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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
39/84

平凡に解放!

其の38






夜明け間近に俺はカンウの姿に変身する。

婆ちゃん特製の鎧姿ではなく、着物のような装いで婆ちゃんもチョウ妃の姿にはなっていない。

リュウビも普段着のままなので普通に夫婦と老婆の3人組にしか見えない格好だ。


夜明け前に「ダイキン」の城門前に村人風を装ってたどり着いた俺は渾身の発勁を城門に向けて放った。


『バキッバキッバキバキー』


俺の放った発勁によって粉々に城門が轟音とともに砕け散る。

早朝の轟音に「ダイキン」の赤頭巾達は絶賛混乱中だったが、城門に殺到した赤頭巾は婆ちゃんの【雷撃】の餌食となっていた。

それでも数に勝る赤頭巾達が俺達に向かい殺到してくるが、俺の婆ちゃん特製の槍から伸びた気の刃が草刈りでもするかのように斬り裂く。


その時、場外から地響きが鳴りスウセイ将軍率いる3万のユウ州兵が「ダイキン」に向かって雪崩れの如く突進してきた。

城門の上では指揮官らしい赤頭巾の兵が右往左往するだけで状況が全く理解出来ていないらしく、近くの兵士を怒鳴っているばかりで混乱は加速度的に広がっている様子だ。

「ダイキン」解放への俺達の仕事は概ね成功だが、味方が場内に突入するまでの間もう少し周辺の敵兵の相手をする必要がありそうだ。


城門周辺の敵兵を掃討したタイミングで東の空から太陽の日差しが差し込み俺の姿はみるみるいつもの姿に戻った。

魔法の袋から普段着を取り出し着替えを済ました時には深紅の鎧姿になったチョウ妃が立っていた。

そして何食わぬ顔で城門横でユウ州軍が城内に雪崩れ込む様子を眺めていると馬に乗ったスウセイ将軍が俺達に気付き大きく一回頷いて城内に消えて行く。


『もう大丈夫かな?』


俺が呟くと


『あとは奴等の仕事じゃ』


そう言ってチョウ妃は背伸びをして疲れたと言わんばかりの顔をしている。


『とりあえずお腹が減りましたね』


リュウビは少し早いが朝飯をご所望の様子だ。

いつでもどこでもリュウビはリュウビのままなのが安心だった。


『帰って朝飯を食べたら寝ないと明日も戦じゃからの』


とクールビューティーな顔立ちなのに婆ちゃん丸出しのチョウ妃が城門付近のユウ州兵を捕まえて何やら話しをした後、転移魔法で俺達は森に帰ったのであった。




◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆




『旦那様。起きてください』


シュウソウに起こされてやっと目を開けるとそこは森の婆ちゃんの家だった。


森に帰った俺達は簡単な朝食を済ませ、それぞれの部屋で寝てしまったようである。

前日は「ダイキン」攻略の為完徹だったので爆睡していたようだ。

時間は午後だろうか?

まだ夕暮れには時間があるようだが。


『どうした?腹でも空いたか?』


俺の問いかけに


『確かに早い朝食の後昼は抜きですからお腹も空きましたが、リョウ君の姿が見えませんが?』


『あっ!』


本来「ダイキン」攻略の後リョウ君と一緒に帰ってくる手筈だったが、眠気に負けてリョウ君をすっかり忘れてしまっていた。


俺は慌てて婆ちゃんを起こしたが


『年寄りに無理をさせるでない。もう少し寝かせておくれ』


とふざけた事を言って二度寝を決め込みそうになったが


『婆ちゃんの可愛い弟子が一人で不安になってるから早く起きてよ。戦場に子供を置いてきぼりなんてバレたらスウセイ将軍にだって申し訳ないよ』


俺の説得に渋々目を覚ました婆ちゃんだったが、昼飯だなんだと言い訳をして「ダイキン」に着いたのは夕方近くになっていた。



「ダイキン」は既にユウ州軍が占領し終えた様子で兵士達の顔も笑顔だった。


そこに俺達を見た兵士から連絡を受けたスウセイ将軍がやって来て婆ちゃんの前に膝を付いて


『この度の「ダイキン」解放へのご助力ありがとうございました』


などと礼を述べ始めたのだが、うっかりチョウ妃の姿ではなく婆ちゃんのまま現れたのだから仕方ない。

これは完全に婆ちゃんのミスなので知らん顔をしていると


『ショカツリョウの試験も滞りなく済んだようじゃな。悪いが弟子を呼んできてはもらえぬかの?』


なんて言いだした。

要するにこの「ダイキン」解放が仙人である自分への弟子入りの試験ってことにして、うっかり忘れてたことを無かったことにしやがった。

まったく都合の良い仙人である。


『おい。ショカツリョウを探して連れてきてくれ』


スウセイ将軍は近くに居た兵士にそう命じると


『ところでカンウ殿はこちらには?城門を破壊したのはカンウ殿ではなかったのですか?』

『結局一度もお目にかかることも出来ませんでしたがせめて礼を申し上げたいのですが』


スウセイ将軍がキョロキョロしながら婆ちゃんに問うと


『あやつは明日の赤頭巾との戦に向けて準備を命じておいたのでここにはおらんの』


と適当な言い訳をする婆ちゃんに


『なるほど。まだ戦は終わっておりませんでしたな』

『これは失礼致しました。ではこのスウセイ今日の日を一生忘れませんとくれぐれも宜しくお伝えください』


とより一層頭を下げてスウセイ将軍は感謝の意を表してくれる。

明日の戦が終わったら一度スウセイ将軍にカンウの姿で会っておかないと、何やら妙なことになりそうな雰囲気だ。


そうこうしていると兵士と一緒に馬に乗ったリョウ君が無事やって来て


『仙人様。この度は無事「ダイキン」を赤頭巾の奴等から取り返すことが出来ました』

『これも全て仙人様のお陰です。本当にありがとうございました』


リョウ君が深々と頭を下げて礼を言うと周りに居た兵士達も婆ちゃんに向かって頭を下げるどころか平伏して感謝し始めた。


益々リョウ君を忘れてたなんて口が裂けても言えない状況の婆ちゃんは


『お前さんも無事で良かったの。さて帰るとするか』


と言ってその場から逃げ出したい様子が滑稽だったので


『リョウ君帰ろう』


と俺は婆ちゃんに助け船を出したのであった。


次回投稿予定【12月27日】

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