平凡にエンジン
其の70
逃げ惑う赤頭巾兵を馬上からひたすら凪払う。
それは戦いではなく、最早作業だ。
セイシュウ城を取り囲み、優勢に城攻めをしていた赤頭巾にしたら、突然現れて強力な炎の魔法を放ち、馬上から延びる刃で凪払う俺と婆ちゃんに冷静に対応する方が無理だった。
俺は逃げ惑う赤頭巾を視界に捉えると一気に気の刃で凪払う。
そこには、胴体を真っ二つに斬られた死体が量産されるが、稀に足だけを失って断末魔の叫びをあげる赤頭巾兵がいたりもする。
混乱の最中、味方から発せられる叫び声に、我先にとバラバラに逃げようとし、味方同士がぶつかって将棋倒しになり赤頭巾の混乱は加速度的に東門の方に拡がっていった。
南門前にはまともに戦える赤頭巾兵の姿は皆無で、そこには負傷して動けなくなった少数以外は既に息絶えてた元赤頭巾兵達だけだ。
リュウビの呼び掛けに反応してセイシュウ城から出撃したセイ州兵は、婆ちゃんが放った炎で明るくなった城外で、戦うこと無くその惨状を見て、立ち尽くしてる。
『これは神の力か?悪魔の所業か?』
セイ州兵の1人が呟いた。
また近くの兵は
『炎の神様が我々に味方してくれたのでは?』
炎の神様…
セイ州兵の中から炎の神様つまり【炎神】と叫ぶ者が出ると
『【炎神】が味方してくれたー』
『【炎神】万歳!』
『『『【炎神】万歳!』』』
皆が口々に【炎神】と叫び、炎によって照された周囲は異様な雰囲気となった。
最早、戦う敵が居なくなったセイ州兵は、新たに立ち上がる炎の柱を目指して進み始める。
そして、遂に炎の魔法で赤頭巾を駆逐する1人の人物を見付けるのであった。
炎のような兜が特徴的ではあったが、誰もが想像していないその容姿にセイ州兵は唖然とする。
馬上から強力な魔法を放つ人物が小柄な女性。
導士が確かに貴重な存在ではあったが、敵を焼き尽くすような強力な魔法を小柄な女性が放っていたとは夢にも思っていなかったのであろう。
『あの方が【炎神】…』
兵士の1人が呟く。
その時
『チョウ妃様!』
兵達を追ってきたリュウビが呼ぶと
『そっちは片付いたか?』
普段通りのチョウ妃。
『片付くも何も、全て焼いてしまったではないですか』
少し呆れ気味のリュウビだが、そのやり取りを見ていたセイ州兵が
『【炎神チョウ妃様】!』
『『『【炎神チョウ妃様】』』』
大声で皆が叫ぶ。
チョウ妃がギョッとした表情で辺りを見回すと、兵達は熱い眼差しでチョウ妃を見つめている。
『こいつらはどうした?』
リュウビに問うが
『さぁ?』
そうとしか答えが無いリュウビだった。
次回投稿予定【2月1日】




