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ド田舎無職の俺の近所に異世界の国が引っ越してきた件について  作者: 藤原湖南
第11話「NPO「安らぎの里」代表・玉田弘とYouTuber高崎ゲン」
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12-6


「……39度3分、か」


体温を計ると、ノアの熱はまだ相当な高さだった。ひょっとしたら、倒れた時は40度を遥かに超える高熱だったのかもしれない。そんな高熱では、普通に数時間ももたなかっただろう。

俺は彼女をベッドに横たえると、経口補水液に岩塩を溶かした吸い飲みを口にさせる。意識は朦朧としているようだが、一応飲んでくれてはいるようだった。


氷枕を作り、冷えピタシートを額に貼る。口に解熱剤のカプセルを入れて飲ませ、しばらくすると呼吸がまた少し落ち着いてきた。



『ンン……トモ、アム・ピュリエ・オル……』



ノアが、シムル語で譫言のように何かを言った。俺はそれが何かを理解し、顔が熱くなるのを感じる。



「……『愛してる』、か」



俺は、ノアの髪を撫でた。……俺もまた、そうなのだろうか。


ふと、彼女の服が汗でびっしょりと濡れているのに気付いた。このままでは、間違いなく身体には良くない。着替えさせなければ。


彼女の服を脱がし、背中からお湯で湿らせたタオルで汗を拭いた。そして、脚も。

仰向けにすると、かなりの背徳感をおぼえた。仕方ないこととはいえ、傍目では男が少女を襲おうとしているようにしか見えないだろう。

俺は下着の部分を避けながら、腕から肩、お腹と身体を拭く。さすがに、下着の下の部分は男がやる領域じゃない。


一通り終わると、替えのパジャマを着せることにした。ノアの身体は小さく軽いが、それでも意識のない彼女を着替えさせるのにはかなり難儀した。

洗濯済みのパジャマを着せ終え、俺はもう一度彼女の髪を撫でる。薄く、ノアの目が開いた。


『……トモ?』


その声に、俺は深く安堵する。思わず、息が漏れた。


「意識が戻ったのか……良かった」


『ここは……トモの家?』


「そうだ。今はしっかり寝て、休んでくれ。……今日は助けられた、ありがとう」


ふるふる、と弱々しく彼女が首を振った。


『ごめん……助けられたのは、あたし』


「俺は、当たり前のことをしただけだ。もう夜だ、俺もそろそろ寝なくちゃ」


立ち上がろうとした俺のシャツを、ノアが摑んでいる。


『もうちょっと、ここにいて』


「分かった」


しばらく、ベッドに腰掛けたまま彼女の頭を撫で続ける。これで、少しは安心するだろうか。


ノアがまた、薄く目を開けた。


『……下着を替えて欲しいの』


「……それは、俺がすることじゃない」


『……まだ、身体がちゃんと動かせないの。お願い』


確かに、汗で濡れた下着のままでは熟睡もしにくいだろう。すがるようなノアの目に、俺は折れた。


「……分かった」


ノアの身体を起こす。上は、寝る時は付けなくていいらしいから脱がすだけだ。その上で、壊れ物に触れるように、絞ったタオルで汗を拭く。

乳房の辺りにタオルが触れれた時、『んっ……』とノアから声が漏れた。そういう意味ではないと分かっていたが、さすがに焦る。


「下もか」


『……うん』


「ここは、拭かないぞ」


『……それでもいいわ』


ズボンを脱がし、ノアから目を逸らしながらショーツも脱がす。

彼女の秘所を見ないようにしながら脚に替えのショーツをくぐらせようとした、その時だ。


『……ねえ……見て』


「何をだ」


『……いいから、ちゃんと、あたしを見て』


ノアの目は潤んでいる。しかし、そういう行為に出れるほど、彼女の体力はないはずだ。俺もそんな気分じゃ、到底ない。


「……何の、つもりだ」


『……お願い』


一瞬だけのつもりで、俺はノアを見た。

見た目相応の陰毛の上辺りに、複雑な文様の入れ墨みたいなものがあるのに気付く。


「……これは」


『……『魔紋』。前に、話したでしょ』



……思い出した。



シムルの魔法使い、特に女性の魔法使いは、魔力を高めるために「魔紋」を刻むという。

それを見せた相手は……殺すか、あるいは生涯を共にしなければならない。



そして、ここで彼女がそれを見せた意味。そのことに気付かないほど、俺は朴念仁じゃない。



「……そういう、ことか」


コクン、と顔を真っ赤にしてノアが頷く。


『今度は……事故じゃない。あたしは、トモと一緒にいたいの』


俺は目をつぶり、ショーツを上げた。着替えを済ませると、俺はわずかに天井を仰ぐ。



俺に、ノアを背負う覚悟はできているのだろうか。その答えは、まだない。

ただ、自分の気持ちがどこにあるのか。それはもう、分かっていた。



答える代わりに、唇をそっと重ねる。ノアの目から一筋、涙がこぼれた。



「……ありがとう。『アム・ピュリエ・オル』」


『うんっ……!!アム・ピュリエ・オル・ティルダ……!!』


俺は彼女を抱き寄せた。胸の中で、ノアが静かに泣いている。



そしてそのまま、彼女が寝入るまでそうしていると、俺もいつの間にか意識を手放していた。




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