平凡に報告会
其の44
『戦場か…』
人間によって幾度と無く繰り返されたであろう惨状がそこにはあった。
つい何時間か前まで確実に意思を持って行動していた者達が、最早決して動くことのない肉の塊に変貌している。
今回の作戦は【八門妖鎖の陣】を用いて敵の数を減らし、陣を迂回すると予想される敵には弓兵と婆ちゃんの魔法で対応し時間を掛けて弱体化を計る予定だった。
そして正面及び敵の本陣を俺が受け持ち、敵数が減ったタイミングで敵本陣に斬り込みそのまま降伏を勧告をし、また敵が味方の後方に回り込んだ場合は例のファランクスのような陣形を用いて殲滅する。
味方は霧に隠れその実数を悟らせないようにすることで、敵の戦意を挫き味方の損害を最小限に止められるとなっていた。
だが…
実際にはチョウウンの事故により作戦は急遽変更され、時間を掛けて弱体化させる予定が強引に殲滅するような容になってしまった為、かなりの数の逃亡を許す結果となった。
『とりあえず戦には勝てたので我々は一度引き上げます。3日後一度「ダイキン」に出向くのでその時にまた』
そうコウソンタン将軍に告げ俺達は森に帰った。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
3日後の昼前に、俺達は「ダイキン」の城門前に転移した。
今回は普段の姿の俺と婆ちゃん、リュウちゃん、リョウ君、シュウソウだ。
城門の兵士に用件を告げると、馬車が用意され俺達は馬車に乗って「ダイキン」の市街地を進んだ。
街中は復興の真っ最中といった感じだったが、人々の表情は皆が明るい訳では無い。
中には以前の帝国のやり方より赤頭巾のほうがマシだと考える者も少なからず居るようで、その辺はエンリュウさん達の今後に期待をしよう。
暫くすると城門よりは小さいが立派な門が見えてくる。
以前に行ったタクケンと同じであの門から先がダイキンの支配者階級の住まいとかになるようだ。
門をすんなり通過すると馬車は一番大きな建物の入口で止まった。
出迎えの兵士に促され馬車から降りると、見慣れた顔が出迎えてくれる。
スウセイ将軍、コウソンタン将軍、スウセイ将軍の奥さんもいる。
『仙人様。遠路ようこそお越しくださいました』
満面の笑顔でスウセイ将軍が出迎えてくれたが、遠路って言うのはどうなのかな?
実際の距離的には遠路かもしれないけど、婆ちゃんの転移魔法で来たから「ちょっとそこまで」的な感覚なんだよな。
スウセイ将軍の案内で俺達は建物の中に進んだのだが、ユウ州の州都だけあってタクケンの時より建物の中は広く豪華な感じだ。
俺達が案内された部屋は謁見の間のような場所ではなく、広い会議室のような場所だった。
そこには既にエンリュウさんや文官、武官が揃って俺達を出迎えてくれた。
そしてまたお約束の上座を婆ちゃんに譲ると言い張るエンリュウさんとのひと悶着などがあった。
その日は結局今回の戦での被害や捕虜の数、戦利品などの事務的な報告だった。
ダイキン解放の為に犠牲になった味方も軽微だったのだが、戦いの主軸だった俺達から戦死者がチョウウンさん1人だった事実はその場にいた全員を驚かせ、仙人として婆ちゃんを崇めるエンリュウさんの興奮した姿がちょっと面白かった。
その後明日に予定されている論功行賞について婆ちゃんの希望等がエンリュウさんから質問があったのだが
『ショカツリョウの弟子入り以外は無いと』
呆気ない返事をする婆ちゃんの姿が見た目の小ささと違って男らしい。
報告はそこまでで、明日論功行賞とユウ州主催の祝勝会が行われるとのことで解散となった。
俺達は一旦今夜の宿泊先に案内されたのだが、どうせやることも無いのでダイキンの街に出ることにした。
『お腹も空きましたね』
リュウちゃんの一言で確かに昼飯はまだだったことに気付き、どうせなら街中で何か食べようとなり、一応スウセイ将軍にはその旨を伝えて貰ったのだが、コウソンタン将軍が俺達の案内役兼警護として同行してくれると知らせがあり、俺達はコウソンタン将軍の到着を待って市内観光に出掛けることとなった。
将軍がツアコンってのもどうかと思うのだが…
こっちの世界に来て初めて見る都会的な町並みだが、都会と言っても元の世界と比べたら田舎の商店街程度の感じだ。
人の多さと獣人も普通に歩いている光景はファンタジーそのもので、そこはどこかの夢の国的なアトラクションに似た興奮もあった。
復興最中の市内の一角の人混みが気になってコウソンタン将軍に聞いてみると
『あれは奴隷市だろう』
と教えてくれる。
復興には人手が必要で、ダイキン解放の際に捕らえた捕虜の一部とかも奴隷にされたりしたらしい。
それほど興味は湧かなかったのだが、コウソンタン将軍に促されるまま奴隷市に行くと、俺は1人の男に目が釘付けになる。
低い身長に髭面のずんぐりとした体型。
それはまさに俺の想像通りの姿をしたドアーフだ。
次回投稿予定【2月16日】
急遽第四章としましたW




