平凡な奴隷
其の45
『ドアーフ!?』
俺の呟きにコウソンタン将軍は
『あぁ~。あれはドアーロですよ』
『ミキオ殿はドアーロを見るのは初めてですかな?』
そう笑顔のコウソンタン将軍が教えてくれたが、ドアーロ?
俺の認識では完全にドアーフなのだが、どうやら違うらしい。
『ドアーロですか?ドアーロとドアーフは違うのでしょうか?』
俺は素直にコウソンタン将軍に問うと
『ドアーロはあのように髭面の者のことです』
と教えてくれたが、まだ納得していない様子の俺にコウソンタン将軍はドアーロのことを説明してくれた。
コウソンタン将軍の説明によると、体型が小さくゴツイ髭面の男性がドアーロ。
同じような体型で髭が無いのが女性でドアータだそうだ。
それでドアーフとは小柄でもっとスリムな女性のことで、小柄でスリムな男性をドアースと呼んで、ゴウキン帝国に隣接するドアーフ王国は代々王女が治めるのだと教えてくれた。
ドアーフは最上位種族で高度な魔法と錬金術に長けており、ドアースは魔法は使えないが、錬金術や算術に長けているらしい。
ドアーロとドアータはその下位種族でドアーロは肉体労働向きで、ドアータは肉体労働より家事仕事をすることが多いらしいが、どちらもドアーフ王国では一般兵士として成人すると登録され、一度戦争となれば国民総戦士となって戦うそうだ。
人口はゴウキン帝国よりずっと少ないが、ドアーフの高度な魔法と肉弾戦に特化した用兵で周辺国からは恐れられているらしい。
そんな説明をコウソンタン将軍から受けていると
『ようよう。そこの将軍さんよ』
『頼むからここから出してくれないか?』
と気安くドアーロが話し掛けてきた。
コウソンタン将軍は無視していたが、俺が興味有りそうに見ていたのに気づくと
『そっちの坊っちゃんにも頼むよ。ここから出してくれよ』
と俺にお願いしてきたが、奴隷の知識が皆無の俺が出してあげる方法を知るはずも無かった。
そもそも奴隷になってる時点でロクな奴では無いだろう。
そんな時に婆ちゃんが
『おい。ドアーロ』
『おぬし何が出来るのじゃ』
興味有り気な雰囲気で声を掛けると
『ワシは戦士だ。戦働きなら任せてくれ』
自信満々で答えたが、戦の後で奴隷になってる奴が言っても信憑性はゼロだろう。
『戦が終わってその有り様では嘘だと言ってるものじゃ』
婆ちゃんも同じ考えのようだが
『いやいや。婆様』
『ワシは戦でこうなった訳じゃないぞ。寝ている所を捕まっただけだ』
言い訳なのか?
だとしても戦が始まっても寝ていた時点でアウトだろう。
『ふん。つまらぬ言い訳じゃな』
婆ちゃんも興味が失せた様子だ。
『いやいや。本当に寝てたんだ』
それでも言い張るドアーロだったが、俺達が歩き出そうとすると
『わかった、わかった。ワシをここから出してくれたらとっておきの方に会わせてやろう』
そんなことを言い始めたが、俺は既に興味は 湧かなかった。
だが婆ちゃんは
『ほ~ぅ』
片方の眉を動かしてまんざらでも無い様子で
『で?とっておきの方とは誰じゃ?』
婆ちゃんが問うと
『それはここから出してから教える』
ニヤニヤしながら答えるドアーロだが、婆ちゃんは鋭くドアーロを睨んで少し考えてる様子になった。
『オヤジ。このドアーロは幾らなのじゃ?』
奴隷商らしき人物に婆ちゃんが問うと
『ドアーロでしたら金貨5枚です』
奴隷商が言う金貨5枚とは高いのか?
確か先日のタンメンもどきから1銅貨が100円程度っ感覚だけど、それだと金貨5枚なら…
500万円!?
こんなオッサンが500万円なのか!?
俺が驚いていると
『金貨3枚なら買うぞ』
婆ちゃんは値切り始めているし…
それでも300万円だけど大丈夫なのか?
奴隷商は少し考えたが、俺達と一緒に居たコウソンタン将軍をチラリと見ると
『わかりました。それでお売りいたしましょう』
呆気なく値下げを了承し商談は成立してしまった。
奴隷商がコウソンタン将軍を知っていて忖度したのかは定かでは無いが、婆ちゃんは気安く露天で買い食いするかの如く金貨を3枚奴隷商に渡して奴隷をお買い上げしている。
この世界ではこれが常識なのか?
俺が難しい顔をしていると
『それで?どちら様がこの奴隷の主になるのですかな?』
奴隷商の問いかけに
『ほれ。カンや』
『さっさとドアーロを受け取らぬか』
俺を肘で小突きながら顔はニヤけているし…
また婆ちゃんに振り回されているのは自覚しているが釈然としない気持ちで
『はぁぁ~』
大きなため息と共にドアーロの受け取りの手続きをするしかなさそうだ。
次回投稿予定【2月25日】




