アリッサの侍女と雑談する
セオドア殿はメアリーという侍女を呼び、アリッサへの差し入れを整えたあと、人目につかぬ経路で温室の方へ案内してくれた。
途中、ニヤッといたずらっ子のような笑みを浮かべて僕を見る。
「父上が殿下を推しているようなので、情報共有を一つ。……水龍公爵はかなりの偏食らしいです」
「偏食?」
「そう。で、アリッサは自作の万能調味料とやらを公爵に差し上げて、これが大層気に入られたらしいですよ」
───そうか。エリオットが書いてきた救世主とは、この件だな。
庭園に出たところで、セオドア殿は会場へと戻っていった。
それと交代するようにウィリアムが現れる。招待客の侍従控え室にいたはずだが、火龍公爵が呼んでおいてくれたのだろう。
温室へ向かいながら、僕はメアリーに話しかけてみた。彼女がアリッサに付いているのを見かけたことがある。
「君は、アリッサ専属の侍女?」
「はい。でも本当は、お嬢さまは知らないんですけど侍女というより護衛なんです。あたし、身体強化ができますので。あ!あのぅ……すみません、あたしは下町育ちの平民で、あまり敬語とか礼儀とか出来てなくて……失礼があったらごめんなさい」
「構わないよ」
「ありがとうございます!お嬢さまも優しいんですが、殿下も優しいですね」
ニカッと屈託なく笑う。
好感の持てるとても人柄の良さそうな侍女だ。ただ、彼女が侍女兼護衛というのは少々心許ない気もする。ま、火龍公爵のことだから、見えないところにも護衛を揃えているだろうけど。
「アリッサの護衛は大変だろう?」
「大変ですねえ。街へ行って興味ある物を見つけたら一瞬で消えますから。瞬間移動ができるのかと思うくらいです。それに身分を気にかけず誰にでも気軽に普通に話しかけます。人を疑うこともありませんねえ。それがお嬢さまの良さなんでしょうけど、ときどき、危なっかしくて心配になります」
確かに、危機感のない主では護衛も大変だろう。
「でもまあ、そんなお嬢さまのおかげで弟たちも読み書きや計算ができるようになりました。本当にありがたいです」
「アリッサが直接、教えたの?」
「はい!なので、弟たちはお嬢さまが大好きなんですよ~。ま、照れて、素直に認めませんけどね」
……火龍公爵。
僕へ任せる前に、もっと手綱を締めておいて欲しい。もう相当数、アリッサ崇拝者がいるんじゃないか?
先日、親知らずを抜きまして。
そのあと、痛みがあったりでなかなか落ち着いて書き物を出来る心境でなく……すみません、明日の更新はお休みをいたします……。
ちなみにあんまり痛いんで、今日、無理言って診てもらい、一応痛みは治まったんですが。
早く抜いた穴が塞がって欲しい。ご飯食べるのも一苦労なんですよ……。




