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「遺跡ってやっぱ何かあるよね」

シン、トウマ、ユイは、遺跡の森に遊びに出かける。そこで、目にしたものは‥。

<遺跡>


イズモ自治区は、ジュラ連合国家の北東に位置する。

北は、ドラキア王国、東は、ペルシア帝国の国境と面している。

スザク村は、イズモ自治区の南に位置していて他国からの交易品の流通の要衝となる位置にあった。トラキアから鉱物をペルシアからは、東方からの特産品や綿、麻、毛織物、絹の陸路とイズモ自治区の東にある貿易港サカイミナトに陸揚げされた物産品や海に面したシュメール自治区からの海産物などがスザク村を経由して首都ジュリーへ送られていた。北東にジュラフジ山があり、北西にシュバルツヴァルトと呼ばれる樹海が広がっていた。その間を通る街道が、キョウの町につながっていた。


休みの日、僕は、トウマと連れ立って遺跡の森に行く約束をしていた。

待ち合わせの広場には、トウマが先に来ていた。

手を上げておはようと呼びかけるとトウマは、頷き近づいてきた。

「おはようトウマ」

「おはよ」

「久しぶりの遠出だね」

「シンが、神隠しにあったことで、大人たちが村から出るのをゆるしてくれなかったからね」

「もうしわけない」

「「ハハハ」」

僕は苦笑い。トウマは屈託なしに笑ってくれた。

「トウマ、お昼なんか買っていく?」

「ユイが作って来てくれると言っていたよ。もうすぐ来るんじゃないかな」

「え?ユイを誘ったの?」

「ダメだった?」

「いや…」


僕が、あいまいに答えた。別に嫌じゃないけど、男同士なら気を使う必要はない。

そこに女の子が入るといろいろ面倒な気がした。

「ユイは心配いらないよ、僕より、しっかりしているから」

とトウマは、言った。

前世の記憶がない時は、3人の関係ってどうだったのだろう。気持ちの部分だけに記憶があいまいではっきりしない。トウマは、ユイのことが好きなのかな。僕はどうだったんだろう?


前世の記憶がよみがえってしまってから精神年齢があがってしまったので、これまでの関係が続けられるか不安になった。

10歳らしい物の考え方は、不可能だし。どうしたものかと考え込んでしまうのだった。


「遅くなってごめん、久しぶりのお出かけだから、張り切っちゃって、お弁当作りすぎちゃった」

ユイは、舌をペロっとだしてあいさつなしに切り出した。

「ユイありがとう、お弁当楽しみだね」

トウマは僕にむかって笑いかける。

意味ありげに見えるのは、僕の勘繰りだろうか。

トウマは、剣士見習いの刀を背負っていたので、バスケットは僕が持つことになった。


「探検のつもりがピクニックになっちゃったよ」

「お弁当を食べてから遺跡を探検しようよ」

「コスモスの花畑の奥にある遺跡だよね」

「まだ、いったこともないところもあるから」

「そうそう、たのしみだね」


遺跡の森は、スザク村の南西に位置する。

子供の足でも村から1時間足らずでたどり着けるところにあった。

村人の憩いの森で、魔獣は、森の深部までいかないといない安全な森だ。


僕たちは、南門を出てシュメール自治区の町、キシュにつながる街道を南下していった。途中から遺跡の森へと繋がる小道がある。季節は、夏から秋を迎えようとしていた。

田んぼの畔にはヒガンバナが、過ぎゆく夏を惜しむように鮮やかに赤い花を咲かせていた。

稲穂が、黄金色になりつつある田園風景から、背丈の高い木々に視界を防がれるようになり金木犀の木が、森の入り口を示すように立っているのが見える。



金木犀の香りを嗅ぎ、ふいに前世の記憶がよみがえった。

妹の亜子が、中学校1年生のころだったと思う。塾の帰りに同級生の男の子に告白されたと僕に言ってきた。どうしようと言いつつも満更でもない様子で、これは僕に背中を押して欲しいだなと気をきかせた僕は、デートでもしてみたらどうかと提案した。

亜子は、目をまるくして、次に顔を赤くして非難じみた口調でそんなことできないと言ったのだった。

僕は、あてが外れたと思い、それなら放っておいたらいいと次の提案をした。すると今度はそんなひどいことはできないと悲しい目つきで言ってきた。

僕だって、そんなに恋愛経験があったわけではなかったから、どうしたらいいかわからないと正直に答えた。亜子は、私もわからないから聞いたんじゃないと言い捨てて部屋を出ていってしまった。けれど、その次の日曜日、金木犀の香りをさせ、白いブラウスに黄色いスカートでおしゃれをしてデートに向かう妹の姿があった。あの日、僕は幸福だった。その時は、そのことに気づいていなかった。



コスモスの花畑に到着した僕たちは、お弁当を広げて早めの昼食をはじめた。

お弁当には、おにぎりと玉子焼き、唐揚げや蓮子の鋏焼き、肉爪ピーマンなどがバスケットいっぱいに詰まっていた。

「すごいね。おかずがいろいろある」

「この唐揚げ、おいしいよ」

「シンは、から揚げ好きだったでしょ」

「うん。ありがとう」

「トウマには、玉子焼きね」

「ありがとう」

「玉子焼きもおいしい」

トウマと僕はお弁当を食べるのに夢中になった。

「ねぇ、おにぎりはどう?」

なぜか、心配そうにユイが聞いてきた。

「おいしいよ、でも大きさがいろいろだね」

「お母さんが作ってくれたのが混ざっているから…」

ユイは、はずかしそうにはにかんだ。

「おかず、全部おいしいよ」

僕は、ユイに気を遣うわけでもなく正直に伝えた。

「おかずはお母さんが全部作ってくれたの」

ユイは、顔を赤くしてうつむいてしまった。

トウマは、我関せずといった具合に黙々とお弁当を食べていて助け舟をだしてくれなかった。

お弁当には、クランベリーやラズベリーのドライフルーツも入っていて、甘くコリコリした食感が楽しかった。


お腹を満たした僕たちは、花畑から森の奥まったところにある、遺跡まで歩いていった。

遺跡を超えて森の深部に入ると魔獣やゴブリンなど人に危害を与える魔物が生息していた。

子どもだけで行動が許されるのは、遺跡までとされていた。

遺跡は、傭兵団が十分に調査済みなので安全なはずだった。


遺跡の内部には、壁画があり、何かを作っている様子を絵にしているように思えた。

遺跡に来るのは、今日が初めてではなかったが、記憶が戻った今、遺跡の各所にいままで気づかなかったものを発見できるのではないかという期待があった。今日は、今までに入ったことのないエリアにもいくことにしていた。遺跡の内部には、自然光を取り入れる窓があり薄暗いが、探索するには十分な明るさがあった。前世の記憶が戻った今、改めて遺跡の内部や壁画を見ると遺跡がどのような用途に使われていたのか興味がよりいっそう湧いてくるのだった。


遺跡は、いくつかの部屋があり、神殿というよりは、何かの施設といった様子だった。

こんな風に遺跡を探検していると、隠し部屋か落とし穴に落ちてうんぬんというのかライトノベルの定番だけど。そんなことを考えていると。


「ねぇ、遺跡の探検で、壁画の像の目が光ったり、隠し部屋をみつけちゃったりしたらどうする」

ユイが定番のことを言い出した。

「え~、フラグ立てちゃったらダメだって」

「フラグ?なにそれ?」

「いやいや、なんでもないよ」

「こういう壁画は、変なところを触っちゃたらいけないよ」

「この壁画の女の人、綺麗だよね。この服も素敵だよ」

「だから、あんまり触ちゃったら…」

不意に壁画の人物の目が赤く光ったように見えた。

「「うわ、目が光った」」

ユイと僕が叫んだときだった。


壁面に一筋の割れ目があらわれそして、扉のように開きだした。

トウマとユイは、しりもちをつき相当に驚いたようだったが、なぜか僕は、その開いた先への興味が勝ってしまい、一歩中に踏み込んでしまった。


「シン!ダメ!あぶない!入っちゃダメ!」

ユイの制止の声がたしかに聞こえていたが、身体が僕の意志とは関係なく動いてしまう。

トウマが、しりもちから立ち直り、僕の腕をつかみ僕を引き戻そうとしてくれているのがわかった。

けれど、僕の歩みはまったく止まらず光の中に進んでいく。


ユイもトウマの身体にしがみつきいっしょに僕を引っ張ろうとするが、何か得体のしれない力で僕の身体は中へ中へ進んでいく。僕に引きずられるようにユイもトウマもいっしょに光の中に引きずられていった。


光が徐々に弱まり周囲の様子が見えてきた。トウマは僕の腕にユイはトウマの腰にしがみついたままの格好でまわりを見回していた。

その部屋には、装飾品もなく、前方に小さな丸いテーブルのようなものがあるだけだった。


僕は、下手に何かに触ってまた変なものを起動させたらたまらないと思ったが、自然に引っ張られるように、前に進み出て丸テーブルに近づいていた。

「ちょっと、まって」

ユイに呼びかけられたが、僕は振り向きながら小さな丸テーブルに手をかけてしまった。

そのとたん、緊張感のないチャイムが鳴った。


「キンコンカンコン♪」


僕らは、何か起こるのではないかと身構える。

ユイも恐る恐る僕の近くに寄ってきた。

トウマは背にしていた刀に手をやり、身構えている。


数秒、数十秒。じっと様子を伺う。

…何もおこらなかった。


僕は、丸テーブルの側まで歩み寄り、意を決してもう一度、丸テーブルを触ってみた。

そろっと撫でるように。


またまた、緊張感のないチャイムが鳴る。

「キンコンカンコン♪」


「もしもし、誰がいますか」


部屋の奥に向かって話しかけてみた。

すると、機械的な女性の声がした。


「何か御用ですか」

((!!!!!))

「うわ!」


今度は、僕も驚いてしりもちをついた。

なんとか、体制を整えて、自分におちつけと言い聞かせる。


「えっと、僕は、シン。シン・トウギと言います。突然、おじゃましてすいません。

迷い込んでしまったんですが、ここはどこですか?」

「ここは、グランデイア研究所です」

「研究所ですか?あなたは、あなたの名前を教えてください」

「ここは、グランディア研究所。私はアリアナです」

「アリアナさんは、ここの住人なのですか」

「いえ、私は、魔導機械知能です」

人口知能。AIのことなのか。

「あなたのご主人はいないのですか」

「ご主人様に御用ですか」

「人がいるんですね。はい、会わせてください」

「しばらくおまちください」


しばらくすると部屋の中央付近に、スポットライトが当たり床から円形の台がせりあがってきた。


「ご主人の部屋までご案内しますので、エレベーターに乗ってください」

「エレベーターって何?この台に乗るの?」


すっとんきょうな声でユイが誰に話すわけでもなく声を出した。

トウマは、あまりにも想定外な状況に頭がついていっていないのか、声が全くでなくなっていて、僕とユイの顔を交互に見ては、頷いている。


「どうする?乗ってみようよ、行ってみよ!いってみよ!」


好奇心マックスのユイが、積極的に僕やトウマの手を引いてエレベーターに向かおうとする。僕は、はじめから行く気満々だったので、問題無い。トウマは、まだ、呆けた状態なのでユイにされるがままになっている。なぜか、そのときもうんうんと頷いている。多分、状況に理解が追い付いてないと思うのだけど。これは、いざとなったとき、トウマの剣術はあてにならないとあきらめた。


エレベーターに乗ると筒状の光が僕らを覆い、目の前が真っ白になった。その光が薄らぎ周囲がみえるようになり、エレベーターからおりる。部屋に明かりが灯り、部屋全体が見渡せた。

そこには、天蓋つきの大きなベッドがあり、そこに人が横たわっているようだった。


「あの~、おじゃまします」

声を掛けるが返答はない。

ユイは恐る恐る、ベッドに近づいていった。それを追うように僕もベッドに近づいた。

トウマは、やっと状況に頭が追い付いて、刀に手をかけ周囲を警戒しはじめた。


ベッドには、10歳程度に見える色白で水色の髪をした少女が横たわっていた。


「もしもし、あの~」

ユイが声を掛けるが目を覚ます様子はない。

死んでいるのか?僕は、少女の首に手をやって脈をみてみる。脈はよわいがあった。

ただ、脈の間隔がとても遅い。呼吸もとても浅く同じく、間隔がとても遅いのが確認できた。

生きているけど、何かおかしい。

「死んでいないわ、魔法か何か掛けられているんだわ、きっと」

ユイが確信したように言った。

「どうしてそんなことがわかるの」

ユイは、少女の周囲に魔法の結界が張られていると言った。魔法の才能の無い僕にはわからないが、ユイには感じとれているようだ。

少女の額を指さし、「これは見えるでしょ」

額に淡く薄い紫色の光が見えた。

「これは何」

「私も良く知らないけど、最上位魔法が掛かっている形跡だと思う」


僕は、ふいにあることを思いついて、天井に向かって叫んでみた。

「アレ〇サ、教えて」

機械的な女性の音声がまた聞こえてきた。

「私は、アレ〇サではありません。アリアナです。何か御用ですか」


「ゴホン‥、アリアナさん、この少女のことを教えてください」

「ご主人様の名前は、テレサ・ルイーゼ・グランデイアです」


アリアナによるとこの少女テレサは、この地方を治めていたグランディア家の子女であるという。テレサは、不治の病で当主である父親が、治療魔法の研究のため、遺跡にいくつかの研究部屋を作り、研究していた。ついに治療魔法を完成させ、テレサに治療魔法をかけたが、完治までは、長い歳月が必要とわかり、結界魔法と生命凍結魔法をあわせてかけられこの遺跡で眠り続けているということだった。


「テレサをここから救い出す方法はないのかな」

「魔法を解かないと連れだすこともできないよ」


僕たちは、どうしたらよいか相談するが、なかなかいい案はうかばない。

僕は、アリアナなら何か良い案を提案してくれるのではないかと言うとみんな同意してくれた。


「アリアナ、テレサの魔法を解く方法はないの?」

「魔法を解く方法は、薬剤室に魔法解除薬があります。それをご使用ください」


みんなに笑顔が戻り僕たちは、薬剤室に魔法解除薬を取りにいくことにした。

薬剤室には、エレベーターは試用できなかったので、アリアナが案内してくれることになった。


「では、みなさん案内しますので、ベッドの横の引き出にあるアイテムをお取りください」

僕は、引き出しにある、楕円系のコンパクトのようなアイテムを手に取った。するとそこから浮き上がるように見取り図が浮かび上がり、アリアナの声がした。


「ドアを開けますので、部屋を出て指示に従ってお進みください」


部屋を出てアリアナの指示に従って廊下をすすんでいく。

アリアナの説明によるとこの遺跡は、もともと3000年前に古代文明によって作られた魔法人形ゴーレムの生産施設だったようだ。そこに1000年前にグランデイア家が、古代の魔法を研究するために研究所を併設したのが始まりで、テレサの病気を治す研究はその後、さらに増設された研究室でおこなっていたらしい。薬剤室までには、そのゴーレム研究の遺産で作られた警備ゴーレムがいるらしい。


前方に2メルくらいの人型ゴーレムが見えた。警備ゴーレムは、起動はしていないようで微動だにしない。


警戒しつつゴーレムの横をすりぬける。何も起こらない。薬剤室まで数体のゴーレムがいたが、全部起動することはなかった。


薬剤室の中は、ひんやりと寒くこの部屋が今だに稼働し続けていることがわかった。いくつもの棚とケースがあり正体不明の薬が並んでいた。

「アリアナ、魔法解除薬はどれ?」


アリアナに解除薬の場所を教えてもらい、薬を手に入れることができた。

後は、部屋に戻り、テレサに使うだけだ。僕らは、急いで、部屋に戻ることにした。


「心配したけど、ゴーレムどれも動かなかったみたいだね」

「むむ…、またまた、フラグたてたんじゃない」

「フラグ?立てた?」

「いや何でもないけど…」

ちょっと嫌な予感がした。


「これなんだろ?」

大きな赤いボタンを押しながらユイが僕に問いかけた。

「それは、押したらいけないものです」

「え!」

「うわー」

『ブーワ!ブーワ!ブーワ!』

けたたましいブザー音が鳴り響いた。

「やばい!逃げよう!」


僕たちは、全速力で部屋から飛び出し、テレサの部屋に向かって走った。

最初の警備ゴーレムは起動したばかりでうごきが鈍く、股の下や横をすり抜ける。

ゴーレムから赤外線と思われる赤い光の線が放たれている。赤外線に触れるとロックオンされる。僕は、みんなに赤外線をよけながらにげるように言った。ロックオンされたらどんな武器を使われるかわからない。

もう少しでテレサの部屋にたどり着けるところまで走り切り。角を曲がったときだった。

警備ゴーレムが、僕らに立ちふさがった。後ろにも僕たちを追ってきたゴーレムの姿があった。赤外線が、僕やみんなの身体に集まりロックオンされている。僕たちは、逃げ道を完全に失った。ユイが僕の後ろで身体をこわばらせ、トウマは、背中の刀に手を掛けた。到底かないそうにないけど、やるしかないかと腹をくくった時だった。


間の抜けた機械音声が聞こえた。

「身分証を提示ください」

((???))


僕は、アリアナにいわれるまま、コンパクトをゴーレムに提示しアリアナが、8桁の番号を読み上げた。


警備ゴーレムは、何事もなかったように自分の所定の位置に戻っていった。

「ねぇ、逃げる必要なかったんじゃない。誰よ、「逃げろ!」っていったの」

僕は、目を泳がせ知らんぷりを決めこんだ。

僕たちは、しばらくその場にへたり込んでしまい、動くことが出来なかった。



僕らは、テレサが横たわるベッドの傍らに立っていた。

アリアナによれば、薬剤室から持ってきた魔法解除薬を身体にかけると魔法がとけてテレサは、目を覚ますらしい。でも、病気が完治していなかったら病気の進行がはじまってしまう。


「どうする?ほんとに目覚めさせていいのかな」

「病気が治ってなかったら…」

僕たちは、しばらく考え込んでしまった。

「アリアナに聞いてみたらいいんじゃない」

それまで何の発言もしていなかったトウマから目から鱗の提案がった。


「アリアナ、テレサの病気が治っているか、わからないんですか?」

「テレサ様の身体データには、異常はみとめられません」

「病気は、完治したと判断できるんだね」

「はい」


「「「よ~し、よかった。大丈夫だね」」」


僕らは、薬を使用することを決心した。

「シン。お願い。神帰りのあなたが1番いいと思うんだけど」

ユイから薬を託された僕は、なぜかそれが必然で僕がやるべきことだと自然に思えた。


部屋は静寂に包まれていた。ユイは、跪いて祈りの姿勢をとった。トウマも刀を背中から降ろして跪いた。僕は、柄にもなく神様に祈り薬を天に向けて掲げる。

テレサの額に一滴薬垂らす。紫の光が飛び散り七色の光がテレサを覆い霧散した。そして、周囲の結界も薄いガラスが砕けるように跡形もなく霧散した。

テレサの唇と頬に赤みが差し、水色の髪に輝きが戻り、白く透明な肌に血の気が戻る。

「テレサ、目を覚まして」

「「テレサ」」

僕らは、幼馴染に声をかけるように名前を呼んだ。それは、僕らにとってとても自然なことだった。


ベッドには、水色の瞳をゆっくりと開いた少女が横たわっていた。そして、彼女は確かに言った。


「見つけてくれてありがとう」と。




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