「内気な剣士トウマってどうなの?」
幼少期にトウマにおきた出来事とは。トウマには、秘密があった。
<内気な剣士トウマ>
トウマは、スザク傭兵団団長のヒョウガ・キジマの子で剣の天賦の才があると周囲の誰もが認める少年である。
しかし、極度な恥ずかしがり屋で内気な少年で、これも周囲が認めところでもあった。
トウマには、年の離れた兄がいた。
トウマの兄イサミは、傭兵団1番隊の隊員で、父の剛剣を引き継いだといわれまた、人望もあり将来を嘱望されていた。
イサミは、いつも優しくそして強くトウマにとって憧れの存在でヒーローだった。
トウマが7歳になり剣術を本格的に習い始めた時、ある事件が起こった。
稽古では木刀を使っていたトウマだったが、好奇心に駆られ兄の愛刀である虎徹を抜いてまじまじと見つめていたその時、異変が起こった。
身体から異様なオーラが滲みだし目は血走り、7歳の子供では振り回すことなど不可能な重さの真剣を軽々と振り回し始め、かたっぱしから周囲の物に切りつけ破壊していった。
何かに取りつかれた様子で、前後不覚になっているが、その剣筋はするどく切りつけ、物は
きれいに両断されていた。
その異変に気づいたイサミは慌ててトウマの元に駆け付けた。
「何が起こっているんだ」
「トウマ!」
イサミが制止しようと近づこうとしたとき、目にも止まらない速さでトウマはイサミに切り付けてきた。下段からすくいあげるように繰り出された一撃を紙一重でよけ後方に飛びのき事なきを得たように思われたが、その一撃はイサミの右わき腹をとらえていた。続く右袈裟切りで左肩を切られた。トウマの追撃の足は止まることなく数撃、傷を負いながら左右前後にかわさなけれならなかった。
「トウマやめるんだ!刀を納めろ!」
「トウマ!トウマ!」
繰り出される斬撃をかわしながらイサミは、トウマに呼びかけた。
しかしトウマの斬撃が止まる様子はなく、息つく隙間もなく繰り返される斬撃に7歳の子供のどこにそんな体力があるのかと思われた。
イサミの体力の限界が見え始めたそんなとき、さきに肉体の限界かきたのは、トウマの方だった。トウマの身体は突然、硬直し動きを止めた。イサミは素早く刀を奪い取ると力なくその場に倒れこんだトウマを受け止めた。
トウマには、その時の記憶はない。父ヒョウガは、その様子をイサミから聞き、一言。
「バーカサーか」と唸った。
イサミの傷は大事には至らなかった。トウマの深層心理に大きな傷を残した。しかし、誰もそれに気づく者はいなかった。当の本人さえも。
その日からトウマのバーカサーの力をコントロールするための修行がはじまった。
バーカサー状態に陥るとコントロールは至難の業となるので、バーカサー状態を引き起こさないようにすることが先決となる。
トウマの場合、バーカサーのトリガーは、「真剣」と推測された。
真剣を取り扱えないということは、トウマが志している剣士をあきらめることとなる。
修行は、平常心を保つ訓練からはじまった。座禅からはじまり、呼吸法など、7歳の子供にとっては辛いものもあったが、素直で真面目なトウマは、剣士になりたいという強い思いから耐えることができた。
最初は、真剣を見るだけで心に乱れが生じていたが、9歳を迎える頃には、剣を握っても心を穏やかに保つことができることができるようになった。
10歳の今、トウマは常に真剣を携帯することが許される。見習い剣士と認められるようになった。
まだ、バーカサーを意図的に引き起こし自分の力としてコントロールできるところまでは修行は進んでいないが、バーカサーが暴走することはなくなった。