この想いに気付いてしまったから
アリッサ嬢は僕と会うために王城へ来てくれたはずなのに、その到着は知らされず、遅いことを心配して母上を探しに行ったら、母上とお茶している彼女を見つけた。
……僕が行かなければ、母上はずっと彼女を独占するつもりだったんだろうか?
気に入り過ぎだろう……。
さて、アリッサ嬢がわざわざ王城へ来たのは、どうやら新作ゲームを披露するためではなく、本当は僕の誕生日を祝うためのようだった。
手作りケーキとアルカスターの守り刀を渡され、僕は思わず言葉を失った。このサプライズは………ずる過ぎる。
しかも、守り刀に付いている宝石の色は紅だ。彼女の鮮やかで美しい髪と同じ、色。
アリッサ嬢は、自分の持つ色が入った品を異性に贈る意味を、知っているのか?
───いや……高確率で知らない気がするなぁ。
紅蓮石の説明をにこにこと話す素振りを見る限り、そういう意識は欠片も無さそうだ。
まったく、変な知識はあるくせに、どうしてこういう常識は知らないんだ……。もしかして恋愛関係に関するセンサーだけ壊れているんじゃないか?
だけど、違うと分かっていても……こんなのを渡されてしまっては、ドキドキするなと言う方が無理だろう。
僕のために、僕のことを考えて、用意されたプレゼント。そして手間隙かけて作った手作りケーキ。今までもらったどんな物より、愛情を感じてしまう。たとえそれが異性に対する愛ではないとしても。
ああ、もう……イヤだな。勝手に僕だけがどんどんアリッサ嬢に惹かれている。これはあまりに不公平だ。友達になれたらと思っていたのに、もう、それだけでは全然足りない。彼女の……特別な存在になりたくなる。
でもそれは、仕方のない流れじゃないか?だって、彼女がそういう流れを作っているんだし。
───僕は堪えきれず、そっと守り刀に口付けを落とした。
「ずっと、身に付ける。これから一生」
仕方がない。覚悟を決めよう。
君は僕の特別になってしまった。この想いに、僕は目を背けられない。
……そのあと、アリッサ嬢考案の新ゲームをした。リバーシという、白黒の駒を使う斬新な遊びである。
先ほどの甘い想いを台無しにするほど彼女は容赦がなく、あっという間に僕は10連敗した。
うん。
アリッサ嬢らしい。
だけど、10回も連続でやれば攻略法は見えてくる。アリッサ嬢の手から考えると、四隅を取るのは重要だ。だけど、その手前……四隅を囲む3ヵ所に置かないという点も大切ではないだろうか。
また、あまり最初の方に自分の駒を増やすのも得策ではない……。
───アリッサ嬢への想いは想いとして、僕にも意地はある。いつか、彼女に完全勝利したい。負けっぱなしは絶対に性に合わない。
このリバーシもプレゼントするとアリッサ嬢は言うので、後でじっくりウィリアム相手に攻略を究めてやろう。
アルフレッドはかなりの負けず嫌いです。
たぶん、それくらい根性ないと、アリッサには付いていけないかも……。




