平凡にお腹が減りました
其の5
『脱皮か?』
俺は火傷からの一連の出来事からそんな想像を巡らせる。
見た目は大人(筋骨隆々)になった訳だが、中身は元々34歳の中年だし別に良いか。
でも、中学1年(160cm)から大人(2m弱)に成長って…
ん~異世界だな!
それに婆ちゃんのお墨付き?な程に「立派」になったモノ…
いわゆる「イチモツ」がかなりの自己主張をする肉体って…
前の世界で、お笑い芸人のネタにあった「大きなイチモツ」を俺は手に入れた訳だが…
そんなどうでも良いようなことを考えながら、いつの間にか俺は寝てしまっていた。
次の日の朝、耳元でうるさい声で目が覚める。
『旦那さま。おはようございます』
何で雀が喋っている?
朝から軽く夢と現実との区別に困惑したが、すぐにその状態が現実だと気付いた。
『シュウソウおはよう。お前悪魔のくせに早起きだな』
そんな俺にシュウソウは
『雀が早起きなのは世間の常識』
と鳩胸ならぬ雀胸を張って威張ってみせる。
『イヤイヤ、君は悪魔でしょ』
何やら朝から面倒臭い。
『私は悪魔ですが、身体は雀。ならば雀の如く生きるのが道理』
ん~
どうやら、寄り代の習性等はそのままに意識だけが悪魔ってことになるのか?
『わかった。わかった。それでシュウソウ朝からどうした?』
『お腹が減りました』
『はい?』
雀が朝から腹が減ったって、虫でもなんでも食べたら良いだろうに。
『腹が減ったら虫とか食べて良いぞ』
俺が眠そうにそう言うと
『私は悪魔ですから虫など食べません』
『はい?』
お前さっき雀の習性がどうやらこうやら、ほざいていたろうに…
『ん~』
正直面倒…
『で?シュウソウ。何なら食べるのかな?』
『はい。旦那さまと同じモノなら喜んでいただきます』
『ん~』
要は俺に朝飯を作れと催促している?
熱々のスープとか雀に食べられるのか?
『ハイハイ。わかったよ』
俺は半分諦めと、半分イタズラ気分で部屋を出た。
とりあえず水を汲みに川に向かおうと、いつものように桶を片手に外に出る。
川に向かう道中も
『良い天気ですね』
やら
『清々しい朝ですね』
などと喋りながら頭の上を飛び回る雀(悪魔)がちょっとウザい。
しばらく歩くき小川に到着した。
桶いっぱいに水を汲んで、川の水で顔を洗った時に俺は異変に気が付いた。
『アレッ?』
昨日あった髭が無い。
よく見ると筋骨隆々の大人だった身体が、元の中学1年の身体に戻ってる。
『ん~?』
昨日のアレは夢?
でも、頭の上には雀…
『ん~?』
またまた起きた身体の異変にとりあえず婆ちゃんに聞けば何かわかるかと、水の入った桶を抱えて家に戻った。
家に帰るとまだ婆ちゃんは寝ているらしく姿が無い。
婆ちゃんの部屋に行って寝ている婆ちゃんを起こし、元に戻った姿を見せると
『カン。おはよう。今朝は早いな』
至って普通の感じ。
『婆ちゃん!俺の身体!元に戻ってる!』
俺が必死に状況を説明すると
『ああ~』
とまた至って普通。
『そういう風になったかい』
何か想定内といった余裕の雰囲気で婆ちゃんは俺を見た。
『カンや。それがお前に与えられた【転生者固有技能】じゃな』
【転生者固有技能】?
またもや不思議ワード。
不思議満載の異世界現在進行中!
次回掲載予定 【7月16日】