表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/12

6.宿屋


 冒険者ギルドで依頼の報告をした俺たちは、同じテーブルに座っていた。

 不貞腐れた様子のフィアに声をかける。


「な、なぁフィア……なんで機嫌悪いの?」


 フィアは頬杖で眉間にしわを寄せていた。


「当たり前でしょ。なんで私が【孤高の炎狼】を倒したことになってるの。実際に倒したのはニルアなのに」

「トドメを刺したのはフィアなんだから、事実だよ」

「事実? 気絶した【孤高の炎狼】を倒して手柄を独り占めしたことが?」

「か、課題はクリアできたんだから良いじゃん……」


 冒険者ギルドに報告した内容では、フィアが倒したことにした。そうしないとフィアの課題が達成できないと思ったからだ。

 

 フィアは報酬の半々にも不服らしく、全額持って行っても良いと言われてしまった。

 もちろん断った。お金がないとはいえ、知り合いにそんな真似はできない。


「良くない! 私だけ良い思いをしてフェアじゃない!」 

「俺も良い思いできたよ。ほら」


 俺はお金が入った麻袋を掲げる。

 駆け出しの冒険者が受けられる依頼は決まっている。報酬が少なく、生活も安定しない。


「これくらいあれば、少しは生活も楽になるよ。ありがとう、フィア」


 笑顔で言うと、ムーっと唸るフィア。


「手伝わせて」

「手伝うって、何を?」

「ニルアのお姉さんを探すの、手伝わせて。それでチャラにしましょう」

「えっ……良いの? フィアには関係ないことだけど」

「ニルアだって、関係ない課題を手伝ってくれたじゃない」


 それはお金が欲しかったからで……と思うも口を閉じる。

 フィアはきっと納得しないだろう。

 

「……分かった。探すの手伝って」

「ええ、もちろん。ところで、その人の名前は?」


 俺は口に出そうとして、一度やめる。

 ……フルネームで言った方が良いか。


「シエス=アヴェイン」

 

 フィアがその名前を聞いて、眉をひそめた。


「シエス……?」

「うん。五年前から冒険者をやってるはずなんだけど……知らないかな?」

「……一人だけ、知ってる」


 緊張した面持ちでフィアが言う。


「シエスさんは、たぶん……【蒼炎】のメンバーよ」

「……マジ?」

「マジ。同姓同名の人がいるから」


 ニルアが眉間を手で押さえる。

 俺の姉が傍若無人なことは知ってるし、冒険者になっても変わらないとは思っていた。


 だけど、まさか……トップランクのギルドに入ってるなんて……。


「あの姉が、人と交わってるなんて……何かの病気かな」

「どういうこと!? 実力は王都でも折り紙付きよ!?」

「病気じゃなければ、きっと呪いだ。また女神の捧げ物の食べ物を食べたんだ……」

「本当に罰当たりな人じゃない……」


 姉は女神への信仰心が薄い。

 代わりに食べ物に対しての執着が凄く、あとは戦い好きなくらいだろう。


 戦って食って寝る。それがシエスだ。

 

「ニルアのお姉さんか確かめさせたいけど、今は遠征中で王都にいないの。地方にでたSランクの魔物の討伐中らしいから。来週帰ってくるはずよ」

「そっか。それまでのんびりと待つしかないんだね」


 来週……か。

 五年ぶりに会うとはいえ、連絡も何も取り合ってないからなぁ。


 どんな顔して会えば良いのかな。

 

 そもそも、会ってみようってのも思い付きだ。

 暗殺ギルドから追放されて、感傷に浸りたいだけなのかも。


「ニルア」


 フィアから声を掛けられる。


「うん?」

「シエスさんと、会えると良いね」

「……そうだね」


 姉に会う前に何か準備しておかないと。


 会いたいけど、会いたくない……。

 家族って、そんなもんなのかもしれないな。


 *


 宿屋に帰ると、声を掛けられる。


「あ、ニルアさん。お客さんが来てますよ」

「お客さん?」


 室内に入る。

 そこには見たことのある人物が居た。


「あ……」


 茶髪の胸の大きい冒険者が居た。


 確か、俺が馬車から飛び出して助けた人だ。

 名前は……サラーサさんだ。


 最後に会話した時は、俺が暗殺者だと勘違いされてた……!


 サラーサが言う。


「悪いな、いきなり上がり込んで」

「あ、あの! 俺は暗殺者じゃありませんから! あのシャーロットって貴族様も狙ってませんし!」


 必死に弁明すると、サラーサが乾いた笑い声を出した。


「それか。いや、あの時のことは謝らせて欲しい」

「え?」

「急なことで混乱していたんだ。私も満身創痍だったしな」


 俺はほっと胸をなでおろす。

 会って誤解を解くことも難しいと思っていたから、俺が命を狙っているなんて勘違いをされたままだったら、大変だった。


 良かった。

 

「君を特定するために、王都で調べさせてもらった。馬車では命を助けてくれて感謝する、ニルア」


 深々とサラーサが頭を下げた。

 ニルアが目を丸くする。


「あ、頭を上げてください」

「こればかりは譲れない。大恩人を暗殺者だと侮って、刃を向けたのだ。許されることではないだろう。私は馬鹿な女だからな……こうしなければ、気が収まらない」


 サラーサが視線を外す。

 おそらく、自分が居ながら魔物に襲われ、シャーロットという少女を怪我させたこと。サラーサじゃなくて俺が助けたことも、きっと原因のはずだ。

 

「サラーサさんじゃなくても、あの状況なら同じことをしたと思いますから、自分を責めないでください」

「……優しいのだな、お前は」

 

 サラーサが軽く微笑む。


 俺はため息を漏らした。

 

(正面から堂々と頭を下げて謝られたら、許せないはずがないよ……まったく) 

 

「もう一つ、ニルアに用件がある。シャーロット様がニルアに感謝を伝えたいと仰っていてな」

「いえ、サラーサさんからで十分伝わりましたから、大丈夫ですよ。感謝されたくてやった訳じゃありませんし」

「ダメだ! そういう訳にはいかない! 命を救われたんだぞ!? 恩も返さず生きていたら、恥になってしまう!」


 サラーサは胸に手を当て、熱く語る。

 その反面、俺は落ち着いていた。


「恥は言い過ぎでは……?」

「それともニルア。貴族のお嬢様に一生の恥を背負わせ、傷物にするつもりか?」

「き、傷物って……絶対わざと大袈裟に言ってますよね!?」

「会いたいと申しているのだ。いくら恩人のニルアであっても、力づくで感謝を受けさせてやる」


 感謝を受けさせてやるってなんだ……? と思いながら、俺は言う。


「分かりましたよ。行きますから、殺気を消してください」


 そこまで言われて断ったら、後々が面倒そうだ。


 だが、そこでふと疑問が湧いた。

 サラーサさんがそのことを伝えに来るのなら、本人が出向いた方が早いんじゃないか……?

 

 何か理由があるのだろうか……。


【とても大事なお願い】


 ランキングの表紙入りを目指しています‼︎

 私は上位が取れる作品だと思っています……!


「これから楽しみ!」

「面白かった!」


 と思っていただけるように頑張っています‼︎


 ちょっとでも応援していだたけるのなら【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】から【★★★★★】にぜひお願いします!


 それほど読者様一人の10ポイントはめちゃくちゃデカいです……!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ