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~ 平凡 関羽 ~  作者: つくば太郎
第三章
34/84

平凡に開戦

其の33






『我が名はカンウである』


誘引役の精鋭を前にそう名乗ると兵士達から熱い眼差しで見つめられた。

どうやらユウ州軍の兵士達にも仙人の弟子で万の兵に匹敵するとされる剛の者として「カンウ」の名は知らされていたようだ。


『ユウ州軍の精鋭たる君達の戦場は今日ではない。君達に相応しい戦場は近日中に赤頭巾の援軍として来るであろう万を超える相手だ』

『今日の戦いはあくまで囮であるからくれぐれも本番の戦いに参戦出来ないような事態にならぬように注意してくれ』


俺の説明に集まった精鋭達は作戦上返答はしないまでも引き締まった顔付きから了解の意思は読み取れた。


『では』


コウソンタン将軍は俺の隣でそう言うと馬上で剣を構えながら


『全軍出立』


と号令を放ちいよいよ作戦開始である。



◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆



山あいの道を半刻程進軍すると「タイコウ山」の砦が見えてきた。

向こうもこちらに気付いた様子で慌ただしく掛け声やらが聞こえてくる。


コウソンタン将軍が俺を見たので無言で頷くと


『突撃!』


全軍突撃の号令の元、俺とコウソンタン将軍を先頭に通常の突撃より遅い足取りで2000人の精鋭は砦に向かって突進した。

これも弱々しい突進を装い少しでも弱い印象を与える欺瞞工作の一つだ。


俺達に向かって矢が雨のように降り注ぐが先陣の兵士達は鎧や盾で矢の雨を回避しつつ突進を続ける。

俺は槍の柄の部分で矢を回避しながら誘引のタイミングを計っていた。

この姿なら矢が当たっても平気なのだが、矢が当たっても平気な人間など味方を驚かせるだけなので普通に回避してみせた。

リュウビも新たな剣を自在に扱い矢の雨をかわしているようで一先ずは安心だ。

いくら剣術が得意な龍の化身とは言え、リュウビにとっては初陣になる訳で、婚約者としては普通に心配はする。


全軍が砦の正面にたどり着くタイミングで城門に火を放つ。

城門を燃やすのが目的ではなく、目隠しを兼ねた煙幕が目的だった。

煙が出るのを確認すると軍の先陣が後方に下がり、代わって後方の部隊が城門正面に。

火の勢いが弱まり煙が晴れてきたタイミングで


『全軍退却!』


コウソンタン将軍の退却の号令で敗走のフリを始めるユウ州軍。


これを砦の見張り台から様子を伺っていた赤頭巾の「トウモ」が


『敵は敗走を始めた。今が好機』

『全軍追撃!』


自分達の攻撃で敵が敗走していると思った「トウモ」の号令の元、赤頭巾は砦の城門を開け追撃を開始してきた。


この時の「トウモ」の判断がこの戦いを決定したとは当の本人は気付くはずも無かったが、そこにはユウ州軍の準備された偽装があったからだ。

敗走するユウ州軍は煙に紛れて入れ替わった部隊の背中や鎧には予め矢が刺さったような偽装が施されていたからである。

実際、偽装を施さなくとも攻めての数から赤頭巾は砦を出て戦っただろう。

しかし、普通に戦うのと油断をして戦うのでは大きく違う。

まさに「油断大敵」を人為的に誘い確実に勝つ作戦だった。


追撃する赤頭巾の軍は「テイエンシ」「トウモ」を先頭にユウ州軍に襲い掛かる。

敗走していると大いに油断しきっていた「テイエンシ」は


『ユウ州の弱兵など恐れるな!』

『ワシに続け!』


などと気分は大将軍にでもなったかの如く大声で味方を鼓舞しながら俺に向かって突進してくる。

彼的に渾身の突きであろう槍の打突を間一髪で避け、馬上で体勢を崩したフリなどしたものだから「テイエンシ」は余計に図に乗っている様子だ。


「テイエンシ」の戦いぶりを見ていた「トウモ」も


『今が勝機!』

『敵を皆殺しにしろ!』


などと叫びながらコウソンタン将軍に襲い掛かるが、コウソンタン将軍の巧な操馬術で剣の間合いには入れず虚しく空を切り裂いている。


俺とコウソンタン将軍は自在に受け流しながら押されているフリをしていたが、他の兵士達も襲い掛かる相手に数度立ち会っては逃げるを繰り返し、山あいの道を利用して数に勝る相手を巧みに誘い込んでいる様子だ。


こうして敗走のフリをしながら伏兵が待ち構える地点まで敵を誘い込みに成功した俺達は、反転し敵に対峙する陣形をリュウビが完成させたのを確認した時、先ほどまで受け流していた「テイエンシ」を上段から一刀で撫で斬りにし


『敵将テイエンシをカンウが討ち取った!』


戦場に響く程の大声で叫ぶと、その声に一瞬動きを止めた「トウモ」をコウソンタン将軍の剣が突き刺すのが見えた。


『敵将トウモ。コウソンタンが討ち取った!』


コウソンタン将軍の声に味方の2将を失い、先ほどまで追撃し優勢と思っていた赤頭巾達は慌て出したが、次の瞬間チョウウン指揮の伏兵から雨のような矢が降り注がれ追撃部隊は次々と倒されていった。


『武器を捨て投降せよ!』


俺の声が戦場に響くと次々と武器を捨てる赤頭巾が現れた。

多少の抵抗を見せる敵も居たが、ユウ州軍の精鋭の前では虚しい抵抗であった。


こうして「タイコウ山」の砦から赤頭巾を誘引して殲滅する作戦は呆気なくユウ州軍の大勝となったのである。



◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆



『シュウソウ。砦の中の様子はどうだ?』


婆ちゃんからの「念話」に


『砦の中は既に勝った様子で浮かれております』


とシュウソウからの報告を受けて


『私達も行きますよ』


砦で攻略の部隊を率いるチョウ妃が号令をかける。


既に開け放たれた城門から突然なだれ込んできた敵に慌てる赤頭巾達だったが、チョウ妃の【雷撃】を受けて次々と倒される味方に砦内の混乱は加速度的に拡がっていった。


『貴様達の味方はユウ州軍によって敗北した。さっさと武器を捨て投降しろ』


チョウ妃の勧告に当然納得しない敵が襲い掛かるが、妙な素振りを見せただけで放たれる【雷撃】に抵抗出来る敵はいなかった。


『シュウソウ。砦の外に逃げ出した敵はいるか?』


再び婆ちゃんからの「念話」にシュウソウは


『数名が山の北側に逃げ出しました』


そう答えると


『とりあえずそのまま監視を続けてくれ』


と指示を出し砦の制圧を続けると、チョウ妃の【雷撃】の魔法を恐れて次々と武器を捨て投降する赤頭巾達を拘束させ、僅な時間で「タイコウ山」の制圧を完了させたのであった。


『所詮元農民の集まりではこんなものか』

『これより逃げ出した者達の捜索に向かうぞ』


そう言ってシュウソウから報告のあった山の北側に部隊を送ったのであったが、「ダイキン」に状況が知らされなければ問題無いので捜索部隊にも拘束より「ダイキン」へ繋がるルートを重要視するようにと指示を出すのみであった。


次回投稿予定 【11月18日】

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