収穫祭に下僕…じゃなくてお友達ができました(2)
「はじめまして、アリッサです」
なるべく可愛らしく、少し右に首を傾げて挨拶。鏡を見ながら一番良い角度を研究しているので、完璧なはず。
テッドは、挨拶だけで赤くなった。よしよし、思ったより可愛いじゃないか。
テッドほどチョロくなかったリックの方は、贈り物を渡したら目を丸くした。
お菓子、日持ちのするパン、そして……靴。テッドとリック用に二つ。
収穫祭は、贈り物をし合う日だ。メアリーには、すでに新しいメイド服を贈っている。
「これ……」
「この間、はじめて おきゅうきんをもらったから、それで買いました」
「お給金?!おまえ、働いてんのか?」
「こら、テッド!」
「はい、お父さまのお店で、売り子をしました」
店先で、私主導のジャム試食会をやったのだ。試食という今までにない販売法に、大盛況。一時は警備兵が飛んでくる混雑になった。
おかげでジャムは即日完売、その後も好調な売行きだと言う。
で、お父さまが上機嫌で褒美に何が欲しいか聞くので、金銭感覚を養いたいから給料が欲しいと答えたワケ。
「お嬢さまはスゴいんだよ。王都の店の香辛料やジャムの売上げを、何倍にも増やしたんだから!」
メアリーが自分のことのように自慢する。ふふ、照れるわ~。
私の考えた策を説明しながら誉めまくる姉の言葉を聞いて、リックも顔つきが変わった。
「お嬢さま、いくつ?」
「4さいです。でも、もうすぐ5さいになるわ」
「俺の3つ下……」
ややショックを受けた模様。
まあね、実質は4足す17で、21才だけどね。
でも、リックの私を見る目が変わったのは、分かった。むふふ。
「オレも働いてるぜ!?配達をやってるんだ」
横からテッドが自慢げに胸を張ってきた。
「うわあ、スゴいですね。わたし、今日、はじめて町にきて、道がぜんぜん おぼえられませんでした。すぐ まいごに なりそう……」
「おじょーさまみたいな女の子が一人で歩いたらさらわれるぞ。あとで、オレが案内してやる」
「ありがとう、テッド!うれしい」
「お前とお嬢さま二人でも危ないよ。俺も行くから」
リックが眉を寄せて口を挟む。
メアリーがにこにこと目を細めた。
「ま、その前に、お嬢さまが持ってきてくれたお菓子でお祝いをしよう。もうすぐ母さんも来るから」
メアリーのお母さんは、今日は近所の屋台で働いているらしい。忙しい昼を過ぎたら、一度帰宅して、私と顔を合わせてくれるそうだ。メアリーのお母さんには、エプロンと針と糸を贈り物に持ってきている。(出来れば、全部自分で持ちたかったけど、重かったので、半分以上メアリーに持ってもらった)
こうして、私はちゃっかりメアリー一家に取り入り、下町探索の基地および下僕……いやいや、お友達を確保したのだった。
あら?10話で王子が出てこなかったわ……。