は、火龍公爵と話した内容を母上やウィリアムには秘密にしている。僕が王位継承権を捨て、魔獣討伐隊に入りたいと言ったら反対されることが明白だからだ。特に魔獣討伐隊なんて、大怪我どころか死ぬ確率も高い部署だ。母上は絶対に許さないだろう。
そういえば、母上もウィリアムもブランドンもヘザーも……僕が王位に着くことを願っているのだろうか?僕にその気がないので聞こうと考えたことはないけれど、ときどき、それっぽい空気を感じるときがある。シンシア第二夫人一派に対抗しようとすると、とても大変そうなのに……何故、そんなことを考えるのかな?
そうそう、僕の剣技の腕が上がり始めたと聞いて、マーカスは対抗心を燃やしたようだ。最近、かなりハードな訓練をしていると聞いた。
魔獣討伐隊の隊長をしていたグレアム・オズボーン侯爵に師事をお願いしたとも。グレアムに訓練をしてもらえるなら、僕もぜひ、受けたい。羨ましい。というか、あいつ、別にそこまで必死で腕を磨かなくてもいいだろうに。
でもまあ、上手く便乗できれば僕も教えてもらえる可能性がある。ウィリアムやブランドンを誤魔化して、なんとか一緒に訓練できる理由を考えないと!
マシューが守り刀を届けてくれた。
ついでなので、母上が気に入ったジャムを幾つか追加注文する。母上はチーズも頼みたかったようだが、この暑い時期はどうしても輸送が大変らしく、秋以降になると言われた。どうやらカールトン商会とは別で手配をしてくれているようなので、あまり無理をしないでいいと言っておく。
「ところで、殿下」
帰り際、マシューはこの上なく真剣な目になった。
「僕のような者が大変失礼とは重々承知しているのですが……僕は殿下を応援しています。微力なりとも力を尽くす所存ですので、遠慮なく使ってくださいね!」
???
アリッサのことを言っている───と思うが、マシューの様子はただ事ではない。一体、何があったんだ?
マシュー:「……え?お嬢様から恐ろしい質問をされたからって訳じゃないですよ?前から、僕はアルフレッド殿下を応援しています!」




