平凡に食う。寝る。
其の47
『奴隷が働きもせぬうちから飯の催促かぁ?』
ヤ○ザバージョンの婆ちゃんがドスの効いた声でドアーロを睨んでる。
本当に仙人なのか怪しい限りだが、確かにいきなり飯の催促はどうしたものか…
『お腹が減っているならさっさと自分がやるべき事をするのが先だな』
『先ずは、あなたの名前は?それとさっき言ってたとっておきの方って誰のこと?』
俺の問いに
『おっと。これは失礼しやした』
『オレの名前はクーネルっていいまさ。とっておきの方とはドアーフ様でさ』
クーネルと名乗るドアーロが飄々と答えるが、クーネル?
「食う寝る」の間違いじゃないのか?
名は体を表すとはよく言ったものだ。
それにドアーフ?
俺からしたらドアーフそのものの姿をしたオッサンがドアーフを紹介するってことか?
ドアーフってそんなとっておきの存在?
そんな俺の思考を無視して
『なっなに!?ドアーフだと!?』
コウソンタン将軍が食い気味に反応している。
『ほぉ~ドアーフか』
と婆ちゃんも興味がある様子。
『あら。素敵ね』
リュウビまでも興味がある様子。
ん~。
俺だけ目の前にドアーフそのものの姿が既にあると思える状況では話しに付いていけてない。
それにリュウビの言う「素敵」ってどういう意味?
久々に混乱状態に陥ってしまった。
『おい。まさかドアーフがこのダイキンに居ると言うのか?』
興奮したコウソンタン将軍がクーネルに問いかけると
『そうでさ。オレはドアーフ様の護衛としてここまで来たでさ』
護衛ね。
クーネルの「護衛」という言葉にその場にいた全員から寝ていて奴隷にされた奴に護衛とか言われても…とでも言いたい雰囲気が流れる。
『どうも信用されてねえ感じですかいね』
『わかりやした。早速ドアーフ様の元に案内しまさ』
そう言ってクーネルはさっさと奴隷商の店から出て行ってしまった。
俺達もクーネルの後を追うように店から出ると
『坊っちゃん。ドアーフ様の元に案内したら飯を忘れないでくださいな』
クーネルは本当に腹が減っているらしく念を押してきたが
『わかったからちゃんと案内してくれよ』
俺の答えに満足したのか、ニカッと髭むくの顔を笑顔して歩き出した。
しばらく通りを進み、途中の屋台の匂いにうしろ髪を引かれるようなクーネルだったが、一本の通路の入口で立ち止まり
『この先でさ』
と俺達を路地裏へ続く通路の奥へと案内する。
狭く暗い通路を進み何本か路地を過ぎた所にその場所はあった。
狭い間口の道具屋のような店構えをしており、クーネルは馴れた様子でその店の中に入って行く。
俺達も続いて入ってみると、そこは何本か出来の悪そうな剣や斧が列べられた道具屋だった。
『ただいま戻りやした』
クーネルの声に店の奥から姿を現したのは、どうみても小柄な初老の男だ。
ドアーフは小柄な女性と言ってなかったか?
この男は店番をしているだけで、ドアーフは別に居るのか?
そこに居た俺達は同じ感想を持ったに違いない。
しかし、クーネルの次の行動が俺達の度肝を抜いた。
クーネルが小柄な男の前に進むと男を無視するかのように店の奥へと歩き出したのだが、目の前の男を避けるでもなく身体をすり抜けたのだった。
『幻影か?』
婆ちゃんの呟きと同時にクーネルが
『こっちでさ』
奥から俺達を呼ぶ声がし、俺達も恐る恐る小柄な男の前に進み、先ほどのクーネルのように男の身体をすり抜け、店の奥に居たのは小柄で赤み掛かった髪の長い女性。
こちらが正真正銘のドアーフのようだ。
次回投稿予定【3月19日】




