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ド田舎無職の俺の近所に異世界の国が引っ越してきた件について  作者: 藤原湖南
第5話「兼業農家・大熊忠則と魔女・アムル」
29/181

5-1


「な、何年ぶりになるんだろう、な」


大熊は気まずそうな笑いを浮かべる。中学以降は接点がなかったはずだから、こうやって話すのは14年ぶりだ。


「どうしてここに?上に用でもあるのか」


「あ、いや。一昨日昨日と、軽トラがこっちに向かうのを親父が見てな。一昨日お前が親父に女の子とここら辺にいたってのを聞いて、何かあるんじゃねえかと……」


ノアが一歩前に出た。『あたしの言ってること、分かる?』と訊いたが、大熊はきょとんとした表情だ。


「何語だこれ。というか、何で外国人のガキとお前が一緒にいるんだよ」


俺は溜め息をついた。これは厄介なことになりそうだ。


「ノア、『念話』は通じないらしい」


『そのようね。で、この人は誰?』


「俺の昔の知り合いだ。といっても、もう何年も会ってない」


俺は大熊の方に向き直った。


「すまないが、この上に何があるかは詮索しないでくれ……」


いや、ダメだ。これでは「詮索しろ」と言っているようなものだ。何かしらで口止めするか?

現金を渡しても黙っている保証はないし、暴力的な手段も得策じゃない。……参ったな。


「何かあるのかよ」


怪訝そうな表情で大熊が足を踏み出した。すかさずノアがロッドを取り出し、一振りする。



ズォンッ



「ぬおっ!!?」


急に大熊が四つん這いになった。まるで、重い荷物に耐えきれなくなったかのような、そんな感じだ。


「ノアッ」


『『圧波』、よ……足止め程度に、力は弱めて、おいたわ……』


ふらつくノアを、俺は抱き留めた。今日は他にも魔法を使っていて、消耗が激しかったはずだ。無理をさせてしまったか。


「ちょっと車内で休んでろ。……大熊、すまないがここから上には行かせるわけにはいかないんだ」


「だから何でだよ。そもそも今のはなんだよ」


「……魔法だ。この子が使った」


意識を失いかけのノアを後部座席に押し込み、カーエアコンを付ける。


「魔法、だあ!?」


「すまないが、俺の頭がおかしくなったわけでも何でもないぞ。とにかく、ここは手を……」



……待てよ。なぜその方向性に気付かなかった?



俺はニッと笑う。


「予定変更だ。ちょっとうちで話がある。東園町内会の誰かも呼んできてくれ。できるだけ上の人間がいい。見返りは出す」



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