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4.冒険者ギルド


 あれから数日後、テンペスト王都にやってきたニルアは、冒険者ギルドで登録を済ませていた。

 それからは薬草採取やドブさらいと雑用の依頼をこなして、お金を稼いでいる。


 姉を探す前に、安定した生活を優先していた。


 そんな中、冒険者ギルドに声が響く。


「見つけたぁぁぁ~!」


 周りの人の視線が集まる。

 俺もその声に振り向いた。


 白髪の杖を持った少女だ。


「ふぃ、フィア?」


 怒っている様子で詰め寄るフィアに、俺は思わず後退った。

 

「探したんだからね!? ニルア!」

「さ、探したって……俺のことを?」

「当然でしょ!? 馬車からいきなり消えて、そこから連絡もないなんて信じられない!」


 そう言われても、と思う。

 王都は広いし、その中からフィアを見つけ出すのは大変だ。馬車で軽く会話した程度の関係だと思っていた。

 

 確かに、馬車から飛び降りた時にフィアへ声をかけなかったのは悪かったかもしれないけど……。


「どれだけ心配したと思ってるの」

「心配してたのか、ごめん」

「ごめんじゃない!」

「はい……」


 ニルアがしょぼくれた顔をする。


 その光景を見ていた冒険者たちがつぶやく。

 

「おい、あれが例の新人だよな?」

「あぁ、片方は【蒼炎】の新メンバーのフィア。若い魔法使いは珍しいから、俺のギルドにも欲しかったもんだぜ……あと一人は知らねえな、駆け出しじゃねえか?」

「ハハハッ! 男の方、恰好から見ても素人丸出しじゃねえか。雑魚だな、ありゃ。明日にでも死んでるんじゃねえか?」


 その声は、ニルアたちの耳にも届いていた。

 苛立った様子のフィアが言う。

 

「ニルア、言い返さなくていいの? 腹が立つのだけど」

「良いよ。ああいうのは、慣れてるから」

「慣れてるって……」


 実際、追放された時も同じような目にあった。

 馬鹿にされて済むのなら、俺が我慢すれば良いだけのこと。


 でも、フィアは我慢がならないようでムッとした顔をする。


 悪口を言った冒険者たちにフィアが「べーっ!」と舌を出す。


「行こ、ニルア」


 俺の手を引いてフィアが歩き出す。


(俺の代わりに怒ってくれた……だよね?)


 感謝の言葉を言うべきだったのだろうけど、今まで一度もなかったから戸惑ってしまった。

 フィアってもしかして、かなり良い子なのかな。


「我慢がならないのよ、ああいうのって。外見だけで決めつけて悪口を言う。フェアじゃない」

「フェア?」

「だって、ニルアが馬車から飛び降りたのは人助けのためでしょ?」

「うーん、そうだけど」

  

 頬を掻きながら空を仰いだ。

 言葉にされると恥ずかしくなる。咄嗟のことで体が勝手に動いてしまっただけのことだ。


「ニルア正しいことしたんだから、馬鹿にされるのは間違ってる」

「そうかなぁ。助けはしたけど、褒められるようなことじゃないよ」

「あなた、本当に変な人」

 

 呆れたように言うフィア。


 助けた人からはお礼も言われてないから、お金も発生していない。もちろんお礼なんか要らないけど。

 魔物にだってトドメを刺していない。なんなら、命を狙っていると誤解されてしまった。


 冒険者や暗殺者として見れば、俺は失格も良い所だ。


「お姉さんは見つかった?」

「いや、まだ探してない」

「どうして? 王都に来たら最初に探すと思ってたんだけど」

「お金がなくてさ。生活の安定を優先してたんだ」

「そうなのね。順調そう?」

「いや、全然」


 俺は苦笑いを浮かべる。

 冒険者では上下関係の制度があり、駆け出しの冒険者が受けられる依頼は決まっていた。

 

 魔物討伐をした方が、早くお金は稼げるんだけど受けることはできない。

 時間と実績を積み重ねて、ようやく受けられるようになるのだ。


「じゃ、じゃあ……! 良かったら、一緒に依頼を受けない? 魔物の討伐なんだけど」

「えっ、フィアも駆け出しのはずじゃ」

「私は【蒼炎】ギルドに入ったから、Bランクまでなら討伐依頼を受けられるの。ギルドのランクによって、駆け出しの冒険者でも参加できるように、ってね」


 そんなシステムがあったのか。知らなかった。

 

「っていうのは建前で、本当は課題なの」

「課題?」

「ええ、そう。【蒼炎】のメンバーになったら、色々と課題をギルドマスターから言い渡されてね……そのうちの一つ、誰かとパーティーを組んで依頼を達成しろって言う」


 【蒼炎】のギルドマスターか。どんな人なんだろう。

 フィアは疲れた様子で言う。


「ニルアも変な人だったけど、ギルドマスターも相当に変な人だったのよね……」


 失敬な。変な人って言いすぎだぞ。

 でも、どうして俺なのだろうと疑問が湧く。


 王都なら俺以外にも冒険者はたくさんいるだろうし、珍しい白髪でフィアは美人だ。

 

「俺じゃなくても良いような気がするんだけど、聞いても良いかな」

「あなたじゃないとダメなの。ほら、自分で言うのもなんだけど……私って魔法使いで髪の色も珍しいでしょ? 人との関係が築きづらくてね……王都で知り合いなんて誰も居ないし」


 そこで俺に白羽の矢が立ったという訳か。

 フィアも不安なんだろう。王都に来たと思ったら、知らない奴とパーティーを組んで魔物を討伐だもんなぁ。


「【蒼炎】のメンバーは?」

「無理。だって、光り輝く人たちなんだもん。声すら掛けられない……」


 光り輝くって……。

 

「それに、ニルアなら信用できるから」


 虚を突かれて、驚く。


「聞いたでしょ? 冒険者ギルドで悪口を言う奴ら。あんな奴らとパーティーなんか組みたくないもの」

「アハハ……それは分かるかも」

「でしょ。人を助けるために迷わず馬車から飛び出したニルアだから、頼んでる」


 俺だから……。

 初めて人に頼られている気がした。


 やっても怒られたり、無駄だと思っていたことを褒められた。


 そのことが少しだけ嬉しくなる。


「分かった。フィア、俺で良ければ手伝わせて」

「そうこなくちゃね。報酬は半々で良い?」

「もちろん。で、依頼は?」

「Bランクの魔物の【孤高の炎狼】。正直、あなたには荷が重いかなって思ってるから見てるだけで良いからね」

「うーん……少しくらいは手伝うよ」

「本当? 駆け出しの冒険者じゃ絶対に勝てないんだから、怪我しても知らないからね?」


 駆け出しはフィアだって同じじゃん、と思うも口を閉じる。


「それでも仕事くらいはしないと、報酬は受け取らないよ」

「まったく、頑固ね」


 ちゃんと報酬がもらえるだけ、かなり有難い。

 

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