平凡に救国の英雄
其の83
セイシュウ城に帰るバリョウは無言だった。
皇帝陛下より騎督尉を拝命されたソウソウ一行を相手に、一歩も引かない女性の存在がバリョウには衝撃だったからだ。
女性というだけで、戦場では一段下に視られるのが通常。
しかし、己れの武により敵を退け尚且つ、地位に媚びることがない姿はバリョウに無いものを全て持っているようで、眩しかった。
常に兄弟達と比べられ、「ハリョウ」と陰口を言われても何も言えない自分とは余りにも彼女は違っていた。
今も、セイシュウ城に向かうその姿を直視出来ない。
これは…
「尊敬」
または…
「羨望」
或いは…
「畏怖」
それとも…
「恋」
さまざまな気持ちを抱えてバリョウは無言のままセイシュウ城に帰還するのであった。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
セイシュウ城の城門に近づくと、守備兵達がチョウ妃の姿に気付き
『エ、エンジン様!』
『エンジン様がお越しになられた!』
等と一気に騒がしくなる。
守備兵達の歓声に少し苦々しい表情をしたソウソウも無言を貫いている。
救国の英雄の凱旋に、後片付けをしていた兵士はもとより、民間人達もこぞって城門に押し掛けたので、俺達は凄まじい人の波に呑み込まれてしまった。
護衛という名の野次馬のような兵士達に囲まれ、どうにかセイシュウ城の謁見の間にたどり着いが、そこでもチョウ妃はセイ州候トウセイを始めとした面々に熱烈な歓迎で迎えらた。
やれ「セイ州の英雄として是非とも我が陣営に」に始まり、金品、縁談と続いたが、チョウ妃が仙人の弟子だと名乗ると「大将軍ではどうか」とか「セイ州の軍師に」等と皆が騒いだところで
『そういった褒美は結構。どうしてもと言うなら、捕虜の処遇を我々に一任して頂きたい』
とチョウ妃がハッキリと言い放つ。
それを聞いたセイ州の面々が「なんとも欲が無いばかりか、謹み深い」やらとまた騒ぎになったが、チョウ妃の申し出は当然受け入れられ、夜の祝勝会への参加を条件に俺達は与えられた部屋に一先ず退散することが出来た。
与えられた部屋で
『さっきのは何?捕虜の処遇とかってさ』
俺の当然の疑問にチョウ妃は悪そうにニヤリと笑うだけで、それ以上は何も応えなかった。
次回投稿予定【】




