平凡に将軍
其の55
用事を終えたコウソンタン将軍が帰ると俺達は身支度を整える。
ホートさんはまだ目覚めてないが、このまま留守番の方が何かと都合が良さそうなのでクーネルを一応の護衛に残すことにした。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
『北魔の森の仙人様御一行のご到着です』
俺達の到着を文官が告げると、観音開きの大きな扉がゆっくりと開く。
ダイキン謁見の間。
以前に訪れたタクケンの謁見の間とは比べ物にならない広さの部屋にはユウ州の文官、武官が一堂に会したかと思える人数が既に揃っていた。
一段高い場所に据えられた椅子から降りて俺達の前迄歩み寄ると
『仙人様御一行の到着を心より歓迎致します』
エンリュウさんが両手を正面で組、深々とお辞儀をしながら発すると、居並ぶ人々が跪いて唱和する。
以前のタクケンとは違ってなんと凄まじいVIP待遇だろうか。
俺は慣れない扱いに恐縮するしかなかったが、婆ちゃんは堂々したものだ。
『さっ、仙人様。こちらへ』
エンリュウさんに導かれるまま婆ちゃんは一段高い場所に据えられた椅子に腰掛けると、エンリュウさんも並んで座った。
『この度の赤頭巾の討伐及びこのダイキンの解放。このエンリュウ心より感謝申し上げます』
跪きはしないまでも座ったまま再び深々と頭を下げるエンリュウさんに続き居並ぶ人々は跪いて婆ちゃんに頭を下げた。
『まぁまぁ。そう頭を下げらるような事はしたつもりは無いでの』
婆ちゃんはそう言っていつも通りだ。
『それで?赤頭巾の奴等はどうなったかの?』
婆ちゃんの問いに
『捕虜の扱いに関してはまだ暫く時間が掛かるかと思います』
エンリュウさんが答える。
『まぁ、あの人数じゃから仕方ないの。それで、敵将のカンゲンとやらと逃げ出したシバはどうなったのじゃな?』
表情こそいつも通りだが、少し語尾を強めた言葉から婆ちゃんも思うところがあるようだ。
『敵将カンゲンの死体を発見するには至っておりません。また敵前逃亡の大罪人シバ及び捕虜の猿人も同じく死体は見付かっておりませぬ故、恐らくは逃げおおせたのかと』
エンリュウさんの説明に俺はその場に控えているコウソンタン将軍の方を見ると、口を真一文字に閉じたままのコウソンタン将軍と目が合った。
自分の一番の部下を戦場とは言え味方の暴発によって失った悔しさは察して余りある。
『ほぉか…』
『それで?他の地方の赤頭巾の動きはどうなっちょるんじゃ?』
このユウ州から一応赤頭巾は追い出したが、まだ他の地方の赤頭巾は健在だ。
『他の地方の赤頭巾もこのユウ州での敗戦には少なからず動揺している様子です。そこでこの期に大規模な赤頭巾討伐軍をかねてよりの予定を繰り上げて繰り出すとの勅命が帝より発せられました』
『つきましては仙人様には是非とも我々と共にこの戦へのご助力をお願い出来ませんでしょうか?』
エンリュウさんから再びの参陣要請に婆ちゃんは黙ったまま少し考えているように見える。
『そうじゃのぉ』
『前にも話した通りわしが直接関わるのは無理じゃが、もう少し世の中が住み易くなるまでは弟子に手伝わせるのも修行かもしれんの』
そう言って俺とリュウビを見る婆ちゃんは少し笑っているようだ。
「クソッ。またかよ」俺は
心の中でそう叫びたくなる衝動を抑える。
『じゃが、今回は他州の軍も加わる戦になるじゃろうからお主らと共にとはちと難しいじゃろうの』
『そこでじゃ、弟子達は義勇軍として戦うのでどうじゃ?』
婆ちゃんの提案にエンリュウさんは
『それは参陣頂けるのであれば私共は何も申しませぬ』
『しかし、お弟子の方々とは言えこのユウ州をお救いくださった英雄です。無位無冠のままではこのエンリュウ申し訳がございませぬ』
『つきましてはお弟子の方々に此度の論功行賞も兼ねまして「将軍位」に奉じることをお許しください。然すれば、英雄と共にくつわを並べる我が軍の士気も上がり皆様の御世話も我が方で行えると言うものです』
『もちろん指揮権等を言うつもりは毛頭ございませぬ』
ん~
将軍・・・
それに英雄!?
あぁ~これって間違いなくダメな流れだよなぁ。
ここで婆ちゃんが了承なんかしたら三國志街道まっしぐらになるような・・・
だが悪い予想は得てして当たるもので
『お前さんが良いならそうするかの』
こうして若干13歳の見た目の将軍と筋骨隆々とした大人の将軍の2役を中身が34歳の俺が演じることになったのであった。
次回投稿予定【6月22日】




