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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第一章
8/84

平凡にハモる!

其の8






『お前さんは魔人じゃな?』



最初は喋る死体に驚いた婆ちゃんだったが、冷静さを取り戻して出た言葉だった。


『えっ!?魔人って死なないの?』


絶賛恐慌中の俺が婆ちゃんに聞くと


『死なない者などおるか!』

『わしでもそのうち死ぬわ』


と、あと千年は死ななそうな婆ちゃんが教えてくれた。



両足は無惨に引き千切られ、胴体からは内臓が飛び出し、左腕は肩から先の骨が露出した姿の魔人。


そんな姿で目を動かし喋ったのだから誰だって驚くし、混乱だってするのが当たり前の状況だった。


『魔人って丈夫なんだね』


俺の素直な感想に半分呆れたように婆ちゃんは説明を始める。


『魔人かどうかは血液の色で見分けがつくんじゃ』


人間のモノより少し青み掛かってるような…


『確かに魔人は人間に比べて長寿な分、少しは丈夫とは言えるじゃろうがな』

『じゃがな、こんな姿で生きとる理由としては道理が通らん』

『魔人だって普通に死ぬからの』

『実際のこいつはもう死んでおるんじゃろうが、恐らく魔法で死ぬのを遅らせておると言うのが正しいじゃろうな』



『『魔法?』』


俺と師匠がハモった。


『わしも初めて見たのじゃが、恐らく【死者の噤呪】じゃろ』



『『【死者の噤呪】!?』』


ハモり再び。


『胸元に魔方陣があるじゃろ。アレが【死者の噤呪】じゃろうな』


確かに魔人の胸元には拳大の魔方陣があった。


『昔、わしの師匠に聞かされた状態に似とると思っただけじゃから確信ではないがの』

『幸いこいつは喋れるようじゃから色々聞かせてもらうとするかの』


そう言って婆ちゃんは魔人の横にしゃがんで


『お前さんは何者じゃ?』


と魔人に向かって語りかける。


魔人は婆ちゃんを見上げなら暫く思案した後に諦めた様子で


『オレの名はチョホウ』


と名乗った。



『何ッ!?チョホウだと!?』

『貴様がチョカクの弟のチョホウなのか?』



驚き続きのタイシジ師匠。


で?

チョカクってどなた?的な視線を俺と婆ちゃんが師匠に向けると


『赤頭巾の一味だと思ってはいたが、あのチョカクの弟のチョホウだったか』


と師匠は未だに興奮気味。



話しが見えない俺と婆ちゃんだったが、ずっと存在感の薄かったシュウソウが


『そういう事でしたか』


と自分だけ納得の様子で呟く。


少しイラッとしたので晩飯で仕返しでもしてやろうかと思った時だった。


『ジュゥ~』


と音を発てチョホウと名乗った魔人があっという間に干からびてしまった。



『『『あぁぁぁ~』』』



遅らせていた死を迎えた魔人に対し遂に3人でハモった。


そして3人が同時にシュウソウに振り向き


『説明しろ!』

『説明するのじゃ!』

『説明しろ!』


と迫る。


『ハイ』


と申し訳なさそうに答えるシュウソウ。


少し弱気な雀の姿をした悪魔がそこにいた。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




『全く意味がわからん!』


そう言ってタイシジ師匠は頭を左右に振りながらドカドカと森の奥に歩いて行った。


お花を摘みにでも?


シュウソウの説明によると全ては魔王の仕業、或いはその指示だと言うのだ。


そもそも、【死者の噤呪】のような強力な魔法を使える者は魔王の他にはいないと言う仮説を元にしたシュウソウの説明。



魔王は大陸の西、海の向こうにある魔人の国に今から700年程昔に現れ魔人の国を支配している。

チョホウと兄であるチョカク、残るもう1人の弟は魔王の配下の魔人で、魔人の国からゴゥキン帝国にやって来た。

チョホウの胸元の【死者の噤呪】が魔王の配下である証拠だと。

当然その兄弟達も配下と考えるのが妥当。

恐らく兄弟達も【死者の噤呪】の魔方陣が体にあるはず。

ゴゥキンに3兄弟だけで来たのか、他にも魔王の配下がいるのかは不明だが、魔王からの指示の一環で【悪魔召還魔法】も行ったはず。


と言った内容を雀胸を張って説明した。


ちなみにチョホウの兄であるチョカクが赤頭巾のリーダーだとタイシジ師匠が教えてくれた。



魔王ね…



婆ちゃんも魔王の存在は肯定したし、【死者の噤呪】も1人の導士が行わなければ意味が無いとも言ってた。


でもそれだけで魔王の仕業かぁぁ?


仮にシュウソウの推理通りだとしても目的が全然わからない。

魔人の国はゴゥキンから遥か遠く、国境も接していない国に介入してメリットはあるのか?

それに赤頭巾の奴等は最初の頃、慈善活動をしていたはずだ。


その辺の理由からタイシジ師匠はシュウソウの説明に納得してない様子だった。


俺も全然納得してないけどね…



いつまでもシュウソウのポンコツ推理に付き合っていられないのと、唯一の手がかりだったチョホウが既に死んでしまった為、この場にいても仕方がないと帰ることに。


散乱した死体は一ヵ所に集めて婆ちゃんが魔法で火葬した後、埋葬して俺達は謎が増えただけの森から転移魔法で帰宅した。



シュウソウだけは自分の推理に酔っていたようだが、みんながスルーしていたのは言うまでもない。

次回投稿予定 【6月26日】

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