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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第五章
57/84

平凡な家族

其の56






『旦那さま。おはようございます』


『おはよう。シュウソウ』


雀の姿をした悪魔との朝の挨拶を済ませ日課の水汲みに向かうと


『カンちゃん。待って』


後ろから俺を呼ぶのは婚約者のリュウビだ。


『リュウちゃん。おはよう』


朝から破壊力抜群の笑顔のリュウビに俺も自然と笑顔になる。



ダイキンでの論功行賞から約1ヶ月が経っていたが、まだ赤頭巾討伐軍の出陣とはなっていなかった。

俺達は論功行賞の翌日には森の婆ちゃんの家に帰ってきている。

ちなみに俺の奴隷となったクーネルだが、ダイキンにホートさんの護衛として残っている。

婆ちゃんに弟子入りを願い出たホートさんだが、事ある度に気絶やら絶叫する姿を嫌った婆ちゃんが俺達とユウ州軍との連絡役としてダイキンに残したからだ。

その連絡役のホートさんから連絡を受けるのは距離の制約無しに「念話」が使えるシュウソウの役目なのだが、最初こそ悪魔との「念話」に戸惑い気味だったホートさんが今では悪魔の知識を知ろうと暇さえあればシュウソウに「念話」で話し掛けて来るらしい。

シュウソウ曰く、あの小娘の話しは余りにもくだらない内容が多いのでたまに無視しているそうだ。

悪魔に小娘呼ばわりされ「念話」の居留守を使われる元女王候補のドアーフ。

なかなか世知辛い世の中である。



少し冷たい川の水で俺が行水を終えると顔を洗い終えたリュウビが布を渡してくれた。


『リュウちゃん。ありがとう』


そう言って体を拭き始めた俺を笑顔で眺めるリュウビに少し恥ずかしさを感じるのだが、どうも元鯉のリュウビにはその辺の羞恥心が少しズレているようだ。

自分の裸はさすがに恥ずかしいようだからとりあえず大きな問題にはなってはいないのだが、事ある毎に俺と一緒に寝たがる辺りはどうなんだろうか?

それとも一応婚約しているのだから俺が気にしすぎなのか?

などと考えてはみても、元々女性の扱いとかはお子ちゃまレベルの俺には答えなど出せる筈も無いのだが。


着物を着て水の入った桶を2つ天秤棒で吊って俺が担ぎ、小さな桶を1つリュウビが抱えて俺達は家へと戻った。

家の中ではリョウ君が朝食の準備を始めており


『リョウ君。おはよう』

『後は俺とリュウちゃんでやるからリョウ君も顔を洗っておいで』


そうリョウ君を促すと


『あっ。わかりました』

『シュウソウ行こう』


シュウソウを伴って川に走って行くリョウ君。

見た目の年齢的には俺の方がリョウ君より少し上だが、中身がおっさん化している俺は走って川に行ったりはしない。

なのでそんなリョウ君の姿はなんとなく息子を見送るような感覚にもなる。

実際の年齢だとリョウ君ぐらいの子供が居ても不思議ではない訳だし。

そして隣には見た目的にはちょっと若い母親にも見えなくもないリュウビが居るが、実際にはリョウ君より幼いのだから全くこの家の住人は変な奴ばかりだ。


『朝飯はまだかの』


少し眠そうな顔でこの家の主が起きてきたが、婆ちゃんこそ実年齢千歳オーバーの不思議の塊だ。


『もう少し待ってよ』


俺がそう言うと婆ちゃんはフラフラと庭の方に歩いて行き、ゆっくりとした動きで体を動かし始める。

太極拳?

俺の知識では映画とかで見たことしかないが、確かこんな感じでゆっくりと体を動かしていたような筈だ。


しばらくゆっくりと動いていた婆ちゃんが大きく息を吐いて太極拳もどきを終わらせると、リョウ君も川から小さな桶を1つ抱えてシュウソウと帰って来る。


『朝食が出来ましたよ』


リュウビが婆ちゃんとリョウ君、シュウソウに声を掛け、皆で揃って朝食を食べる。

妙な繋がりでこうして一緒に暮らしているが、俺にとっては大切な家族との至って日常的な朝の光景だ。


『おっ。儂の分はあるじゃろうな』


そんな平穏な日常の朝にたまにやって来る隣人の声に


『師匠の分もありますよ』


俺がそう言うよりも早くリュウビの隣にドッカリと座り笑顔のタイシジ師匠。

何気にタイシジ師匠はリュウビを気に入っている。

弟子の婚約者を気に入る師匠ってどうよ?

次に師匠の家に行った時は奥さんに告げ口しておく事を心に深く刻んでおこう。

最近、タイシキョウちゃんを連れて来ないのも多分その辺が理由だろう。

師匠の家族カーストからしたらその後の師匠がどうなるのか今から楽しみだ。


朝食を終え、俺とリュウビはタイシジ師匠と一緒に修行し、婆ちゃんとリョウ君はシュウソウも交えて魔法の修行となるのだが


『仙人様。ダイキンのホートさんより「念話」です』


普段と違うシュウソウの口調から恐らく出陣の件なのだろう。


次回投稿予定【7月7日】

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