平凡にカオス
其の50
俺達はホートさんとクーネルと供に宿泊先に帰ってきた。
もちろん道すがら屋台で腹ごなしは済ませたのだが、腹ペコのクーネルと人間の屋台初体験のリュウちゃんがすざましい食いっぷりを披露していた。
大食いのドアーロと美女は妙な悪目立ちをしたのは言うまでもない。
皆が食堂の椅子に座るや否やホートさんが
『師ッ、仙人様。先ほどの話の続きをお聞かせください』
そう切り出したのだが、師匠と呼びそうになりながらも仙人と言い直すあたりはドアーフの女王候補だっただけあって常識人ならぬ常識ドアーフのようだ。
しかし、婆ちゃんはそんなホートさんの質問を知らんぷりで
『そっちの若い将軍さん。ここに酒は無いのかの?』
コウソンタン将軍を若い将軍呼ばわりして酒の催促をしていたのだが、婆ちゃんの「酒」に即座に反応したクーネルが
『おぉ~。そいつあ良いや』
と奴隷の筈の奴が客人にでもなったかのように満面の笑顔になっている。
『おい。酒を持ってきてくれぬか』
コウソンタン将軍の声に宿泊先の仲居さんが酒の用意をしてくれると
『どれ』
そう言って婆ちゃん盃をグッと空にし
『なかなか美味いの』
そう言って手酌で酒を注ぎながら何やら魔法を唱えるような怪しい動きをし
『なんじゃ。ドアーフのくせに目の前の酒を飲まぬのか?』
とホートさんに言いながら二杯目の盃を飲み干していった。
ホートさんは婆ちゃんをチラ見し、少し困った表情をしながらも盃に手を伸ばして
『では』
と言って盃を飲み干しす。
婆ちゃんとホートさんが盃を飲み干したのを見て
『それがしも』
今度はコウソンタン将軍が盃を空に。
『ほれ。もう一杯』
ホートさんに二杯目の酒を注ぐ婆ちゃんを見ていたクーネルは
『坊っちゃん!坊っちゃん!坊っちゃん!』
と俺に向かって俺にも飲ませろと云わんばかりの催促をするので
『飲み過ぎるなよ』
一応釘をさしたのだが
『ありがたやぁ~ありがたやぁ~』
とおどけるように手酌で盃に酒を注ぎ
『ひゃぁ~』
と言って空になった盃に酒を注ぎ足していた。
皆の様子を伺っていたリュウちゃんは、恐る恐る盃を手に取りグッと酒を飲むと
『あら。美味しい』
『カンちゃんも飲んだら?』
などと俺にまで酒を勧めてきたが、この姿になってから酒を飲んでないし、元々そんなに酒が強く無かったら記憶から
『俺は大丈夫だから』
と笑顔で断りリュウちゃんの盃に酒を注いであげると
『ありがとう』
と破壊力抜群の笑顔で二杯目の盃を飲み干し、ほんのり桜色に頬を染めながら
『お酒って美味しいわね』
なんて言ったものなら
『おぉ。リュウビ殿は行けるくちですな』
コウソンタン将軍が既に赤くなった顔で話し掛けてきた。
その辺りから、皆が壊れたからくり人形のように手にした盃をテーブルに置くこともなく酒を飲んだのだからあっという間にその場はカオスな光景となっていったのであった。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
妙に柔らかい感触が頬と足にあることに気付き俺は目を覚ました。
外は既に明るくカオスな酒盛りの光景ではなく静かな朝だ。
昨夜は結局酒を気に入ったリュウちゃんに強引に飲まされてあっという間に酔い潰れた記憶が微かに。
二日酔いとまではいかなかいが、久しぶりの酒に少し体のダルさを感じながら上半身を起こすと、顔の柔らかい感触は俺のとなりで幸せそうに眠るリュウちゃんの双丘だった。
普段の寝間着ではなく、酔った勢いで寝てしまったらしく着物がはだけて朝から眼福である。
その時足にあるもう一つの感触に目をやると、赤み掛かった長い髪の女性が俺の足を抱き枕代わりにしている。
ホートさん!?
小柄ながらリュウちゃん同様の感触はDか?
着痩せするタイプかな?
そんな感想を抱きながら何故俺のベッドで3人で寝ているのか全く思い出せない。
ある意味カオスな状況だが、俺はそっとホートさんを叩いて起こすが、俺の足をぎゅッと抱いてまだ起きたくない様子に
『朝ですよ。起きてください』
そう耳元で囁いでみると、やっと重い瞼を開けて俺の方を見る。
『おはようございます』
そう呟き俺と目が合うと、自分が俺の足を抱き締めていることに気付いたのか
『キャャャャャーーー!』
昨日の酒も吹き飛ぶような悲鳴が部屋の中に響いたのだった。
次回投稿予定【4月21日】




