平凡に臨機応変
其の58
前方の小高い丘に赤頭巾の標しである赤い軍旗が見えてきた。
後方の俺達が確認出来ると言うことは、当然ユウ州軍はそれより前に確認している訳で既に臨戦態勢へと陣立てをしている。
俺達義勇兵は予備兵扱いとなり陣の後方に集められる。
義勇兵は陣立ての訓練などされて無い為、遊軍としての扱いだ。
一応俺達も遊軍の一部なのだが、なんちゃって将軍な俺達は臨機応変な行動が許されていた。
臨機応変・・・
なんと都合の良い言葉であろう。
自分の判断で行動出来る訳だが、実際にはその時の陣立てに即した行動が求められる。
すなわち、高度な戦術眼も同時に求められる訳でもあるのだが、残念ながらそんな高度な戦術眼等というものは持ち合わせていない。
かろうじて、リョウ君がお勉強途中な程度だ。
俺、リュウビ、シュウソウは論外として、婆ちゃんは戦術無視で魔法をブッ放しそうだし、ホートさんも似たような感じだろう。
クウネルは一応戦士だが、戦闘よりその後の酒がメインなので、戦術等と言ったら新しい酒の肴か何かと勘違いしそうだった。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
ユウ州軍は鶴翼の陣で臨むようだ。
とは言ってもリョウ君がそう言うので鶴翼の陣形なのだろうが、実際に鶴翼の陣が何たるかなどは知らないので俺達はシュウソウからの情報頼りなのだ。
しかしながら、このシュウソウ頼りの戦術は戦場全体を俯瞰して分析出来る点だけでこの時代の戦術を凌駕しているのも確かだ。
いよいよ戦端が切られる間近、シュウソウからの「念話」で赤頭巾は丘の中腹に横一列で先頭の騎馬隊が今にもこちらに向かって突進しそうな感じが伝えられた。
リョウ君曰く、横陣と言うオーソドックスな陣形らしい。
先の戦では砦や城の攻略と俺達オリジナルの戦略だった為、この時代における一般的な戦いを見るのは今回が初めてだ。
なんとも言えない緊張感がその場を支配してあるが、事前のシュウソウからの情報だと人数的にはこちらが有利らしいし、今回のユウ州軍は精鋭なので俺が「カンウ」として戦うまでにはならないだろう。
多少気楽に俺が考えていると
『あっ!』
シュウソウからの少し間の抜けた「念話」が伝わるのと同時に赤頭巾の陣地に巨大な火柱が上がった。
そしてユウ州軍と赤頭巾との間に単騎で魔法をブッ放しているチョウ妃の姿が。
さっきまで俺達の隣にいた筈だが、どうやら転移魔法でも使って移動しド派手な魔法を使ったのだろう。
ん~
目立ちたく無いと言っている婆ちゃんと、実際にド派手に魔法をブッ放しているチョウ妃が同一人物なんて誰も想像出来ないだろうな。
しかし、これが臨機応変と言えるのだろうか?
なんか悩んだら負けのような気がしてきた。
次回投稿予定【8月5日】




