平凡に喚く
其の78
セイシュウ城の東門からソウソウの側近達を引き連れて場外に出たところで
『南門付近と戦場の雰囲気がまるで違うが、どういうことか?』
ソウソウの問いに
『私は南門の守備に就いていたため詳しくは存じませんが・・・ユウ州の将軍が1人で敵を蹴散らしたといった報告は聞いております』
バリョウが応える。
『1人だと!?』
驚愕の表情のソウソウ一行だが、周囲を見渡したソウソウが
『カコウトン!お前なら出来るか?』
『恐らく万の赤頭巾がこちらにも居たであろう状況で、突っ込むだけなら俺にも出来ようが、蹴散らすとなれば…うぅぅん』
カコウトンと呼ばれた将軍らしき者は渋く表情を歪めた。
突っ込むだけでも立派な強者だが、さすがに万からの敵を蹴散らすことは不可能らしい。
『そうか。どうやらユウ州には今まで野に埋もれていた英雄、英傑が現れたとみて間違いなさそうだな』
ソウソウの呟きに
『フン。どうせ夜襲で混乱した赤頭巾が勝手に逃げ出しただけだ』
ソウジンは手を振って信じてない様子だ。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
北東に馬で駆けること半刻。
丘の上に「ユウ」の旗が見えてくる。
野営陣の前迄来ると
『私はセイ州のバリョウと申します。セイ州候トウセイ様の命により騎督尉ソウソウ殿をお連れ致しました。ユウ州軍の指揮官にお目通りを願いたい』
バリョウの口上にユウ州側から歩み出た隊長らしき者が
『暫しそちらでお待ちください』
そう言って部下を本陣に向かって走らせる。
すぐに伴を数人連れた指揮官らしき者が姿を現し
『私はこの軍を預かるスウセイと申す』
指揮官の登場に直ぐさま馬から降りたソウソウが
『私は皇帝陛下より騎督尉を賜ったソウソウと申します。セイシュウ城解放についていくつかお聴きしたいがよろしいか?』
毅然とした態度ながら礼儀正しいソウソウに
『わかりました。では中でお話ししましょう』
そう言ってソウソウ一行をユウ州軍の幕舎に案内するスウセイ。
幕舎の中に入ると、ソウソウ一行とユウ州軍の者達がそれぞれ紹介される。
その中で1人の子供が仙人の弟子の義勇兵だと紹介されると
『仙人の弟子だと?』
いかにも胡散臭げにソウジンが睨むが
『如何にも。この者は仙人様の弟子でショカツリョウと申す。まだ幼い子供ではあるが、仙人の弟子であることは伯父である私が保証しよう』
そう言ってユウ州軍の指揮官であるスウセイ将軍が応え
『ソウソウ殿が仰っていたセイシュウ城解放にはこの者の兄弟子、姉弟子である仙人様の弟子の方々によるものであると付け加えたい』
スウセイ将軍とショカツリョウの顔を視ながらソウソウが
『では、その兄弟子、姉弟子をここに呼んではくれまいか?』
半信半疑の様子で問うと
『カンウ殿もチョウ妃殿もリュウビ殿もここにはおりません』
ハキハキとした口調でショカツリョウが応える。
『では、何処に?』
再びソウソウの問いに
『家で休んでおりますね』
再びハキハキと応えるショカツリョウ。
『はぁ~?家で休んでいるだと!?』
語気を荒げるソウジン。
『ソウジン!』
すぐにソウソウが窘めるが
『だってそうだろ!セイシュウ城を解放したという仙人の弟子とやらが、今は家で休んでいると言うのだぞ!そんなご近所に仙人の弟子は住んでいるのかってもんだろ!』
再び語気を荒げるソウジンに
『皆さんは仙人様の家で休んでいます。場所はこの近所ではなく、北魔の森ですね』
またもやハキハキとショカツリョウが応えると
『『『北魔の森!?』』』
ソウソウ一行が見事にハモった。
『冗談も大概にしろ!昨夜セイシュウ城で戦をして、今は北魔の森で休んでいる訳がなかろう!ここからどれだけ離れていると思っている!ソウソウこいつらはダメだ。ワシ等を馬鹿にしていやがる』
そう言ってソウジンが喚き散らすが
『ソウジン!そのように喚くな。確かに北魔の森はここより遥か北。にわかに信じられぬのが道理だ。しかし、我等も陛下への報告もある。さすがにセイシュウ城を解放したのが仙人の弟子で今は北魔の森で休んでいると報告すれば、私の頭がどうかしたかと疑われる。どうかその仙人の弟子とやらに会って話しをさせては貰えぬか?』
そのように頼むソウソウに苦渋の表情のスウセイ。
そして、あからさまに怒りの表情のソウジン。
『では…一応聞いてみます…』
それまでのハキハキした受け答えとは明らかに違うショカツリョウだったが
『あまりオススメはしませんよ』
そう言ってスッと目を閉じた。
次回投稿予定【6月13日】




