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羽化  作者: 春江 柚里
1/3

孵化(ふか)

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生々しい思春期の暗さがあるかもしれません。人間的な暗さなども。

また、ロリータコンプレックス的な要素を含みます

(恋愛感情の萌芽は、ある程度の年齢になってからという設定ですが)。

そういったものに嫌悪がある方は、ご気分を害される可能性がありますので、

精神衛生上、ブラウザバックをおすすめいたします。

2009年8月10日 春江

*************************************************************************************


彼女を女として意識し始めたのはいつの頃からになるのだろう。


はじめは、子供としか思っていなかった。



近所に住む従姉弟の一人娘である彼女は、少し変わったところのある少女で、小さい頃から周りにとけこめずに一人で過ごすことが多かった。

よく僕に、色のない世界のお姫様が色を知る話や、擬人化された野菜たちが活躍する話、羽をなくした妖精の話など、即興の物語を聞かせてくれた。

彼女の母親である僕の従姉弟は、キャリアウーマンとしてある程度確立した地位の人だったから、子育てと仕事のバランスをとろうと必死だった。

そして、父親も同じように会社である程度のポストの人だったわけで、二人が彼女にかまう時間が少ないのは必然的なことだった。

たまたまそんな状態で、何とか保育園には通うものの、心を閉ざしかけていた彼女のお守りに僕が選ばれた訳だった。

その時の僕は気楽な大学生。ちょうど保育士を目指していたということもあり、実践さながら、彼女のお目付け役を授かった。

学校から帰って、すぐに保育園まで彼女を迎えにいって、従姉弟が帰ってくるまでの時間を一緒に過ごした。

土曜も従姉夫婦は当たり前のように出勤する。

大学生の僕は休日なので、彼女と一日一緒にすごすこともあった。

そんな日は、一緒にお風呂に入って歌を歌ったり、髪を乾かしてやったり、アイスクリームを食べたり、ただただ慕ってくれる彼女を、いとおしく思ったものだ。

まあ、それなりに我がままをきいたり、けんかをしたり、困ったこともたくさんあったのだけれど……。(そう、この時の経験で、乙女心は秋の空と学んだ気がする)

彼女が小学校になるまで、ちょうど僕が大学を出るまで、僕たちは一日のかなり長い時間を共有していた。

最後の方は、彼女が大人のような口をきくようになり、「しょうがないね」と言いながら、僕のシャツの取れかけたボタンをつけかえてくれるようにすらなっていて、従姉弟に笑われたものだ。

そんな彼女も、小学校に通うようになり、ようやく友達もできて僕の手を離れていった。

そして、僕自身も社会人になったということもあり、覚えることや学びたいことも(そして仲間と遊ぶ時間も)増え、しばらくは彼女に会うこともなかった。


ずいぶんの間、彼女と僕の間には、夏休みやお正月なんかに挨拶をする程度の関係が続いた。



こんにちは、春江 柚里 (はるえ ゆり)です。

お読みいただきありがとうございます。

このお話は、孵化ふか蛹化ようか羽化うかの三話で完結する予定です。

よろしければ、近日中に蛹化もUPする予定ですので、ご覧いただければ幸いです。

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