表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ド田舎無職の俺の近所に異世界の国が引っ越してきた件について  作者: 藤原湖南
第13話「使い魔ラピノと片桐百合子」
101/181

13-5


「町田さん!待ってました」


イルシア王宮前にノアと降り立つと、門の前には既に市村がいた。その横にはラピノがいる。「融合」とやらの効力は、ちょうど解けたようだ。


「阪上は捕捉してるか?」


「ええ、バッチリです。ちょうど誰か怖そうな人と話をしてるみたいで」


「ヤクザか誰かか」


「多分。……高崎さんは、まだ生きてはいるみたいです。ただ、埋めるとか何とか、そんな話になってます」


「あとで彼の居場所を把握しよう。警察をひとまず向かわせる」


俺とノアは駆け足でジュリの部屋に向かう。そこにはジュリとゴイル、そしてシェイダと一通りのイルシア上層部がいた。


『『遠見の水晶』があるって、本当なの?』


『可能性は極めて高いわ。……多分、母様の置き土産。推測するに、それは奴が殺した一家の持ち物だったと思う。どうして、スズキ一家が母様のものを持ってたかはよく分からないけど』


ゴイルが険しい顔でノアを見た。


『由々しき事態だな。そもそも、ランカはなぜそんなものをこの世界に残したのか?』


『あたしに訊かれても困ります、閣下。ただ、先代様の意向があった可能性はなくはないです』


『……そうだな。ランカが40年前に転移実験を行ったことは、私を含め極々限られた人間しか知らない。シェイダは確か知っていたはずだな』


小さくシェイダが頷く。


『……ランカがどういう意図でここに来たのかまでは知らない。ただ、滞在期間は3、4カ月ぐらいだったわ。その間にスズキという男に会っていたのかも』


『そうだな。ランカの意図はともあれ、これはイルシアとは全く無関係な話では、もはや断じてない。『遠見の水晶』は回収する必要がある』


『そうね。ランカに真意を問いただしたいけど、あいつは『大転移』の後始末のためにシムルに残ってるし……とにかく、これ以上の悪用は許されちゃいけない』


『その通りだ。御柱様、ご決断を』


しばらく目をつぶって黙っていたジュリが、口を開いた。


『盗みとかは、本当はするものじゃない。でも、そもそもサカガミが持っているのがおかしいものなら、取り戻すのが筋だ。やろう』


ジュリは「千里眼」の巨大な水晶を見た。そこには阪上のものと思われる視界が映っている。

どうやら車で移動中らしく、奴はしきりにスマホで話をしていた。内容は「高崎の埋め場所を確保しておけ」だとか、「従わないなら『あるふれっど』を使って追い込む」とか、そんな物騒なことばかりだ。

「お前がちんたらやってるせいでこんなことになったんだよ!!」という怒声と電話の声で、電話相手が坂本であると知った。電話を乱暴に切ると、阪上はスマホを後部座席のシートに叩き付けた。


『相当苛立ってるわね。どこに向かってるか分かる?』


「暗くてよく分からないな。視点を運転手に切り替えられるか?」


ジュリが『もちろん』というと、すぐに水晶玉の映像が変わった。……C市郊外から中心部に向かっているようだ。

一度郊外に向かった、ということはそこに誰かがいる可能性が高い。……高崎か?


水晶からは露骨に不機嫌そうな阪上の声が聞こえてくる。


「クソっ……圧力をかけなきゃいけねえ相手が多すぎる。どうすればいい……」


阪上が呟いている。再び視点を奴に戻すと、手元には直径10センチほどの水晶玉があった。


『『遠見の水晶』……!!やはり持ち歩いてたわね』


水晶の中の「映像」はせわしなく切り替わっている。何人もの「視界」を管理できるのか?

シェイダも『これは……』と険しい表情を浮かべる。


『『遠見の水晶』で管理できるのは、せいぜい1人か2人……これを見る限り、10人以上は『記録』されてる。

これがランカ製の特注品だからなのかもしれないけど、サカガミは相当に魔力もあるし、使い慣れてる……!!私としたことが、見誤ったわ……!!』


『あたしも初見では軽視してたもの、仕方ないわ。『遠見の水晶』以外の魔道具も持ってるかもしれないわね』


阪上は水晶のある部分で手を止めた。誰かが誰かと話している。その男に、俺は見覚えがあった。



「……柳田!?」



阪上は「チッ」と舌打ちをした。これはどういうことだ!?ノアも同じ感想を持ったのか、俺を見上げた。


『これ、誰かが柳田と話しているところ、よね』


「ああ。誰かは分からないが……柳田と手を組むことでも考えているのか?」


『……あたしにはちょっと分からない。でも、彼が良くないことを考えているのは分かるわ』


水晶玉の中の阪上は、「選択肢は限られてるな」と呟いた。車はC市では数少ない高級マンションに向かっているようだ。どうもここが阪上の住居らしい。


「……住居は割れたな。で、ノア。さっき言ってたいいことってなんだ」


『うん。その前に、ちょっと確認』


ノアがラピノの前に来て、しゃがみ込んだ。


『ラピノ、調子はどう?』


『ニャ!!ご主人の魔力が跳ね上がって、とっても調子が良いですニャ!!ヒビキと分離したけど、ヒビキの魔力も豊富で物凄く美味しかったですニャ。絶好調ですニャ』


『うん、ということは、シムルでやってたみたいなことは、一通りできる?』


『ニャ。『人化術』も、多分できますニャ』


ラピノは目をつぶると、精神を集中した。そして明るく光る霧がラピノを包み、それは徐々に大きくなる。



1分ほどすると、霧の中からノアより少し小さい、全裸の少女が現れた。



『どうですニャ!!久々だけどちゃんとできましたニャ!!』


『やっぱりね。とりあえず、服着なさいよ。トモとヒビキが困ってるじゃない』


確かに目のやり処に困る。少女とはいえ、それなりに出るものは出ている。市村も(今は女性の姿とは言え)目を背けていた。


少女になったラピノは首をひねる。


『ニャ?人間はどうして裸を嫌うのか、毎回のことだけど分からないですニャ』


『あんたねえ……。ジュリ、お願いできる?』


ジュリは『うん』と言うと、ラピノを薄手のワンピースとスカート姿にさせた。多分、ノアのいつもの服装を参考にしたのだろう。


『むー、やっぱりこれ落ち着かないですニャ。で、人化術を使わせてどうするつもりですニャ?』


ノアが小さく首を縦に振った。



『サカガミの家に忍び込むの。それで、あの『遠見の水晶』を奪ってきて。人にならないと、あれはきっと持ち運べないだろうから』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=578657194&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ