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ド田舎無職の俺の近所に異世界の国が引っ越してきた件について  作者: 藤原湖南
第10話「近衛騎士団副団長・シーステイアとC市市長・阪上龍一郎」
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10-3


『なんや、またお前らかいな』


俺たちの顔を見るなり、ラヴァリはげんなりした様子になった。


『お前らは敵や言うとったやろ。ここから出すいう話もあれっきり音沙汰なし、何も話すことはあらへんで』


『その話だが、明日君は釈放されることになった』


『……!!あんたらがやったんか』


『いや、そのようにしたのは俺たちじゃない。ただ、君の身柄は俺たちが引き受ける』


『どういうこっちゃ。そもそも、また見ない顔が1人おるやんか。何やこのガキ』


ぺこり、とシーステイアが頭を下げる。


『イルシア聖王国近衛騎士団副団長、シーステイア・トロイアスです』


『……なるほど、ハーフエルフかいな。魔力からして、この前来た『夢魔』シェイダの娘か』


『母様は関係ありません。幾つか、お聞きしたいことがあってうかがいました』


『喋らん言うとるやろ』


すっと、シーステイアが掌をラヴァリにかざした。


『言わなければ、無理にでも引き出しますが』


『……何をするんや』


ラヴァリの顔が青くなった。ノアがシーステイアを制する。


『待って。こっちも手荒なことはしたくない。こちらも、あなたに伝えなければいけないことがある。まず、多分週末にまた向こうから誰か来るわ。恐らく、あたしたちの追っ手』


『はっ!!んなこと知らんわ。……って俺にも差し向けられるんか、そいつら』


『多分ね。というか、この世界の有力者で、シムルからの移住者と深い繫がりのあるらしい人物があなたを確保しようとしていたわ。あたしたちはそれを阻止する方向で動いてる。

さっきトモが言ってたのはその件。このままいったらあんたは捕まって、向こうからの援軍に始末されるわ』


『か、確証はあるんか』


『ないわ。あたしの勘。ただ、魔女の、特にあたしの勘はよく当たるのよ』


ラヴァリから汗が流れ始めた。かなり混乱している。


『俺たちとしては、まず明日君を保護する。悪いようにはしない。その代わり、知っていることを話して欲しい』


『ほんまに、俺を守ってくれるんか』


『もちろん』


看守が時計を見た。15分という時間は、やはりあまりに短い。


『……明日、来るんやな』


『ああ。また会おう』



「シーステイアを連れてきた意味はあったのか?」


駐車場に向かう途中で、俺はノアに訊いた。ノアはニッと笑う。


『もちろん。シーステイアの『情動把握』の精度はイルシア1よ?』


「……?魔法は使ってないんじゃないのか」


『あの手かざしはブラフ。こっそりと、ラヴァリが気付かない程度に発動してたのよ。あれは余程の魔導師じゃないと、自分が魔法の対象になっていたことも気付かない』


「本当なのか?」


『最後の方、あいつ少し汗かいてたでしょ。少し肉体に作用し始めてたから、内心気が気じゃなかったけど』


シーステイアがコクリと首を縦に振った。魔法使いというのは、かなり何でもありだな。


『焦り、を感じました』


「焦り?殺されるかもしれないという?」


『それもあります。ただ、『間に合わなくなる』という方が大きかったように想います』


「『間に合わない?』」


俺とノアの言葉がシンクロした。シーステイアの目が、少しだけ鋭くなる。



『ええ。彼は元々、『治療』のために呼ばれたようです。そして、その治療相手の名は『メリア・スプリンガルド』。その人物が、シムルからこの世界に来た人物なのでしょう』




『メリア・スプリンガルド……うーん』


C市に戻る車の中で、ノアは何かブツブツ言っている。シーステイアは魔法を使って疲れたのか、後部座席で早くも寝入っていた。


「聞き覚えがある名前なのか?」


『そう。でも思い出せないのよね。女性の名前なのは分かるのだけど……どこで聞いたのかしら』


「前に話していた『大魔卿』とかいう奴の関係者なんじゃないのか」


『多分ね。オルディアの人間の可能性が高いんだけど……』


その時、スマホが鳴った。……篠塚社長だ。


俺はハンズフリーイヤホンを耳にし、応答をタップする。


「もしもし」


「あーもしもしぃ?すっごいよ、もう10万再生突破した」


「本当ですか!?」


「うん。ツイッターでもノアちゃんが空飛んで空撮するショート動画が1万RT超えたし、まずは初速大成功ってとこね。テレビ局からもDM来てるわよ。とりあえず無視しているけど」


「やっぱり結構騒ぎになってる感じですか」


「ネットはガチ派と特撮派で真っ二つ。あとノアちゃんのファンもかなり多いわよ。このレベルの美少女が、まだ何人かいるんでしょ?異世界ってどんだけ顔面レベル高いのって話ねえ。

ただ、場所を特定しようとする動きも出てるわね。かき氷は麻美冷蔵って即バレてたけど、埼玉のC市周辺なんじゃないかって探る声はもうある」


それはあまりいい流れじゃないな。阪上市長を刺激することになる。


「次のロケは、少し場所を変えた方がいいかもですね」


「同感。埼玉でも東京でもいいから、別の場所にしないと。そこは後で話し合いましょ」


電話が切れ、俺はふうと息をついた。ラヴァリの件と動画の件を並行してやっていると、その落差に混乱しそうになる。


『マユミさんから?』


「ああ。場所を特定されそうだから、少し考えようということらしい」


『あー、それはそうかも。そこの選定はお任せするわ。あたしにはよく分からないもの』


「了解だ」


アクアは首都高から外環道へ入る。再びスマホが震えた。今度は睦月からだ。


「もしもし」


「……今どこ?」


声が切迫している。身体から冷や汗がにじみ出るのが分かった。


「今W市近辺だ。あと1時間ぐらいで着くが」



「厄介なことになりそうなの。阪上市長が、現地視察を強く求めてる」




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