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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第五章
60/84

平凡に妙案

其の59






正に圧勝だった。


いや、圧勝の定義があるならこれは違うのだろう。


蹂躙(じゅうりん)


虐殺(ぎゃくさつ)


どちらにしても常人が考える戦とは全くことなる戦なのは確かだ。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




チョウ妃のド派手な魔法を皮切りに戦の火蓋は切られた。

しかし、チョウ妃が放った魔法は俺達の想像を遥かに超えた威力と範囲であった。


『我が名はチョウ妃!』


戦場を縦横無尽に馬で駆けながら大声で叫ぶ小柄な女性の姿から想像出来ない強力な魔法が放たれ赤頭巾は戦どころではない。


それは味方も同様で、敵との間を単騎で駆け抜け事前の作戦などではあろうはずも無いその行動は、臨機応変と言うには余りにも身勝手とも思える独壇場に、誰もがただ黙って見守るしか出来なかった。

魔法に巻き込まれたら敵味方の区別無く消し炭になるのは誰の目にも明らかだからだ。

その魔法で焼かれる赤頭巾を見たユウ州軍の兵士達は、今程赤頭巾に同情した瞬間は無いだろう。

それほどにチョウ妃の魔法は圧倒的だった。



1万人弱はいたであろう赤頭巾の姿はそこには無い。

つい半刻前まで敵だった者の無惨に焼け焦げた死体だけが残された戦場。

誰もが声を失っていた。


そこに満足そうにチョウ妃が俺達の元に戻って来たのだが、単騎で敵を蹴散らした英雄の凱旋とは程遠い味方の雰囲気を察したチョウ妃は


『ふんっ』


そう鼻を鳴らすと今度は不満そうな表情で


『さっさと先に進むぞ』


と言い放ち馬を進めようとした時、前方から近寄る2頭の馬に行く手を遮られるかたちとなった。

スウセイ将軍とコウソンタン将軍だ。


『チョウ妃殿。見事な魔法でしたな』


スウセイ将軍がそう言って近付いて来たが、その表情からは笑顔が全く無い。

先の戦で共に戦いチョウ妃の魔法を見たであろうコウソンタン将軍も同じだ。

しかし、2人の表情からは同様の思考が伺える。


「やり過ぎ」


これは俺も全く同意見なのだが、それを面と向かって言って良いのか苦慮している指揮官の苦悩が表情に出ていた。


仕方ない


『チョウ妃さん!あれ程の魔法を使うなら前以て言って下さいよ』


とりあえずチョウ妃なりの考えなんて微塵も無いのであろうが、俺が将軍達の代わりに口火を切った。


『そっ、そうであるな。出来れば事前に作戦を言ってくれたら我々もそれに即した行動も出来たであろうな』

『チョウ妃殿ばかりに目立たれて、我等の戦功も残しておいてくれねばな』


ひきつった笑顔のコウソンタン将軍が俺に続く。


『とは言えチョウ妃殿のお蔭で初戦は大勝利だ。この先も頼りにしてますが、次からは是非事前の打ち合わせもお願いしますぞ』


スウセイ将軍の言葉に


『では、ここで次からの作戦を言ってやろう』


まるで悪人のような表情で口元がニヤついたチョウ妃が答えた。


あれ?

さっきのは作戦か?

闇雲に魔法をブッ放って悦んでいたのでは?


『これから先、小競り合いでこちらの兵が消耗したらキョロクに着く前に2万程度のユウ州軍は崩壊するかもしれん。そうなっては例え赤頭巾を倒したとしても、ユウ州軍の評価に関わる』

『だからキョロクに向けて集結する他州に劣らない軍勢は温存せねばならん。赤頭巾の勢力圏に無い州の軍はユウ州軍より兵士の数に余裕がある筈だ』

『そしてキョロクでの戦では、万全の状態でいくらでも戦功を立てれば良い。そうすれば、その方等の主も都合が良かろう』


精鋭とは言え、2万程度のユウ州軍が小競り合いで兵の消耗を繰り返したら、確かにキョロクに着く頃にはどの程度の兵が残るか疑問だ。

それを未然に防ぐ為の単騎駆けだったのか…

さらにキョロクでの戦功次第で主であるユウ州候エンリュウさんの地位の向上まで狙っていたとは…

やっぱり仙人は伊達じゃないのか?


少し俺が婆ちゃんの評価を上方修正していると


『それで、次から赤頭巾と出会ったら今回と同じように陣だけ立てれば良い。あとは適当に私が間引けば敵は自ずとユウ州軍を見るだけで逃げ出すようになる筈だ』

『その為に先ほども指揮官らしき者以外で逃げる奴は見逃したからな。逃げた奴から今回の恐怖が伝われば、キョロクまでの行軍も後々楽になってくる筈だ』


ちょっとドヤ顔のチョウ妃が気に入らない。

しかし、作戦としては長期の行軍も見据えた素晴らしい作戦ではないだろか。


チョウ妃の話しを黙って聞いてたスウセイ将軍とコウソンタン将軍だったが、今は作戦の全貌に言葉を失ったと言うのが正しそうだ。


その時、スウセイ将軍が急に片膝立ちで膝間付き


『チョウ妃殿の策は正に神算鬼謀の妙案。これより先は何なりとご命じ下さい』


ユウ州軍の総大将自ら頭を下げチョウ妃を軍師として認めた瞬間だった。


次回投稿予定【8月18日】

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