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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
43/84

平凡に鬼神か悪魔

其の42






チョウ妃の様子から全てを悟ったコウソンタン将軍は愕然とした。

まだ新兵の頃から目に掛けていたチョウウンが死んだ。

頭が真っ白になったコウソンタン将軍だったが、頬から伝わる激痛で我に返る。


『貴様がそんなことでどうする?』


語気を強めたチョウ妃が目の前でコウソンタン将軍を見上げながら叫んでいた。

どうやらコウソンタン将軍の顔を殴ったのだが、殴られたコウソンタン将軍は視線を最早動かない部下に移し何も言えなかった。


『状況を説明せよ!』


チョウ妃がコウソンタン将軍に詰め寄るが、コウソンタン将軍自身も何故チョウウンが死んだのか分かっていなかった。

そこに、シバ導士の側近が歩み寄りチョウウンの死因の説明をし始める。



『シバァァ~!!』


説明を聞き終えるなりコウソンタン将軍が叫んだ。

目尻にうっすらと涙を滲ませながらも、目は怒りに満ちている。

今にもシバ導士を探して八つ裂きにする勢いのコウソンタン将軍を周りの兵士が必死に止めていると、ツカツカと歩み寄ったチョウ妃が手に持った槍の柄で頭を小突き


『まだ騒ぐならチョウウンの後を追わせてやるが』


と鋭い眼光でコウソンタン将軍を睨み付け槍を構えた。


ここに至ってチョウ妃の本当に今にも差し殺すかのような迫力に多少冷静さを取り戻したコウソンタン将軍であったが


『しかし…』


そう呟き大人しくなった。


『ここは戦場。人が死ぬのが当たり前の場所』

『指揮官らしく狼狽えるな』


チョウ妃の渇に


『すまなかった』


と一言。


『シバが逃げたなら貴様が大将だ。そんなことで勝ち戦をみすみす逃す奴がおるか』


チョウ妃の言葉に慌てて周りを見渡し、周辺の味方の顔を見るうちに目に力を取り戻したコウソンタン将軍は


『して、どう立て直しますか?』


チョウ妃の目を真っ直ぐ見つめて問うと


『今、左翼に弓兵を率いてリュウビが当たっておる。正面はカンウがどうにかするだろう』

『これから右翼の敵がこちらに来れないように障壁を張るが、一ヵ所だけ空けておく。ここまで言えば解るな?』


チョウ妃の言葉に


『承知』


一言残して本陣周辺の兵士を集めてコウソンタン将軍は行動に移した。



弓兵の元に着いたリュウビはチョウウンの部下達を集め状況を説明した。


『これより、左翼の敵に全弓兵で当たります。指揮は私が摂りますが、全て仙人様の采配なので心配はご無用ですわ』


多少不安が残るが、笑顔のリュウビから「仙人の采配」の言葉まで出ては反論も出なかった。


ちょうどそこにシュウソウから念話が届き


『リュウビ様。これより私に向かって矢を射るように指揮をお願いします』


と告げられると


『それじゃ味方の矢には気を付けてね』


と子供が遊びに行くのを心配するかの程度で応え


『これより私の剣先の方向に向かって矢を放ってください』


そう副官達に伝えると


空を飛ぶシュウソウ目掛けて剣をかざした。


弓兵3000人の一斉総射は雨のようにシュウソウ目掛けて放たれたが、シュウソウの手前で放物線を描き敵の左翼に吸い寄せられていった。

弓兵の射程距離を考慮したシュウソウの位置取りで敵は霧の中から放たれた矢に大いに慌てていた。

第2射、第3射と敵に打撃を与えたが、矢の方向からこちらの位置を把握した敵が突進してくる。


霧の向こうから近づいて来る敵の気配だったが次の瞬間落とし穴に見事に嵌まりまたしても恐慌状態に陥る。

敵が落とし穴に嵌まった様子にリュウビはその気配のする方向に向かって剣をかざすと、霧の中から敵の呻き声が返ってきた。

こうして左翼の敵はこちらに近づくことが出来ず、距離を空けることしか出来なかった。



本陣近くの兵士を率いたコウソンタン将軍は自陣の後方にある門に向けて陣形を整える。

後方の門周辺には落とし穴は無い。

味方がアルファベットのU形の陣形を整え終えると


『構え!』


コウソンタン将軍の号令の元、兵士達は一斉に槍を構え槍襖を作る。

そこにチョウ妃が魔法障壁を張ると本陣の旗が掲げられた。


途中の門が塞がり、敵陣への突破口が無かった敵右翼の先頭は後方近くまで迫っていた。

そこに霧の中から旗が現れ敵本陣らしき場所を初めて視認する。

敵後方から本陣を突く作戦を正に実行する時だ。

おあつらえ向きにまだ閉じて無い門をがある事に赤頭巾の右翼を率いる将は、こちらの脱出用に閉じて無いのだろうと都合良く解釈し突撃を命じた。


門を過ぎた所で異変に気付いたが勢いよく突撃をする味方が仇となり槍襖の餌食となる。

古代ギリシャのファランクスのような陣形だが、元のファランクスは盾の間から槍を突き出すのに対して、魔法障壁のから突き出された槍は絶対的に防御面で優れており、騎馬の突進も寄せ付けなかった。

先頭が槍襖の餌食となり行く手を遮られた敵は、後方が追い付くと自然と密集するような形となる。

本来ならそこに弓兵により一斉掃射があるのだが、全ての弓兵が左翼に向かっている状況で弓兵の代わりはチョウ妃の【雷嵐】であった。

密集した敵に上級範囲魔法の【雷嵐】が容赦無く放たれ右翼の敵はバタバタと倒されていった。



敵本陣までは少し距離がある。

これまで自陣近くで近づく敵兵を凪払ってきた俺だが、目標を確認するべくゆっくり馬を進めた。

当然今までの俺の戦いを知っている敵は安易に近寄らず一定の距離を取っていたが、数十メートル進んだ頃には俺の後方に回り込んで退路を断つ動きをする。

そんな敵の動きを無視しながら本陣を凝視すると馬上に鎧を纏った兵士が数人見えた。

直線で100メートル以上は離れているが、俺は気を槍に送り一番立派な鎧の兵士に向けて上段から槍を一気に振り下ろした。



『カンカン!避けて!』


兎人の少女が叫ぶ。

当然敵将から光の刃が眼前に迫って来るのが見えた。

カンゲンは馬上から転げ落ちるように避けるのが精一杯だ。

何が起きたのか理解出来なかったカンゲンだが、自分の馬が真っ二つに斬られ倒れた姿が目に飛び込む。

次にカンゲンが目にした光景はカンゲンが居た位置の前後の兵士が切り裂かれた光景だった。

兎人の叫びでどうにか避けられたカンゲンは


『この距離を…』


と呟き敵将を見据えると、先ほどまでゆっくりと馬を進めていた敵将が猛烈な勢いでこちらに向かって来るのが見えた。

単騎で向かって来る敵将は先ほど同様に光の刃で味方を凪払いながら味方の兵士を切り裂いていた。


『敵は鬼神か悪魔か?』


カンゲンがそう呟いた時、味方の兵士達は右往左往しながら逃げ惑うばかりで最早戦意は喪失していた。


次回投稿予定【1月29日】

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