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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
41/84

平凡に火弾

其の40






『チョウウンッ!!』


コウソンタン将軍の悲鳴にも似た叫びが戦場に響いた。


時間は少し遡る。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




『我が名はカンウ。「ダイキン」は昨日返してもらった』

『赤頭巾の貴様達に帰る場所は既に無い。降伏するなら命ばかりは助けてやるが、戦うというなら少しばかり戦というものを教えてやろう』


尊大な言い方で赤頭巾を煽ってみたがさてどうなることやら。

予定通りに敵軍を前に単騎で対峙してみたが、動揺もしてない。

やはり【英雄変化】のお陰で精神の方まで英雄のようなのは助かった。



『ユウ州軍にあのように言われて黙っておれませぬ』


副官の1人がカンゲンに言い寄る。


(敵将が「ダイキン」について語っていたが、やはり「ダイキン」を攻めたのか…)


『カンカン。強いよ』


カンゲンを「カンカン」と呼んだのは兎の耳が可愛らしい兎人の少女。

戦場には不似合いな少女だがカンゲンは少女に向かって黙って頷くと


『フゥー』


一つ大きく息を吐き


『全軍鶴翼の陣!』


目の前の敵に対して攻撃の意思を示した。

このような丘陵地では伏兵を隠すには不向き。

仮に伏兵があるとしてもかなり離れた場所の公算が高い。

ならば目の前の敵を蹴散らして迫り来る伏兵にも対応出来るはず。

本当に「ダイキン」を攻めたなら当然伏兵等は存在せず数に勝る味方が有利。

あの単騎の強さは当然無視出来ないだろうが、所詮1人の強者では出来ることは限られている。

そのような考えからカンゲンは決断を下した。


鶴翼の陣が形成されると


『殲滅せよ!』


カンゲンの号令の下、赤頭巾の攻撃が開始される。



両翼が先陣を争うかのように殺到するのが見えた。

あれだけ煽った結果としては当然と言えば当然だが、いったい何人の敵を相手しなければならないかを想像しただけで勘弁してほしい。

少し遅れて中央の軍から俺に対して火弾のような魔法が放たれる。


やれやれと思いながりも


『フンッ』


迫り来る魔法を無視して横一線に槍を奮うと、そこから伸びた刃で赤頭巾の前衛がバタバタと倒れた。

同時に火弾が俺に命中したが当然無傷である。


その光景を目にした敵の攻撃は一瞬怯んだのだが、3万を超える軍はその程度で攻撃が止むことは無い。

俺を目指していた敵は多少は警戒したようだが、その外側の敵は今、正に【八門妖鎖の陣】の門に突入して行った。


各門から突入した敵は俺達の姿が無い事に気付く。

しかし次の瞬間俺達の陣形が霧に包まれたのだ。

地面を掘り、巨大な風呂のような仕掛けを作り湯を沸かす。

そしてタイミング良く魔法で用意した氷塊の冷気で霧を発生させたのだった。

霧の発生と同時にチョウ妃が魔法障壁を放つ。

当然障壁内に捕らえられた状になった敵は最早なす術が無かったのだが、障壁の間をさらに奥へと攻めた敵は次々と落とし穴に落ちるだけであった。

そして次に待ち受けるのが今回我が軍の主力とも言うべき3千からなる弓兵の一斉掃射であった。

霧の為視界が極めて悪い敵は大いに混乱に陥り同士討ちも起きる有り様だ。


序盤戦は俺達の目論見通りの展開だが、7倍の敵からしたら2割にも満たない損失だろうか?



突然の霧の発生後、中から聞こえる悲鳴にカンゲンはおおよその検討が付いた。

敵には強力な導士がおり妖術のような術を使う。

単騎の武将は厄介極まりないが、このまま遠巻きに包囲をすれば個の武勇など数の前には脆い。

何も馬鹿正直に戦いを挑まなくてもそのうち疲れもするだろう。

数に勝るこちらは敵軍の位置の特定を最優先とし、背後に回り込んでからの攻撃を全軍に通達した。



先ほどから門から突入をしていた敵は無闇に突入せずに俺達の背後に回り込む作戦に変更したようだ。

どうやら敵の指揮官は有能のようである。

事前の軍義でカンゲンと言う名が出ていたが、その者をどうにかしないとこちらの勝利は難しそうな雲行きだ。

最早作業とでも言うべき動作で俺個人に迫り来る敵を数百は倒したが、それでも数の暴力は止まる事は無かった。



そんな膠着状態に陥ろうかといった場面で背後に回り込もうとした敵が闇雲に放った火弾の一つが本陣の場所に命中してしまう。


たった一発の火弾では被害など軽微で直撃した者がいたとしても味方の導士による回復魔法で大事には至らない。


はずだった…


霧の中から突然目前に火弾が飛んで来たことに慌てたのはシバ導士だった。

突然の出来事に恐慌状態になったシバ導士は側近の者と先日の猿人を引き連れて周りの言う事も聞かず本陣から逃げ出してしまったのだ。


逃げ出しても周りは敵に包囲されかけた状態であるため安全な場所など無いのだが、シバ導士はそれどころではない状態に陥ってしまっていた。


このままでは不味いと思ったコウソンタン将軍は本陣近くで弓兵を指揮していたチョウウンを呼び


『シバ殿が逃げ出した。このままでは敵に捕まり我々の位置が敵に見付かるやもしれん』

『お前はシバ殿を連れ戻してくれ。しかし無理はするな』

『無理だと判断したならシバ殿を殺しても構わん』


命令を受けたチョウウンは直ちに行動を開始する。

霧の影響で敵から見えないが当然逃げたシバ導士も見付からない。

それでも敵の気配がしない方向に進むとやがて人らしい気配がした。

これが敵なら即座に撤退するつもりで近づくと、霧のなかでキョロキョロするだけのシバ導士であった。


『シバ殿。ここは危険です』


チョウウンの声に振り返ったシバ導士はあろうことか敵と間違えて火弾をチョウウンに至近距離から放ってしまったのだ。

胸を押さえて倒れるチョウウンに気付いた側近達は慌てて回復魔法を施したが、低位の回復魔法では回復が難しいほど瀕死の重傷である。

自分達だけではチョウウンを助けられない可能性があると判断した側近の1人が本陣近くに居るであろうチョウ妃を呼びに引き返したのだが、霧の影響で思うように本陣は見付からない。

ようやく本陣近くで味方の兵士を見付けることが出来たが、チョウ妃の居場所は味方の兵士達にも分からなかった。

それならばと味方の兵士を数人引き連れてチョウウンの元に戻り、チョウウンをどうにか本陣に運ぶことには成功したのであった。

次回投稿予定【1月11日】

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