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5.狼


 フィアの課題を手伝うため、冒険者ギルドで依頼を受けた俺たちは森林に居た。


「……あぁ、緊張する」


 フィアが杖を強く握りしめる。

 これまで魔法の勉強は机に向かって来た事が多かったのだろう。


 実践の経験があまりないみたいだ。


「フィアの課題って、指定の魔物を倒すだけで良いの?」

「たぶん、それで良いはず。でも、ニルアは本当に見てるだけで……」

「仕事はするってば。俺が出来ることを教えるね」


 俺はその場にしゃがみ、地面に図を描く。

 パーティーを組ませて倒す。きっと、フィアに課題を出した人は情報共有の重要性を学ばせたいのだろう。


 冒険者ならば、知らない人とパーティーを組むことがある。その時、円滑に仲間のことを知らなければ死を招く恐れがある。


 図に作戦を描く。


「俺がおびき寄せてひるませる。トドメはフィアに取って欲しいんだ」

「へぇ……隙を見て私がトドメを刺すのね」

「もちろん。俺が得意なのは捕まえることだから、トドメは譲る」

「捕まえる……? 魔物を……? なんでそんなことができるの?」

「それが前の仕事だったから」

「仕事だった……?」


 ニルアの言葉を理解できない様子で、フィアが首を傾げる。

 

「まるで今の暗殺者みたいな仕事だったのね」

「元暗殺者だったんだけども……」

「いやいやいや! ないって! ニルアでしょ? どこからどう見ても影薄いし、貧弱だし!」

「アハハ……まぁ、そうだよね」


 無理もないことだろう。

 ちなみに、暗殺者向きの魔法属性は水だ。


 そのことも、俺が暗殺者という仕事をしていた起因でもある。

 主に使われるのは水魔法は【水玉】という魔法で、相手を窒息するために使われる。


 傷もつけず証拠も残さない。


 ただ、俺はこの魔法が嫌いだ。

 だって【水玉】は相手を苦しめて殺してしまう魔法だ。


 好きなはずがない。


 作戦を伝え、俺ができることを教えた。

 フィアは魔法でトドメを刺すと言っていたし、任せることにしよう。


 フィアが言う。


「情報だと【孤高の炎狼】はここら辺に居るはずなんだけど……」


 俺は折れた木枝を拾い、匂いを嗅ぐ。

 

「くんくん……独特な匂い。【孤高の炎狼】が踏んだ痕だ。あの狼の肉球は煙の臭いがするからね」

「匂いだけでそんなこと、よく分かるわね。いや、それ以前に鼻良すぎない? 普通分からないと思うんだけど」

「ちょっと嗅いだことがあるだけだよ」


 「ちょっと……?」とフィアが疑問を抱く。

 

 偶然にも遠吠えが響いた。

 

「アウォォォォンッ!!」


 その声にフィアの背筋が伸びる。

 俺たちは林に身を隠し、様子を伺う。


 居た。


 【孤高の炎狼】はたてがみが赤く、炎のように揺らめていることが特徴だ。


(ここら辺が、フィアと近づける限界だな)


「作戦通りやろう。フィア、来た道を引き返して。俺が引き付けてひるませる」


 フィアが頷いて離れる。


 フィアの気配は完全に消せていない。緊張しているせいで心臓の鼓動も早かった。

 これ以上近づけば、間違いなく魔物に気付かれる。


 ニルアが目を細める。林からナイフを投擲した。

 

「グルルゥッ!」

 

 投擲したナイフを【孤高の炎狼】は口で捕らえる。


 背後からの投擲に反応して見せた。

 大きく口を開き、明確な敵意に犬歯を鋭く輝かせる。


「ガウッ!」


 ニルアと目が合う。

 位置が正確にバレた。匂いまでは消せないらしい。


「流石は魔物の嗅覚だな!」


 ニルアが林から飛び出した。

 背を向けて走り出すニルアを【孤高の炎狼】が追いかける。


(よし、追いかけて来てる)


 目的の位置に到着した俺は、木の上を見上げる。

 そこには杖を構えたフィアが居た。


 魔法を打つ準備はできているようだ。


 ニルアが振り返り、鞘から剣を抜く。

 

 【孤高の炎狼】が同時に咆哮を上げる。


「ワウォォォォンッ!!」


 その音の衝撃波を、ニルアは平然とした顔で受け流した。

 狂暴な声を上げながら迫る【孤高の炎狼】にニルアは怯む様子がない。


 ニルアの剣を抜く。


「【水斬】」


 水の斬撃が【孤高の炎狼】に飛んだ。


 眼前を斬撃で塞がれた【孤高の炎狼】は口から炎を出す。

 

 蒸発した水に【孤高の炎狼】の口角が僅かに緩む。

 まるで、無駄────とでも言いたげのようだった。


「フィア!」

 

 フィアが叫ぶ。


「【風魔斬】!!」

「グル!?」


 フィアの魔法が【孤高の炎狼】を直撃した────。



「…………グル?」


 来るはずの痛みがないことに、【孤高の炎狼】が違和感を抱いた。


「…………あれ?」

「……フィア?」


 そよ風のような威力の【風魔斬】が頬をかすった。


「【風魔斬】!」


 またもやふわぁ~っと風が吹いて終わる。


「なんで通じないの!?」


 違う。

 通じないんじゃない。


 フィアの威力が低すぎるだけだ。


「グルルゥッ!!」

「いやぁ! こっち見てる!!」


 フィアに標的を変えた【孤高の炎狼】が飛び出す。

 

 ニルアが凄まじい勢いで突っ込む。

 水の膜で覆われた刃がうなる。


「【水斬】」


 ニルアの声が響く。

 的確にニルアは【孤高の炎狼】の頸を斬る。


「グ……ガァァ……」


 バタン、と【孤高の炎狼】が倒れた。


 フィアが茫然と口を開いていた。

 

「あ、大丈夫。水魔法で刃に薄い膜を張ってるから、斬ってはいないよ。トドメは譲るって約束だしね」


 俺は軽く笑って見せる。

 

「そ、そういうことじゃないでしょ……なんなの、今の動き!」


 フィアが目を開き驚く。

 なんなのはこっちの台詞だけども……まぁ良いか。


「普通に斬っただけだよ」

「普通……? 普通なの……? てか、なんで剣術が使えるの!?」

「例の姉から教えられたんだ。田舎村の子どもたちは誰も姉の相手をしたがらなかったからね……。被害を全部受けたのは俺だったよ……」


 重苦しいため息を漏らすニルアに、フィアが「ごめん……」と謝る。

 

「良いよ。それよりもトドメは任せるね」

「トドメだけって……本当にトドメだけじゃない! 私がただのお荷物じゃん!」 

「え……ダメだった?」

「ダメに決まってる!!」

「……はい」

 

 何がダメだったんだろう。

 ちゃんと協力したのに……。


 フィアがブツブツと言う。


「おかしい、おかしい! 私がニルアの先輩っぽく活躍するはずだったのに……まさか、ニルアの方が強いなんて……動きも全く見えなかったし……ニルアって何者?」

  

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