平凡に理科!?
其の36
通常の八門金鎖の陣は北より時計回りで「驚門」「開門」「休門」「生門」「傷門」「杜門」「景門」「死門」から成り、特定の門からの突入と突破をしないと攻め手が殲滅する危険が大変高い陣形だ。
当然、陣形を運用する側にはより高度な戦術眼と兵士達の熟練度が求められる。
本来はかなりの日数を掛けて兵士全体が陣形の意図を理解し、自分の成すべき行動を瞬時に判断するまで訓練を繰り返して初めて運用可能な陣形だった。
しかし、この【八門妖鎖の陣】は大まかな陣形は同じなのだが、そのような高度な戦術眼や兵士の熟練度を無視して運用可能だとリョウ君は皆に説明した。
運用可能…
はっきり言って無謀な作戦と言っても過言ではない。
と言うのもこの【八門妖鎖の陣】などと言う陣形はそもそも無いからだ。
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参陣する前日に婆ちゃんの家でどうやって赤頭巾に勝つかを俺達は話し合っていた。
「タイコウ山」の赤頭巾は誘引の計で誘い出して戦うところまでは婆ちゃんの考えなのだが、それだと不確定要素が多過ぎてこちらの被害も想定された。
初戦で勝ったとしても「ダイキン」の解放に支障が出たのでは意味が無い。
必勝を期する為には何が必要か…
『カンや。お前さんの世界での戦はどうだったのじゃ?』
いきなり婆ちゃんから意見を求められたが、平凡なサラリーマンだった俺に戦のことなど知る訳が無かったのだが、社会科の授業でのうろ覚えの知識やゲームを元にした知識しか持たない俺が
『情報かな』
とポツリと呟いたことから全ての作戦は立案されてしまった。
いわゆる孫子の「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」の敵を知る。
つまり情報が大切だと言うことなのだが、元の世界で情報収集衛星を使って敵の位置、戦力を事前に把握しておけば効率が良い的な話しをしたところ、さすがに衛星は用意出来ないが上空からの監視をシュウソウにさせることになったのだ。
これで、初戦の誘引の計はかなり成功の確率が上がったのだが、「ダイキン」からの赤頭巾の本体にどうやって勝つかが最大の課題だった。
そこで
『巧く撹乱とかは出来ないかな?』
『例えば霧の魔法とか無いの?』
と訪ねたのだが、そいった魔法は無いらしく、妖術のような術でなら昔聞いたことがあると婆ちゃんは教えてくれた。
今からその妖術を探して習得するような時間は当然無かったのだが元の世界の知識として
『お湯を冷やしたらどうかな?』
と軽い気持ちで言ったところ
『それで霧は出来るのか?』
と婆ちゃんが興味を示したので
『大量のお湯を冷やしたら多分出来そうだよ』
と答えた。
そこからは理科の実験のように大鍋でお湯を沸かして離れた場所に氷の魔法で作った氷塊を風の魔法を使って冷気として大鍋に向けるとうっすらと霧のようになった。
『なんと!』
婆ちゃんは少し興奮気味だったが、リョウ君は頭に???が出たような顔で絶賛混乱中で理解出来ていない様子。
リュウビは
『良かったですね』
とそこに問題など存在してなかったような超越した笑顔でニコニコしているだけだった。
この実験結果から婆ちゃんは何やら考えが浮かんだ様子でニマニマとした後書き始めたのが【八門妖鎖の陣】の巻物だ。
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初戦の大勝がリョウ君の献策によって見事にハマったのが布石となったのか、不思議なほど今回の作戦に対する反対意見などはほとんど無くこの日は解散となった。
翌朝、いつもの姿に戻り外に出るとコウソンタン将軍がやって来た。
『カンウ殿はまだ寝ておられるのか?』
コウソンタン将軍はカンウに用があったようだが
『カンウさんは昨夜のうちに森に一旦戻られましたよ。次は「ダイキン」に向かわれる筈です』
俺が誤魔化すと
『そうであったか。それで今日からの陣立ての練習とやらはショカツリョウが指揮をとられるのでしょうか?』
仙人から授かった陣形を子供の指揮だと心許ないのか少し不安そうに俺に問うてきたが
『リョウ君とチョウ妃さんが指揮をされるかと思います』
実際は仙人本人の指揮だからこの上無いのだが、コウソンタン将軍は
『そうですか…』
と一言呟いて去って行った。
どうやらコウソンタン将軍はカンウを高く評価している様子だが、まだ子供のリョウ君と女性のチョウ妃だけだと不安な様子だ。
やはり普通はそうなるよな。
婆ちゃんに振り回されて参陣しているこっちも本音では同じ気持ちだった。
平和そのものだった元の世界で普通に生活していた俺も本格的な戦争を昨日初めて体験し、初めて人を殺した訳だからまだ気持ちに整理が付かないのも事実だ。
昨日はこんな気持ちにはならなかったのは俺の肉体に合わせてメンタルも強化されてるのだろうか?
その辺も含めてまだまだ自分自身に不安を覚えながらの戦いの日々が続くのなら正直勘弁して欲しかったのだが現実は待ってはくれないようだ。
次回投稿予定【12月11日】




