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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第五章
66/84

平凡に舌打ちと暴言とタメ息と

其の65






1人馬上のコウソンタン将軍が見つめるのは、後方に展開された赤頭巾の陣形だった。

〈少数の我々がここで陣立てされた敵を迎え撃っても勝機は少ない。元々錯乱目的の陽動ならば、後方の敵は捨て置き、このままセイシュウ城方面への錯乱を続行すべきか…〉


『チッ』


舌打ち一つで、今は考えるより行動あるべきと気持ちを切り替え、コウソンタン将軍はセイシュウ城方面に馬を走らせた。

それにより、後方の騎馬隊も土煙を上げながら付き従う。


これにより、前方を進む赤頭巾の軍勢は後方より追い立てられる形となり、歩兵が中心の軍は我先にと散り散りに逃げ惑う烏合の衆と化したのだが…

本来であれば、進軍する赤頭巾の軍勢の側面に攻撃を仕掛け、分断された軍勢をセイシュウ城方面から遠ざけながら足止めをする作戦だが、このままではセイシュウ城方面に赤頭巾が向かってしまう。

そこで、一度大きく迂回し再度側面からの攻撃をしながら本来の作戦に戻そうとしたいのだが、既に後方で陣形を整えた赤頭巾に逃げ出した兵が吸収されれば、足止めの効果は極めて限定的となるだろう。

そこでコウソンタン将軍は側面攻撃を諦め、赤頭巾の軍勢に平行しながら進軍先を少しでもセイシュウ城方面から反らす作戦に切り替えたのであった。


『無理に攻撃を加える必要はない。今は敵の側面に圧力を掛けながら、敵の先頭を追うぞ!』


『『『『『ハッ』』』』』


手短に部下への指示を出すコウソンタン将軍だったが、既に作戦の失敗を痛感していた。




一方、即席ながら横陣の陣立てをしたカンゲンは、前方を走り去るユウ州軍を観察していた。

〈やはり、敵は少数での錯乱が目的か…そうなると、既にセイシュウ城へはユウ州軍が援軍に向かっているはず〉

冷静に状況を分析しつつ、次の行動をどうするべきか考えていた。


『カンゲン様。敵はやはり少数でしたな。このまま追撃するのですか?』


近くの兵士が訪ねるが


『我々は歩兵が中心だ。騎馬隊に追撃しても無駄であろう。このまま進軍し、散り散りになった味方を吸収しつつ、前進するぞ』


陣形を保ったまま当初の作戦通りセイシュウ城へ進軍を命令はしたが、未だその先の作戦は決めかねている。

〈果たして、セイシュウ城攻めの本軍がユウ州軍に対して持ち堪えられるであろうか…あのチョウ妃に〉


これまでの赤頭巾の敗因は、チョウ妃1人と言っても過言では無い。

この場にチョウ妃が居たなら本軍がセイシュウ城を(おと)している可能性も十分にあるが、恐らくチョウ妃はセイシュウ城に向かったであろう公算が極めて高い状況がカンゲンの思考を鈍らせ


『くそッ!』


次の一手が決められない苛立ちからの暴言だった。




そんな2人の指揮官とは全く違った思考で苦悩する者が、この戦場にもう1人居た。

錯乱戦の主力を任されながらも、その実力の半分も力を発揮できない女性。

ドアーフのホートだ。

〈何故、私は他国の戦場に居るの?私は、仙人に弟子入りをしたい筈なのに…仙人の弟子に良いように使われている?〉


そんな気持ちを抱きながら火属性の魔法を人に向かって放つ。

ドアーフの女王候補でもあったホートは、元来好戦的な性格では無かった。

好戦的では無い故に、彼女が放つ火属性の魔法の威力は、チョウ妃が放つそれとは明らかに劣っている。

〈そもそも、人間を消し炭にするような強力な火属性の魔法をポンポンと放つチョウ妃って異常よ。あんな歩く身勝手のような者と同じに視られたくは無いけど…多分私のせいで、この錯乱戦って効果があまり期待出来ないわよね〉


『ハァァァ~』


馬上で盛大なタメ息を漏らすホートであった。

次回投稿予定【11月16日】


11月6日加筆訂正しました。

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